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クラウドファンディングとものづくりの可能性

Makuakeが取り組むPRサポートと、事業戦略におけるクラウドファンディングとの向き合い方

クラウドファンディングの運営者たちがどのような考えのもとに日々取り組んでいるかを明らかにする本連載。大手ネット系企業のサイバーエージェントのグループ会社がスタートさせたクラウドファンディングサイトの「Makuake」。前回に引き続き、Makuakeを運営するサイバーエージェント・クラウドファンディングの代表取締役社長中山亮太郎氏に話を聞く。今回は、大手企業ならではの取り組みや、事業戦略においていかにしてクラウドファンディングと向き合うか、その考えについて尋ねた。

こまめな活動報告でファンを獲得すること

プロジェクトを掲載したら、活動報告をプロジェクトページに投稿することは必要な作業だ。プロジェクト掲載ページで言い尽くせなかった思いや、現在進行形で取り組んでいることなどを発信することで、ユーザーに対してより深くプロジェクトについて知ってもらう機会が増える。こまめな情報発信は、ファンの獲得やファンのロイヤリティを上げるきっかけにもつながる。

プロジェクト内の活動報告ページ プロジェクト内の活動報告ページ

Makuakeでは、プロジェクトを進めるにあたり、いつ、どのような情報を更新するかという綿密なスケジュールを立てるサポートをするなど、定期的な情報更新に向けたアドバイスを行っているという。ユーザーに対して丁寧なコミュニケーションを行うことは、クラウドファンディングにおいては必要不可欠なものだ。

グループ会社を通じたPRサポートでプロジェクトをアシスト

プロジェクトを成功に導くために、Makuakeでは、4000万人の会員を抱える「Ameba」をはじめとするグループ会社内で運営するさまざまなメディアでプロジェクトを紹介するなど、自社のリソースを活用したPRサポートを行っている。また、自社だけでなく他社のメディアに対しても、プロジェクトに合った適切なメディアに対して効果的な情報提供をしながら、プロジェクトの話題づくりを行っている。キュレーターによるサポートだけでなく、こうしたPRサポートに力を入れているのも、Makuakeの特徴の一つだ。

こうした取り組みを行う理由として、「何がプロジェクト実行者に対して必要か、さらには、サイバーエージェントグループ全体に共通する考え方として持っている、ユーザー(サポーター)にとって何が一番喜ぶものなのかを常に考えることが浸透しているからこそ、出てくるアクション」を中山氏は挙げる。

常に新しいものがそこでは生まれ、それをいち早く購入できるのが購入型クラウドファンディングの特徴でもある。クラウドファンディングを積極的に利用するユーザーは、他にはない新しいものに触れたいと思う人が多い。また、クラウドファンディングと一般的なeコマースとの違いの決定的な違いはそこにあると中山氏は語る。

ユーザーにとってどのような価値があるかを常に意識しながらプロジェクトをブラッシュアップするよう心がけていると語る中山氏。アイデアからプロダクトやサービスへと落としこむための大きな方向性として常に大事にしながらサポートしているという。

もちろん、プロジェクトのブラッシュアップだけでなく、プロジェクト掲載後のコミュニケーションや配送など、実際に製品やサービスがユーザーの手に届くところまでをクラウドファンディングのプラットフォームの運営者としてもできるだけサポートしていく。そうしたトータルのサービス設計を通じて、プロジェクト実行者とユーザーそれぞれが満足する場になると考えているという。 

進捗共有は正直に

ユーザーにとって、援助したプロジェクトが目標金額を達成したものの、製品が届かないことが最も大きなリスクだ。こうした問題が起きないよう、Makuakeでは事前の審査や掲載前のキュレーターとの打ち合わせ、掲載後の定期的な進捗報告といったコミュニケーションをプロジェクト実行者に求める。また、サイト内でも実行者側、ユーザー側それぞれに対してガイドラインを明示し、なにか問題が発生した場合のQ&Aなどを設けている。

ものづくりにおいては、工場とのやりとりから納期が遅れることはしばしば発生してしまう。プロジェクト実行者は、そうした出来事もきちんとユーザーに対する進捗報告を行うべきだと中山氏は語る。できるだけ透明性を高く情報を共有することで、ユーザーに「生みの苦しみ」を知ってもらうことが共通の経験となる。そうした苦労を知ることで、実際に製品が手元に届くときの感動はまた違ったものになってくる。ユーザーに対して正直に伝えることが大切だ。 

事業戦略におけるクラウドファンディングの位置づけを明確に

クラウドファンディングサイトの大手の一つに、「Kickstarter」がある。日々、最新のハードウェアのプロジェクトが掲載され、数億、数千万円規模の資金調達を果たした、というニュースが報じられることがしばしばある。では、資金を集めたい人にとってKickstarterにプロジェクトを掲載すれば良いのかといえば、そうではないと中山氏は言う。大事なのは、クラウドファンディングに掲載することそのものが目的ではなく、どういった事業戦略にもとづいてクラウドファンディングを活用していくかを考えることだという。

特にものづくりにおいては、製品の流通体制や生産体制など、考えることはたくさんある。輸出禁止項目の確認や配送ルートの確保など、整えるべきことは多く、それには資金や手間がかかる。これまでにMakuakeを利用したプロジェクト実行者の多くは、小規模生産から始めているためにまずは国内へ流通させながら、ユーザーの反応などを通じてプロダクトをブラッシュアップさせるためにMakuakeを利用している、という意見が多かったという。クラウドファンディングサイトの利用を一時的なことにしてしまうのではなく、その後の事業の展開を見据えながら、使える予算や期間のなかで、まずはスモールスタートで始められる場所から始めるべきだという。そうした点において、国内のクラウドファンディングを使うことは大きな意味がある。 

クラウドファンディングは、仲間とファンを集めるプラットフォーム

プロジェクト実行者にとって、自分のアイデアや製品がユーザーに受け入れられるかどうか、不安は尽きないものだ。しかし、クラウドファンディングを利用することで、それまで自分自身が考えたアイデアや製品が、実際に多くのユーザーに感動やニーズに与えられるということが、次第に認知され始めている。

いままでにない新しい価値を生み出そうとする製品やサービスだからこそ、銀行などの投資をする人たちにとってはその製品に価値があるかどうかを見極めるのは難しい。しかし、クラウドファンディングを通じてそれまで目に見えなかったユーザーの声を顕在化することによって、製品に高い価値があることの証拠となる。新しい製品やサービスを生み出したい人にとって、クラウドファンディングはまさにプロジェクトの仲間やサポーターを集める場と言えるかもしれない。

Makuakeでは、プロジェクトに成功した実行者に対するインタビューや、プロジェクト達成後の活動の様子を紹介するコーナーがある。その目的は、クラウドファンディングを経たその後のサクセスストーリーをユーザーに伝えるためだ。

「Makuake」の名前の由来でもある“アイデアの幕開け”を生み出すために、クラウドファンディングを通じて新しいステップを踏みだしたサクセスヒーローを1人でも多く生み出し、そして新しくチャレンジする人を応援していきたいという考えがそこにはある。

その先には、日本のものづくりをバックアップし、日本発で国内や世界に影響を与える製品を多く生み出したいという気持ちがあると、中山氏は語る。 

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