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炭素繊維の用途が広がるか——LLNL、炭素繊維を複雑な形状での3Dプリントに成功

ローレンス・リバモア国立研究所(LLNL)の研究チームが、直接インク書き込み(DIW:Direct Ink Writing)技術を用い、複雑形状の炭素繊維複合材料を3Dプリントすることに成功した。今回の研究成果により、軽量で鉄鋼よりも強い炭素繊維の可能性が、従来の単純な形状の部品のみならず、3次元的に複雑な構造にまで広がった。

一般に炭素繊維の作製法は2つある。芯金の周りにフィラメントを巻くか、編み籠のように繊維を編むかのどちらかだ。これらの方法で製造した場合、最終製品は平坦なものか円筒状のものに限られてしまう。しかも、性能への心配から材料を過剰設計しがち。そのために部品が重くなり高コストになり、必要以上に無駄が増えている。

しかし、LLNLの研究チームは今回、DIW技術を開発して3次元的に複雑な構造の炭素繊維を成型する道を切り開いた。DIW技術では、熱硬化性マトリックス材料と炭素繊維を満たした特別製インクを活用している。このマトリックス材料は研究チームが開発した新しい素材であり、数秒で硬化するのが特徴。その特許はすでに取得済みだ。

もう1つのブレークスルーは、LLNLのスーパーコンピュータを利用して、DIWプロセスにおける炭素繊維フィラメントの流れを正確に制御できるシミュレーション技術を開発したことだ。このコンピュータ・モデル化は、インクノズルから押し出される何千もの炭素繊維の非ニュートン流動をシミュレートし、性能を最大化する最適な繊維長さと整列方法を見出せる。

研究チームによると、DIWプロセスは炭素繊維に新しい自由度を与え、部品のメソ構造を制御できるという。全ての炭素繊維が同一方向に向く部品をプリントすることも可能で、ランダムな方向に向く他の製造手法による同種材料の性能を凌駕することができる。そのため、使用する炭素繊維を2/3に削減しても、最終製品において同等の性能が得られる。

主席研究者James Lewicki氏の率いる研究チームは、次の課題としてプロセスの最適化を進めるとともに、この技術の将来に向けて航空宇宙や防衛産業界、一般産業界における連携機関と議論を始めている。

fabcross for エンジニアより転載)

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