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クラウドファンディングとものづくりの可能性

日本のクラウドファンディングの先駆けCAMPFIREが考えるプロジェクト成功の秘訣

実現したいプロジェクトに少額の出資を募るクラウドファンディングが、日本でもひろがりを見せはじめた。最近では、ハードウェアのプロトタイプ開発の資金集めや、作家やアーティストらによる作品制作費用を集める場として利用されている。数多くのプラットフォームがあるなかで、クラウドファンディングを運営する運営者たちがどのような考えで運営しているのか、それぞれの特徴や運営者が考えるクラウドファンディングの活用方法などを明らかにしていく。
今回は、日本でも初期に立ち上がったクラウドファンディングサイト「CAMPFIRE」を運営するハイパーインターネッツ代表取締役の石田光平氏に話を聞いた。

「CAMPFIRE」は、2011年6月にスタートした、日本では初期に立ち上がったクラウドファンディングサイトだ。当初は、映画監督やアニメーター、クリエイターらが作品制作を行うための資金集めなどに利用されてきた。2011年10月には、パーソナルモビリティの「WHILL」が開発資金を募集するプロジェクトを掲載し、100万円以上を集めて注目された。ものづくりやマンガ、アニメ、映画、音楽など新しい価値を作るさまざまな分野のクリエイターが活用するプラットフォームとして幅広い支持を得ている。

ものづくりに特化しているわけではないが、オールジャンルで多様なプロジェクトが走っており、毎日閲覧しても楽しめるようなメディア的な面白さを大切にしながらさまざまな分野のプロジェクトを掲載している。

クラウドファンディングでは集めた金額に注目しがちだが、CAMPFIREではクリエイティブやカルチャーを大切にしている。CAMPFIRE独自の基準により選んだプロジェクトを、積極的にWebサイトのトップやメールマガジン、SNSなどで紹介していきながら、世の中に対して価値を生み出すクリエイター支援の意味合いを強めている。

サイトに掲載されるプロジェクトの審査には、内部で一定のハードルを設け、それに達しないものであれば掲載を断ることもあるという。CAMPFIREには募集したプロジェクトに対する審査や企画に対してフィードバックなどを行うキュレーターという役職がある。審査だけでなく、プロジェクトに対してより支援が集まるようにするためのアドバイスや、リワードの詳細などを議論しながらプロジェクトをブラッシュアップしていく存在だ。 

プロジェクトを掲載するために気をつけることは?

1つは、より多くの人にリーチできるような感覚でプロジェクトをつくることだ。そのためには、プロジェクト自体の面白さや、リワードにおける値段設定を丁寧に作りこまなければいけない。例えば、音楽であればライブに行ける人もいれば行けない人もいる。ライブチケットだけを配るのではなく、家でも視聴できるような特別な音源のダウンロードを配布する、という発想もできる。リワードの設定は、どういったものならユーザーが喜ぶか、どういったリワードであればユーザーはお金を払ってくれるのかを、さまざまな可能性を考慮しながらより多くの人にリーチできるよう考えなければいけない。

2つめは、プロジェクトをやりたい気持ちをきちんと文章に落としこむことだ。そのプロジェクトの実現がその後にどういった新しい価値を生み出すのか、掲載されているプロジェクトの内容を読んだ人に、応援したいと思ってもらえるための情熱をきちんと表現しなければいけない。

3つめは、プロジェクトの実現性を理解してもらうことだ。プロダクトであればプロトタイプやモックアップを見せること、音楽や映像であれば音源や素材、映画であればキャストが自ら登場したりするなど、事前の期待感を醸成し、かつそのプロジェクトが完成するという実現性をしっかりと表現しなければいけない。また、実現性を優先し、それに伴う目標金額の設定を理解してもらうことが必要だ。プロジェクトのためにはどれくらいのお金が必要なのか、見積もりなどを出すことで、実現性の説得力が増してくる。

CAMPFIREは、プロジェクトを掲載するだけでなく、メルマガやオウンドメディアなどに力を入れてプロジェクトに関する情報発信をしながら、サイトのページビュー(PV)を集めることを意識している。PVを高くすることで掲載しているプロジェクトが多くの人に目に触れやすい機会を作り、プロジェクト自体の広報につなげている。実際に、CAMPFIREに掲載したことをきっかけにメディアで取り上げられ、プロジェクトが成功したりその後の活動の弾みになったりした例も多いという。

クラウドファンディングの成功の秘訣に、ファンディング開始前にプロジェクトオーナー自身やプロジェクト自体にファンや支援してくれるコミュニティがあることが大切だと言われている。そうしたコミュニティの応援がSNSによる拡散に大きく貢献することでプロジェクト自体の認知が高まることは間違いない。 

プロジェクト成功後の取り組みにも気を配る

ユーザーは、実際にお金を支払う立場だからこそ、プロジェクトオーナーたちが思っている以上に物事に関してシビアな感覚を持っている。お金が動くサービスだからこそ、プロジェクトオーナー自身がやりたいこと、実現したいことを誠実に伝え、なぜそのプロジェクトが重要なのか、プロジェクトが成功した先にあるビジョンがどのようなものかを明確にすることが求められる。

プロジェクトは掲載して終わりではなく、SNS上でプロジェクトを支援してくれた人に対して積極的にコメントすることをCAMPFIREでは推奨している。CAMPFIRE内には活動報告ページがあり、そこではプロジェクトの進捗状況などをブログ形式で書き込むことによって、支援者との継続的なつながりを構築できる。CAMPFIREとしても、今後はコミュニケーションに力を入れていきたいと考えている。高額な支援を集める要因として、コミュニケーションは大きな影響力を持っているといえる。

期間内に目標金額を達成し、無事プロジェクトが終了しても、そこで気を抜いてはいけない。その後からが、クラウドファンディングは本番だ。海外ではクラウドファンディング成功後に製品が届かなかったり製品の配送が遅れる事案から訴訟につながった、という事例もある。プロジェクトオーナーに対しては、プロジェクトの掲載から配送完了までの一連のフローにきちんと取り組むための準備が求められる。CAMPFIREでは、無料でオンラインストアを開設できる「BASE(ベイス)」というサービスや、「Ez-logi」という配送代行サービスなどと提携しており、成功したプロジェクトオーナーに対して配送代行サービスの一部ディスカウントを行っている。CAMPFIREとして、今後はプロジェクトの開始からプロジェクト後も継続したサポートを行う体制を充実させていきたいと考えている。

CAMPFIREは2014年から「CAMPFIRE MAG 」というWebメディアを運用している。CAMPFIRE MAGは、プロジェクト成功のためのノウハウの共有や、掲載されたプロジェクトのその後の活動などを発信していく目的で運用されている。プロジェクトのその後を発信することで、メディアとしての面白さや、CAMPFIREに掲載されているプロジェクト自体の多様性を表現しながら、多くの人がCAMPFIREでプロジェクトを始めるための後押しをする。他にも、「CAMPFIRE Academy」など、プロジェクトを始めようとしている人たち向けの勉強会を定期的に開催している。

クリエイターを支援するという考えのもとに幅広い活動を行っているCAMPFIRE。クラウドファンディングサイトとメディアの両輪を回しながら新しい価値を生み出すプラットフォームを目指しているのだ。 

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