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タッチスクリーン入力を皮膚感覚として伝えるワイヤレスデバイス「皮膚VR」

ノースウェスタン大学の研究チームは、仮想現実(VR)に触覚を加えられる薄型ワイヤレスデバイスを開発した。振動を伝えるアクチュエータをシリコン素材に埋め込んだパッチを肌に貼ることで触感を伝える「皮膚VR」と呼ぶこの技術は、バッテリーを必要とせず、肌に直接密着することが可能だ。研究成果は、2019年11月21日の『Nature』誌に掲載されている。

今回開発した15cm角のデバイスには、直径18mm、厚さ2.5mmのアクチュエータが32個組み込まれている。個別に制御可能なアクチュエータがそれぞれ振動を発することで、皮膚に触感を伝える仕組みだ。ユーザーがスマートフォンやタブレットのタッチスクリーンに触れると、タッチパターンはパッチを通じて皮膚の対応箇所に伝わる。例えば、ユーザーがタッチスクリーンに「X」という文字を描くと、ユーザーの皮膚上に「X」がリアルタイムで描かれる。このデバイスは、スマートフォンの電子決済にも使われている近距離無線通信(NFC)プロトコルを利用している。

皮膚VRを使えば、遠く離れた人と身体的なコミュニケーションを取れるようになるかもしれない。また、ゲームやエンターテイメントの分野における応用も予想できることだろう。しかし、それだけにはとどまらず、触覚フィードバック付きの義肢や人間味のある遠隔医療への応用も期待できる。

イラク戦争により右腕をひじ下から失った米退役軍人のGarrett Anderson氏は、皮膚VR技術を取り入れた義手を試してみた。自身の上腕にパッチを貼ることで、義手の指先から上腕に触覚が伝わる。得られた感触は、Anderson氏が物を握る強さに依存した。

「上腕への感覚インプットを通じて、義手の指先の感覚を再現します。脳は腕に感じた感覚を指先で感じたと変換できるのです」と、研究チームのJohn A. Rogers氏は説明する。

Rogers氏は、今回のデバイスは最初の一歩だと言う。研究チームはすでに、より薄型で軽量のデバイスを作製している。また、温度や伸縮性を感じられるなど異なるタイプのアクチュエーターを利用した技術開発も計画中だ。さらに、アクチュエーターをより小型化し、大量に埋め込むこともできると考えている。将来的には、衣類にデバイスを埋め込んで、触感を伝えられるVR衣類ができるかもしれない。

「現在VR分野では視覚や聴覚の利用が主であり、触覚フィードバックの技術は遅れています。触覚は人と人との最も深い感情的なつながりをうみだす」とRogers氏は語る。

fabcross for エンジニアより転載)

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