PETS開発チーム「fOK」インタビュー
ものづくりコミュニティから生まれたパソコンを使わないプログラミング教材“PETS”が歩んできたステップ
12のマス目の上を四角い箱型の車が静かに進んで行く。ときに止まり、左右に回転して方向を変える。見つめる子どもたち。
PETSは、5種類のブロックをボディに差しこむだけで、パソコンを使わずにプログラミングが学べる教材として、2015年に登場。各地でワークショップを開催するなど実績を重ね、2016年には国内で先行予約販売。さらに2017年3月にはKickstarterに登場し、4月には目標額3万ドルを集めた。最初のきっかけはものづくりコミュニティTMCN。コミュニティから生まれたユニークな商品がスタートアップとして成功を収めるまでの過程を聞いた。(撮影:加藤甫)
わが子には自分が作った教材を使わせたかった
PETSは、デザイニウムが商品を開発し、同社から出資を受けたfor Our Kids(以下fOK)が販売する形を取っている。デザイニウムの秦さんとfOKの中尾さんにインビューした。
——PETS開発のきっかけについて教えてください。
秦:一番のきっかけは子どもが生まれたことですね。4歳ぐらいになって、初めてプログラミングを学ばせるなら、自分が作った教材を使わせたいと思って企画しました。
ブロックやボディの大きさは、子どもが4歳になったときのことを想像して決めました。
一体型で動いて、その場で直感的にフィードバックできるという、このとき考えた商品コンセプトは今も続いている感じですね。アイデアを形にするには2カ月ぐらいかかりました。当初は親が組み立てて子どもに教えるイメージでした。従って「組み立てやすい」、「初めてやる子がすぐ分かる」。この2つが大きいコンセプトでした。今うちの子は2歳で、ブロックを入れて遊んでます。まだプログラミングまでは理解できていませんが。
秦さんはセンサーやセンシングデバイス好きが集まるコミュニティ「TMCN」に立ち上げ初期から参加している。
TMCNではメンバーが買ったデバイスから仕事や個人で携わっているプロジェクトに至るまで、さまざまな製品をイベントや飲み会の場で紹介する機会が少なくない。
秦さんがPETSを商品にしようと思ったのは、そのTMCNの人たちに見せたときだった。
秦:「これいいね」「面白いよ」とおだてられているうちに「売ろうよ」という話になって。
もともとデザイニウムという会社はソフトウェアの開発がメインなんですが、新しいことにチャレンジしたいと考えていた時期でもありました。タイミングも良かったと思います。プロトタイプを作って、ワークショップなどで披露するうちに商品化に当たってはハードはもちろん、カリキュラムが重要だなということに気がつきました。そこでTMCNで知り合った教育の専門家や以前から知り合いだった中尾さんに相談したんです。