STEMを競う国際大会で日本チームがルーキー賞を総ナメ
「もう、やるっきゃない」世界を相手に戦ったロボコン女子高生のドタンバ力
普通の女子高生が、一から仲間を集め、資金を調達し、世界各国から3000以上のチームが参加するロボコンで賞を取る。映画さながらの話だが、実際に起きた。千葉を拠点に活動するチーム「SAKURA Tempesta(サクラテンペスタ)」がそれだ。チーム結成のきっかけから受賞までの道のりを、リーダーの中嶋花音(なかじまかのん)さんと主要メンバーの荻田倫那(おぎたりんな)さんに語ってもらった。そこには、多くの人や組織の協力の元に「STEMの面白さを広めたい」という情熱と、危機を乗り切った土壇場での力があった。(写真・川島彩水)
技術力だけではなく、コミュニケーション力や情報発信力も問われる国際大会「FRC」
「きっかけは高1でアメリカに留学したとき、向こうの部活でFRCのチームに入り、世界大会を経験したことです」
中嶋さんは語る。もともと中嶋さんがアメリカ留学を決めた理由は、英語と映像制作に興味があったから。行けば英語をもっと使えるようになるだろうし、映画がたくさん見られるだろうといった単純な理由だった。ロボティクスに興味はなかったが、FRCのチームに参加し、主に広報担当として映像の制作などに携わった。
FRCとは「FIRST Robotics Competition」の略。アメリカのNPO「FIRST:For Inspiration and Recognition of Science and Technology」が主催する国際ロボティクスの大会だ。FIRSTはセグウェイの発明者ディーン・ケーメンが1989年に設立した組織で、ロボティクスをテーマにした4つのプログラムを青少年を対象に提供している。単に科学技術に関する技能や知識を競うのではなく、プログラムを通じて、STEM分野において将来リーダーとなれるような人材の育成に力を注いでいる。
SAKURA Tempestaが参加したFRCはその4つのプログラムのうちのひとつで、中3から高3が対象。毎年変わるテーマに沿ったロボットを作り、競技に参加する。いわゆる「ロボコン」だが、よくあるそれと同じように考えると本質を見間違う。問われるのは、技術力以上に、イノベーション力、コミュニケーション力、情報発信力、リーダーシップなど、実社会に必要な多彩な能力だ。そのため、競技の結果とまた別に、それらを評価するさまざまな賞が用意されている。
参加のための障壁は高い。初めて参加するチームは、メンター、資金、時間、といった壁に必ずぶつかる。母国語が英語でない海外のチームは言葉も壁になる。これらの障壁を越えるには、技術力に加え、前述した多彩な能力が必須となる。それでも全世界で20カ国以上3000を超えるチームが参加。また、GM、Google、FedEx、モトローラ、NASAといった名だたる世界企業などがスポンサーについている。FIRSTの姿勢が評価されている証だ。