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クラウドファンディングとものづくりの可能性

クラウドファンディングのオープンプラットフォームを目指すCAMPFIREのこれから

クラウドファンディングの運営者たちはどのような考えで取り組んでいるのか、それぞれの特徴やクラウドファンディングの運営者が考えるクラウドファンディングの活用方法などを明らかにする本連載。前回に引き続き、日本のクラウドファンディングサイトの草分け「CAMPFIRE」を運営する、ハイパーインターネッツ代表取締役の石田光平氏に話を聞く。今回はCAMPFIREが目指す多様なプロジェクトの形を支援するための取り組みについて尋ねた。

CAMPFIREは、2012年3月にCerevoと協業し、電子機器やその周辺機器に特化した「Cerevo DASH」というクラウドファンディングサイトを運営している。Cerevoが窓口となり、新しいものづくりに挑戦したい人にクラウドファンディングの場を提供してきた。こうした取り組みを通じて、積極的にものづくり分野のプロジェクトの掲載の間口を広げていった。

2014年9月には、国産の杉やヒノキを使った家具のプロジェクトが立ち上がった。目標金額は60万円。当初、プロジェクトオーナーは国産材のイスのみをリワードに用意していたが、比較的高価で出資のハードルが高いことが課題だった。そこで、プロジェクトの内容をブラッシュアップするキュレーターとやりとりをしながら、手頃で購入できる木のプレートや家具製作キットを選べるようにしたという。そうして出資する人の選択肢の幅を広げたことでユーザーから多くの支持を集め、目標金額を達成した。プロジェクトの魅力を生かしながら、Webでどう集客するか、時にはコラボレーションのアイデアを提案したりして、プロジェクトの支援を行っている事例だ。 

誰もが気軽にプロジェクトをスタートできる環境づくりを

クラウドファンディングサイトを選ぶ基準に、どのような人たちにプロジェクトをアピールしたいかを考えることは重要だ。石田氏は、ものづくりを海外に売り込みたいのであればKickstarterを選び、国内向けに多くの人たちにアピールしたいのであればCAMPFIRE、というように、ターゲットによって使い分けをするほうが良いとアドバイスする。

クラウドファンディングという言葉の認知度は確実に高まっており、クラウドファンディング市場は2011年から成長を続けているが、急成長しているとまでは言えない。その要因に、クラウドファンディングサイトでプロジェクトを始めるハードルが高いことを石田氏は挙げる。プロジェクトを始めるためには、プロジェクトに支持を集めるためのプレゼン能力やプロジェクトページを作るための映像や写真、文章などを用意しなければならない。

多くのクラウドファンディングサイトでは、目標達成金額や支援総額のランキングが取りざたされるが、そうした高額なお金が集まるプロジェクトばかりがクラウドファンディングではないと石田氏は指摘する。目標金額の高いプロジェクトは、達成するためのプロジェクトの作り込みや、リワードの用意など、プロジェクトをスタートさせるための準備期間も長くなりがちだ。より手軽で簡単にプロジェクトをスタートさせ、少ない目標金額から始めたり、手軽にクラウドファンディングに投稿できたりすることによって、幅広いプロジェクトが掲載されるようになればクラウドファンディングの市場が今以上に活性化するのではと石田氏は考えた。

そこで、CAMPFIREでは2015年3月から一定の審査をクリアし、かつ掲載に必要な素材を用意したプロジェクトであれば、CAMPFIREに直接投稿できるシステムを導入した。それまでは、応募された内容を一つ一つCAMPFIRE側が確認し、掲載に必要な素材をチェックし、プロジェクトオーナー側とやりとりしながら目標金額や募集期間、リワードの内容を決定し、CAMPFIREのサイト上に入稿を行って掲載の準備をしていた。これに対し3月からはプロジェクトオーナー自身でCAMPFIREのサイト上でプロジェクトを作成し、編集し、掲載に必要な素材を入稿できるようになった。

審査基準や掲載に必要な素材のリストを明確化し、プロジェクトオーナー自身で入稿作業を行うことによって、入稿完了後に掲載の申請を行って最短3日でプロジェクトがサイト上に公開されるようになった。プロジェクトの作成や申請、公開は無料。支援の募集期間中に目標金額を達成した場合にのみ、CAMPFIREの利用手数料が発生する仕組みだ。もちろん、プロジェクトオーナー側からプロジェクトのブラッシュアップを希望すれば、キュレーターと議論しながらプロジェクトを設計していくこともできる。早くプロジェクトを掲載したい人や、まずはお試しでプロジェクトを掲載したい人にとって、直接投稿の仕組みはありがたいだろう。

いわば、CAMPFIREをクラウドファンディングのオープンプラットフォームとして位置づけ、誰でも気軽に自身のやりたいことを表現してお金を集めることができる場にシフトしようとしているのだ。

誰でも自由に投稿できる仕組みだが、詐欺や、お金を集めたが目標を達成できない、という事案が発生する可能性もある。そうした問題が起きないよう、CAMPFIREとして行う審査を明確化し、プロジェクトオーナーと出資者との合意のもとにリワードなどの製品の交換に関するガイドラインを設けている。

どんなプロジェクトであっても、失敗や問題はつきものだ。だからこそ、支援してくれた人たちに対して、プロジェクトオーナーはプロジェクトで起きていることの説明責任を持つことが大切だ。発送の遅れや、工場とのトラブルなどをきちんと伝え、場合によって返金などの対応も誠意をもって取り組まなければいけない。CAMPFIREはそれらのトラブル解決のためのガイドラインを設けており、状況によっては問題を抱えたプロジェクトオーナーに対して指摘をすることもあるという。 

誰もがクラウドファンディングに取り組むために必要なこと

CAMPFIREは、より多くの一般の人達にクラウドファンディングを広めたいと考えている。そのためには、自身がかなえたいと思うプロジェクトを掲載しようとする人や、プロジェクトに対してお金を支払いたいと思う人が増えることが大事だという。

プロジェクトオーナーになった人が、今度は出資者として他のプロジェクトを応援することも多い。自分自身がプロジェクトオーナーとして多くの人からお金を集め、実現したいプロジェクトを前進させる経験を積むことで、他の人のプロジェクトを応援したいと思うようになるという。

さらに、一度クラウドファンディングで出資をした人は、二度、三度と違ったプロジェクトを支援するようになる。中には、特定のジャンルのプロジェクトに対して、継続的に出資をする人もいるという。クラウドファンディングという場を通じ、これから成長する新しいクリエイターや世に出ていない面白い作品に最初に触れる機会を得られると考える人も多い。

厳選された少数のプロジェクトだけでなく、目標金額が少額なものから高額なものまで、CAMPFIRE側で必要以上の制限をかけることなく数多くの活動が発信されるオープンな場から新しい価値や製品が生まれてくる、という考えがCAMPFIREにあると石田氏は語る。 

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