昆虫や小動物向けのVRシステム「Raspberry Piバーチャルリアリティシステム」を開発
2020/09/25 10:30
カリフォルニア大学サンタバーバラ校は、ハエや仔魚など、小さくて自由に動く動物にバーチャルリアリティ環境を提示するための多用途のツールとして、「Raspberry Piバーチャルリアリティシステム(PiVR)」を開発した。この研究は2020年7月14日、『PLOS Biology』に掲載された。
光を用いて特定のたんぱく質を活性化させ、遺伝子学的に動物のニューロンの活動を制御する光遺伝学を使うことで、バーチャルリアリティを作り出すことができる。つまり、光遺伝学によって、遺伝子学的に標識されたニューロンの活動と特定の行動との因果関係を調べることができる。しかし、必要とする技術が非常に高価で、複数の実験を並行して実行したくても、充分な実験器具を用意できないという課題があった。
そこで研究チームの1人は、4年間の開発と改良を経て、より高価な機器に匹敵する性能で、手頃な価格のPiVRを設計した。PiVRをオプトジェネティクスのような技法と併用することで、行動に関与する神経回路のマッピングと特徴づけを容易にすることを狙う。
PiVRは、Raspberry Piを中心に、LEDとLEDコントローラー、カメラ、タッチスクリーンなどで構成され、オープンソースコードで記述されている。多用途でカスタマイズ可能なシステムで、リアルタイムの行動追跡と刺激の提供とのフィードバックループを実施できる。
1ユニットあたり500ドル未満で、システムのコストを少なくとも10分の1に削減する。PiVRモジュールの製作に必要なのは、3Dプリンターとはんだ付けステーションのみで、6時間程度で完成させられる設計だ。
PiVRシステムを使用した実証実験では、ショウジョウバエの幼虫が、実際の匂い勾配と仮想の匂い勾配に対応してどのように動きを変えるかを示した。次に、苦味感知ニューロンを光遺伝学で活性化したことによって引き起こされた苦味と関連した場所を回避するために、ハエの成虫が運動速度をどのように適応させるかを示した。さらに、ゼブラフィッシュの幼虫が、空間的勾配を模倣した光の強度の変化に応じて、自身の方向転換操作を修正することを示した。
PiVRは、光遺伝学を利用して神経回路の機能を調査するための障壁を低くするものだ。より少ない予算で実験ができれば、より多くのアイデアや仮説をテストすることができるとしている。
(fabcross for エンジニアより転載)