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金属表面の殺菌作用を高めるレーザー加工技術を開発

Purdue University photo/Kayla Wiles

銅には殺菌作用があることは昔から知られていて、排水溝のストレーナーやたわしなど日用品にも使用されている。米パデュー大学の研究チームは、レーザーを使って銅の表面を特殊加工すると、さらに殺菌効果を上げられることを見出した。研究結果は、2020年2月11日付けの『Advanced Materials Interfaces』に掲載されている。

細菌性病原菌は、物の表面に付着した後も何日か生存できる。例えば、ドアノブのように頻繁に手で触れる物を、殺菌仕様に変えられたらどれだけ安心なことだろう。銅の殺菌作用は優れてはいるが、細菌が死滅するまでは何時間もかかる。その理由の1つは表面が非常に滑らかな形状をしているからだ。

「我々は、銅表面の殺菌特性を効果的に高めるワンステップのレーザー加工技術を開発した」と、研究チーム率いるRahim Rahimi助教は語る。金属表面に直接、レーザーでナノスケールのパターン加工を施すというもので、デコボコ形状のパターンによって表面積が大きくなり、表面に付着した細菌がパターンで断裂しやすくなるという仕組みだ。

病原性細菌を使った試験では、細菌は銅の加工面に接触した直後から細胞膜に損傷を受け、緑膿菌は40分、薬剤耐性菌として有名なMRSAは90分、大腸菌は60分、黄色ブドウ球菌は120分で完全に根絶した。

研究チームは、細菌の増殖やバイオフィルムの形成を減らすため、他の金属やポリマーにもこの技術を応用し始めている。例えば、整形外科用インプラントに抗菌加工を施せば、細菌の増殖を抑える抗生物質の投与が不要になり、薬剤耐性菌や感染の拡大を防ぐことができる。

表面の形状加工には、細菌との接触機会を増やすだけでなく、より親水性を持たせるという別の効果もある。その結果、整形外科用インプラントでは、細胞との接着能力が向上し、インプラントと骨との接合の改善が期待できる。研究チームは、この効果を線維芽細胞で確認している。

金属の抗菌特性を上げる方法には、抗菌ナノコーティングもあるが、これらのコーティングは浸み出しやすく、環境への影響も懸念されている。今回、研究チームが開発した技術は、そのシンプルさとスケーラビリティから、既存の医療機器の製造工程にも取り入れやすいと考えている。

現時点では残念ながら、細菌よりもサイズの小さいウイルスに対応するような加工が難しく、新型コロナウイルスの対策にはならないということだが、今後の研究が期待される。

fabcross for エンジニアより転載)

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