MIT、乳がんの早期発見を可能にするウェアラブル超音波スキャナーを開発
2023/09/07 06:30
乳がんは初期で発見されると生存率がほぼ100%である一方、進行した状態では5年生存率が約40%に低下する。マサチューセッツ工科大学(MIT)の研究チームは、乳がん全体の生存率向上を目指して、初期の段階で腫瘍を発見できるウェアラブル超音波デバイスを開発した。ブラジャーに組み込んで使用するこのポータブル超音波デバイスは、マンモグラフィなど医療機関で行う定期検診の間の期間に、自宅で利用することが想定されている。研究成果は、『Science Advances』誌に2023年7月28日付で公開されている。
定期的なマンモグラフィ検査を受けているにもかかわらず、検診と次の検診の間に発生するがんは存在する。「インターバルキャンサー(interval cancers:中間期がん)」と呼ばれるこのがんは、進行度が高く予後不良となる傾向にある。
新しく開発した超音波デバイスは、医療機関で利用されている超音波診断装置と同様の超音波技術を用いているが、新しい圧電材料を採用することで小型化に成功した。柔軟なパッチをブラジャーに装着し、超音波トラッカーをパッチに沿って動かすことで、乳房組織をさまざまな角度からリアルタイムに画像化できる。
パッチは六角形の内部が開口した柔軟なハニカム構造をしており、磁石でブラジャーに取り付ける。超音波スキャナーは小型のトラッカー内に存在し、トラッカーを動かして乳房全体を画像化する。スキャナーは回転するため、さまざまな角度から撮像することが可能だ。超音波デバイスの操作に、特別な知識は必要ない。
研究チームは、乳腺嚢(のう)胞の既往歴がある71歳の女性を被験者として、このデバイスの性能をテストした。その結果、直径0.3cmという初期の腫瘍に匹敵する大きさののう胞を検出することができた。また解像度は従来の超音波検査に匹敵し、深さ8cmまで組織を画像化できる。
研究チームは、乳がんリスクが高く、頻繁に検査をしなければならない人たちが、このデバイスを自宅で使用することを想定している。目標は、検診頻度を上げることで生存率を98%まで高めることだという。
現状ではこのデバイスから得られる超音波画像を見るには、医療機関で使用している従来の超音波診断システムに接続しなければならない。しかし研究チームは、スマートフォン程度の大きさの画像診断システムの開発に取り組んでいる。またAIを活用した画像の経時的変化の分析や、他の身体部位への応用も検討中だ。
(fabcross for エンジニアより転載)