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STEMを競う国際大会で日本チームがルーキー賞を総ナメ

「もう、やるっきゃない」世界を相手に戦ったロボコン女子高生のドタンバ力

資金集めも参加の条件

米国留学中にSTEMでものをつくるおもしろさ、チームで活動する楽しさを知った中嶋さん。

「帰国したら、チームを作って日本から参加したい」

強い思いに駆られた。まだ米国留学中だった2017年5月、Facebookで日本でのチーム結成を呼びかけた。最初に「いいね」をしてくれたのが、友だちの荻田倫那さんだった。

「参加の動機は単に面白そうだったから。でも詳細を知って『花音ちゃん、本気なの?』と思うようになりました」

荻田さんがそう思うのも無理はない。FRC参加の障壁は半端なかった。第一は人と技術だ。チームとして参加する中高生を集めるのはもちろんだが、ロボティクスに詳しいメンターとなってくれる人が必要。一般的な中高生の知識と技術だけでは太刀打ちできない。経験豊富な社会人の力を借りなければ、自分たちのロボットは作れない。

次にお金。FRCは課題解決型のロボコンだ。テーマに沿った基本的な部品のセット(Kit of Parts)が提供される。その部品を使うかはチームの自由だ。自分たちでそれらを利用し、ロボットを組み立てる。工夫を加え、ブラッシュアップして競技に参加する。キットの代金を含んだ参加費は日本円で約65万円。さらに地区大会は海外で行われる。渡航費用も必要だ。ロボットにかかる費用だけでも総額は100万円を優に超えるが、まずは応募締め切りまでに参加費を工面しなければならない。普通の女子高生が小遣いで出せるお金ではない。FRCは資金を集めるところからものづくりをスタートさせることを仮定している。過酷な条件ではあるが現実世界を反映している。

「『参加したい』の一心でみんなに呼びかけました」と語る中嶋さん。 「『参加したい』の一心でみんなに呼びかけました」と語る中嶋さん。

ないないづくしからのスタート

時間も問題だ。中嶋さんが帰国したのは2017年6月。この時点ではメンバーはわずかに4人。早速活動を始めたものの、最終的な締め切りの11月まで4カ月しかない。チーム名こそ「華麗な桜吹雪を起こしたい」との思いを込め、「SAKURA Tempesta」(Tempestaはイタリア語で「嵐」の意)と決めたものの、参加者、メンター、資金の問題は未解決のままだった。

応募後にも日本人独特の大きな問題が控えていた。英語だ。参加が認められれば、部品の取扱説明書や細かい大会規定を記した100ページ以上にも及ぶゲームマニュアルが送られてくる。さらに競技では他のチームと連携して戦略を練り、ロボットを操作する必要に迫られる。英語によるコミュニケーション力は必須だ。審査員にロボットやチームの活動をアピールすることも受賞につながるのでそこでも英語力がいる。

技術もない、人もいない。お金もなければ、時間もない。おまけに十分な英会話力もない。ないないづくしの中、あるのは「ともかく出たい」という強い思いだけ。土壇場に追い込まれた女子高生たちの挑戦が始まった。

「何もないところからのスタートでした」と語る中嶋さん(左)。と荻田さん(右)。 「何もないところからのスタートでした」と語る中嶋さん(左)。と荻田さん(右)。
「SAKURA Tempesta」のチームロゴ。桜の意匠が日本らしさをアピールしている。 「SAKURA Tempesta」のチームロゴ。桜の意匠が日本らしさをアピールしている。

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