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押しボタンの奥深い世界——押下の正確性を向上するシミュレーションを開発

フィンランドのアールト大学と韓国科学技術院KAISTの共同研究チームが、正確性や信頼性、操作性等に優れたボタンの設計を目標にしたシミュレーション技術を開発した。研究成果は、2018年4月21~26日にモントリオールで開催される「コンピューター科学における人間要素に関するCHI Conference」 にて発表予定だ。

アールト大学のAntti Oulasvirta教授は、「リモコンの押しボタンは、ピアノの鍵盤とは違う。上手にボタンを押す人は驚くほど優雅にコントロールしているが、その一方でボタン操作に失敗することもあれば、押しにくいボタンもある。これまでボタン操作に十分な理論的説明はなかった」と語る。

人間は、押しボタンの内部構造を知らずとも操作できる。しかし、ボタンの押下は100ミリ秒以内という短時間に発生するため、反応により動きを修正することはできない。研究者らによると、脳は押しボタンの操作に適した予測内部モデルを学習しているという。KAISTのLee Byungjoo教授は、「この能力がなければ、全てのボタンを毎回新たなボタンとして学習しなければならないだろう」と述べ、「ボタンの内部構造を知らなくても、指の筋肉をモーターのように調整し、より少ないエネルギーでストレスや痛みを避け、最小限の労力で、エレガントなタッチを生み出している」と説明する。

この仮説を実証するため研究チームは、ボタン押下時の変位や力等を1ミリ秒の精度で測定することができるシミュレーションを考案した。そして、従来のようにボタン接点との接触で命令を起動するのではなく、押しボタンが底面を突く時に命令が起動する「Impact Activation」というプロセスを考案した。素早いタッピングを行う実験では、Impact Activationは機械式キースイッチ(Cherry MX switch)よりも94%正確性が向上した。また、容量型タッチセンサーを使ったタッチパネルよりも37%正確性が向上したという。

研究チームによると、指の筋肉の動きや触角を含む、全ての感覚が同時に働くときに、最も優れた操作が達成できるという。Impact Activationでは、ボタン底面を突く時に生じる最大の力を指が明確な触角として感じることで、人間の脳の予測内部モデルの精度が高まり、ボタン操作の正確性が向上すると考えられる。

また研究チームは、タッチパネルは押しボタンよりも操作性が劣るとされる点について、押しボタンの接触信号の方が、タッチパネルよりも明瞭かつ長時間継続するためだという。さらに「タッチパネルでは指を離した後の指の高さが毎回異なるため、次の押下が正確に制御されない。押しボタンの場合、指はボタン上部に停止するため正確性が向上する。」と、研究チームは説明する。

開発されたシミュレーション技術は、ボタン操作が生命線になっている、ゲーマーやミュージシャンらを助けることになるかもしれない。

fabcross for エンジニアより転載)

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