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世界に通用するニッチ製品を現地開発してきたMakers、成果を報告

経済産業省は3月24日、DMM.make AKIBAにおいて、世界のニッチ市場で勝負するものづくりベンチャー志望者を海外に派遣し、現地でものづくりプロジェクトを実施する「フロンティアメイカーズ育成事業」に関して、派遣メンバー9組10人の成果報告会を開催した。

フロンティアメイカーズ育成事業は、日本から世界のニッチ市場で直接勝負するものづくりベンチャーを「フロンティアメイカーズ」と名付け、その育成を目的としたプログラム。具体的なプログラム内容は、起業や新規事業展開、新製品開発などを目指す個人を対象にデジタルファブ工房など新しいものづくりの流れが生まれている海外拠点におよそ1カ月にわたり派遣、現地でものづくりプロジェクトをしながら、フロンティアメイカーズとそれらを支えるものづくりネットワークとの交流を通じて、フロンティアメイカーズとしての力を身につけてもらうものだ。

成果報告会では、まず9組10人による成果報告のプレゼンテーションと成果物の展示、デモンストレーションが行われた。 

九州大学在学中の飯島祥氏は米サンフランシスコとボストンで複数のファブ施設を活用して、LEDで光る携帯型ギターアンプのプロトタイプを開発した。

大阪大学大学院に在学中の武居弘泰氏は、発展途上国向けに研究開発していたプラズマによる小型殺菌装置について、ウガンダ、ケニア、ガーナでニーズ調査を実施。雇用に恵まれない現地の技術系人材を活用し、食品衛生管理で差別化を図る現地の飲食店をターゲットとしたビジネス展開が見込まれると報告した。

東京大学大学院在学中の青木翔平氏はガーナのファブラボと連携して、現地の主食である「フフ」を製造する機械を開発し、ルワンダ、ウガンダも含めた3カ国でニーズ調査を実施した。

機楽の石渡昌太氏は米ニューヨークで四足歩行のロボット掃除機のプロトタイプを開発し、オースチンで3月に開催されたSXSWに出展。今後はクラウドファンディングでの資金調達も視野に入れて製品化を目指していくという。プレゼンテーションの中では、情報処理推進機構の未踏事業と比較しながらフロンティアメイカーズ育成事業の制度に対する課題点にも触れた。

早稲田大学大学院に在学中の岩本尚也氏は、従来の加工法では困難かつ長期間の工数を要する立体的なステンドグラスを製作するソフトウェアを開発。育成事業期間中にベルリンのファブラボやサンフランシスコのアーティストレジデンスも訪問し、ステンドグラス作家との意見交換を基にソフトウェアの改良と試作品の開発を行った。

カシオ計算機での商品企画を経てカフェを経営する中澤優子氏は、ハッカソンで開発した、弁当の中身の交換を促すIoT型弁当箱「Xben」を改良しSXSWに出展した。報告の中で「個人の集まりであるハッカソンで、ノリで作られたもの」をチームとしてモチベーションを維持しつつ製品化していくことの困難さに触れる一方で、SXSWで得られた評価から量産化に向けた開発を進めたいと発表した。

アップパフォーマの山田修平氏は、サッカー選手の試合中の動きをデータ化してパフォーマンスの向上を促進するウェアラブル端末「Eagle Eye」の試作品を開発し、米ラスベガスのCESに出展してニーズ調査を行った後、深センで量産化に向けた改良を実施。簡素化することで従来のプロ向けのデータ解析システムよりコストを抑え、欧米のアマチュアチームを対象に、導入しやすい価格帯での製品化を目指すという。

鳥人間の久川真吾氏は、HIV、アレルギー性喘息、マラリアなどの診断が10分程度で可能になる廉価なオープンソースDNA増幅機「SakuraPCR」を墨田区の町工場と連携して開発した。量産化に向けた製品改良や海外量産ルートと営業先開拓を報告。プロジェクトを通じて原価を200ドルから100ドル程度に抑えるめどが立ち、量産と販売でそれぞれ海外法人とのパートナーシップを結んだことを報告した。

ファブラボ関内のディレクター、増田恒夫氏とファブラボ・ボホール(フィリピン)のディレクター、徳島泰氏(写真)は、発展途上国の貧困層向けに3Dプリンタを活用した義足開発システムを開発した。途上国で調達可能な資材を使った専用の3Dプリンタと、現地の医療関係者や装具士が簡単に操作できる専用のモデリングソフトを使って、1本当たり100ドルで義足がプリントできる。フィリピンで実際に膝下切断患者への装着テストも行い、今後はJICAやフィリピンの貿易産業省や途上国向けの支援団体と連携しながら製品化を目指すという。

フロンティアメイカーズ育成事業は経産省の「新ものづくり研究会」の報告書を受けて企画されたプロジェクトで、今回が初めての開催だった。同省の担当者によれば、次年度の開催は決まっていないものの、フロンティアメイカーズを対象とした事業は来年度も検討していくとしている。 

※記事初出時、人名の表記に誤りがありました。訂正してお詫びいたします。

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