「toio」プロジェクトリーダー田中章愛インタビュー
ソニーの研究と仕事後の雑談から生まれた「toio」——小さなキューブを通じてワクワクを子どもたちに伝えたい
toioの最新技術とデザインの工夫
toioコア キューブには、マット上の自分の位置を知ることができる絶対位置センサーと、高性能モーター、加速度センサーや通信モジュールが内蔵されている。中でも注目したいのは、絶対位置センサー(光学センサー)である。絶対位置センサーには、2つの役割があり、まず1つ目はタッチ画面や物理ボタンが無くても簡単にルールやシナリオ、アルゴリズムを設定できること。2つ目は、リアルタイムで自分の位置を計測し、もう1体との距離や向きを把握することができるので、スムーズな動きで追いかけっこや相撲ができることだ。
マットやカードに印刷された肉眼では見えない模様を、toioコア キューブの底に配置した絶対位置センサーが認識する。マットに乗せるだけで、自身の位置や向きを検出し、相手を見つけられるので、子どもたちが手でtoioコア キューブの向きや位置を直さなくても、アルゴリズムに従って自動で相撲や追いかけっこをしてくれる。
カードもtoioコア キューブを乗せるだけで、ルールやシナリオ、アルゴリズムを子どもたちが難しい操作をしなくても絶対位置センサーが情報を読み込んで設定してくれる。
デザインで目を引いたのは、丸型コントローラーtoio リングである。「一般的なゲームコントローラーって、両手で持ちやすく、握りやすいデザインを追求しています。toio リングは子どもたちが、紙工作やレゴブロックを組み立てたいとき、コントローラーを意識せずに手放してほしくて、片手で持ちやすく、邪魔になったときは、パッと地面に置いたり、腕にかけたりすることもできるように考えて作っています」と田中氏は話す。コントローラー(toio リング)には、5種類のボタンとロゴのホームボタンがあり、ジョグで操作することができる。
ほかにも高性能モーターがロボットの動きに面白さを与えている。「ソニーでロボット研究の一環としてアメリカの大学に留学をしていた時は、人間の手の構造を研究していました。また研究室の仲間は生物の動きを再現する研究を行っているのをよく見ていました。どうやったら動きにリアリティを出せるのかという研究を身近に見ていたので、『工作生物 ゲズンロイド』をやろうというアイデアが出てきた時も、これは実現できれば面白くなると思いました。toioが姿を変えて遊ぶときも生き物のような動きを再現できるように、モーターを選んで速さを調整しています。」と田中氏はいう。追いかけっこや相撲をするとき、ロボットが生きているように向きを変え、速さを変化させて移動する。追いかけっこモードでは、相手との距離を計算し、離れている分だけスピードを加速させて移動する。逆に距離が近いときは、ゆっくりと追いかける。相撲モードでは、ぶつかりあった後、バラバラの方向を向いていてもアルゴリズムに合わせて高性能モーターがお互いの向きを正面に直す。
「toioは、自分の作ったものが主人公になれるおもちゃです。つくって、あそんで、ひらめいて、試行錯誤することが、いろいろな学びにつながる。遊びながら工夫して楽しんでほしい。子どものころは工作することが多いけど、大人になるとそういう機会が少なくなる。小さい頃から自分で考えて何かを作って、創意工夫する大人になってほしい」と田中氏はいう。
toioは、先行予約を6月末日で締め切り、一般販売は12月頃に開始予定。First Flightのサイトから購入することができる。別売りタイトルは、「toio collection(トイオコレクション)」と「工作生物 ゲズンロイド」が発表されており、新しいタイトルも今後追加していく予定とのこと。