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クラウドファンディングとものづくりの可能性

Makuakeが考える、成功するクラウドファンディングに求められるキュレーターの存在

クラウドファンディングの運営者たちがどのような考えのもとに日々取り組んでいるかを明らかにする本連載。この数年、いくつものクラウドファンディングサイトが立ち上がるなかで、大手ネット系企業のサイバーエージェントの子会社が、クラウドファンディングサイト「Makuake」をスタートさせた。グループ会社のベンチャー投資で培った経験やノウハウをもとに、これまでに数千万円規模の資金調達を果たしたプロジェクトを生み出すなどの成功を収めている。
いかにしてプロジェクトを成功へと導くのか。その要因やMakuakeの取り組みについて、サイバーエージェント・クラウドファンディングの代表取締役社長中山亮太郎氏に話を聞いた。

Makuakeは、サイバーエージェントのグループ会社である、サイバーエージェント・クラウドファンディングが運営するクラウドファンディングサイトで、2013年8月にサービスをスタートしている。

サービス開始時には、スポーツ、地域活性化、お笑い・エンタメ、教育などの7つのカテゴリーでスタートしたが、現在ではプロダクトや音楽、テクノロジー、ファッション、アニメ・マンガなど、20以上のさまざまな分野を取り扱うサイトへと成長している。 

2015年5月には、こうの史代氏原作の漫画作品「この世界の片隅に」を片渕須直監督により映画化するためのプロジェクトがMakuakeにてプロジェクトを実施。映画ジャンルでは国内史上最高記録の3622万円の資金を集めてプロジェクトを成功させ、日本でもクラウドファンディングを通じて数千万円規模の資金調達が可能なことを示した。他にも、Makuakeでは数千万円、数百万円規模の資金調達を果たしたプロジェクトが数多くある。国内のクラウドファンディングサイトとしては後発のリリースながら、いまでは毎月数百件の問い合わせがあるなど、集めた金額の額やプロジェクト掲載数も右肩上がりで成長しているサイトだ。

資金ニーズだけではない、マーケティングソリューションの場を求めて

クラウドファンディングは資金的なニーズに応える形で捉えられがちだが、中山氏は、資金的なニーズだけではない、日本の企業全体が抱える課題に応えられるものだという。ビジネスにおいて、自分のアイデアがヒット商品になるのかといった悩みは尽きない。作ったものが売れるのか、作ろうと思っているものがユーザーのニーズに合っているのかなどの確証がないために、日本ではなかなか新しい製品がでないのでは、と中山氏は考えた。

Makuakeをスタートした2013年当時は、クリエイターなど創作活動をする人たちのための場としてクラウドファンディングが使われていたが、日本が持つ技術やものづくりがより生きる場が必要なのではと考えた。そこで、Makuakeでは、工場見学に行って大手メーカーの担当者と意見交換したりして、ものづくりの現場のどこに課題があるのかヒアリングを行った。そうしたなかで、いかに市場に受け入れられるヒット製品を生み出すか、そのための手段が求められていることを実感したという。

そこで、顧客の意見を聞き、製品をブラッシュアップし、マーケティング調査をした上で量産体制を整えて販売実績を作り、PRを通じた話題づくりを行うといった、事業フローを確立する手法として、クラウドファンディングはマッチするのでは、と考えた。特に、購入型クラウドファンディングでは、その製品をユーザーが欲しいかどうかが評価の鍵となる。マーケティングの課題を解決し、プロジェクト実行者が実現したい取り組みをかなえる場となるだけの可能性がクラウドファンディングにはあるとし、積極的にさまざまな分野のプロジェクトを掲載するために奔走したことによって、現在のような成長を果たすことができたという。 

綿密な打ち合わせを通じたプロジェクトのブラッシュアップ

プロジェクト掲載に際して、Makuakeではプロジェクトの内容として掲載する内容や出資者に対するリターンの設定に対してアドバイスなどを行うキュレーターが、それぞれのプロジェクトを担当しながらプロジェクトの準備段階から成功までプロジェクトのブラッシュアップを行っている。プロジェクトを成功へと導くために、プロジェクトのターゲットの設定や見せ方、サイト掲載後の広報の手段などを詰めていく。特に、SNSをどのように活用していくかなど、プロジェクトの情報発信を行うための計画を、プロジェクト実行者とキュレーターが一緒になって練っていく。ここでは、審査から最低でも2週間ほど時間をかけながら掲載の準備を行っていくという。

特に重要なのは、ターゲット設定だと中山氏は語る。これまでの経験を踏まえて見えてきたものは、「自身が考えているよりも、よりニッチなターゲット設定を明確にすることだ」という。例えば、「30代女性」といった抽象的なターゲットではなく、「30代女性、都内在住で現在企業に勤めているが毎日仕事が忙しく、帰宅時間も遅い。さらに、既婚者で幼稚園児くらいの子供を育てているワーキングマザー」といった具体的なユーザー像を導き出すことによって、そこにどのようなニーズがあるのか具体的に考えることができるという。 

過去に掲載されたプロジェクトの例では、組み立て式ロボット「RAPIRO」世界展開プロジェクトがある。当初は、エンジニアでロボットに興味がある人に向けたターゲットだったが、そこからさらに一歩踏み込み、エンジニアで子どもがいる父親をターゲットにすることにした。そうすることで、子どもに対して父親はロボットが作れるということを示すことができ、さらにエンジニアの面白さを子どもに伝えることができるなど、より絞ったターゲットに対してプロジェクトをしっかりと伝えるための方法を考えることができたという。

プロジェクトの成功を陰で支えるキュレーターの存在

こうしたプロジェクトの切り口を考えるのが、キュレーターの仕事と言える。担当のプロジェクトを任されているキュレーターにも、Makuakeを通じてそれぞれに得意分野ができるなど、特徴が出てきた。現在は誰がどのプロジェクトを担当しているかはサイトには掲載していないが、今後はどのプロジェクトをどのキュレーターが担当しているかなど、サイト上でキュレーターの個性を表現することによって、プロジェクトをより良いものにする足がかりにできるのではと中山氏は考えているという。

「ベンチャーキャピタルのような存在として、キュレーターを育てていきたい」と中山氏。かつて中山氏自身がVCの経験があったことから、プロジェクトを一緒に伴走してくれるアシスタント、客観的な視点からプロジェクトに対して意見やアイデアを出すメンター的存在として、面白いアイデアのチャレンジの後押しをする役割がキュレーターにはあると語る。プロジェクトのブラッシュアップを通じて、結果として数千万円規模の資金調達を果たしたプロジェクトが生まれるなど、プロジェクトにおけるキュレーターの役割も大きい。優秀なキュレーターをチームに引きこむことがMakuakeとしても今後のさらなる成長に向けたポイントだと語る。 

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