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クラウドファンディングとものづくりの可能性

お金だけではない、ものづくりに必要なさまざまな支援を提供するMakerプラットフォームとしてのzenmono

2013年からスタートした、ものづくりに特化し町工場や個人でものづくりを行う人を支援するクラウドファンディングサイト「zenmono」がある。2015年8月時点で、19件のプロジェクトすべてが成功するという、プロジェクト成功率100%を誇るサイトだ。クラウドファンディングだけでなく、中小企業のための自社商品開発講座 「zenschool」ももうすぐ13期を迎えるなど、クラウドファンディングにとどまらない多岐に渡るものづくり支援を行っているenmonoの三木康司氏と宇都宮茂氏に、ものづくり支援にかける思いについてお話を伺った。

ものづくりの一歩を踏み出す環境を

クラウドファンディングサイトzenmonoを運営するenmonoは、2009年11月に会社を設立。「マイクロモノづくり」という概念を提唱し、中小製造業の自社商品開発を支援するのが目的だ。

事業の柱として実施しているのは、自社製品開発など中小企業を支援する教育事業やコンサルティング事業として、町工場の経営者向けセミナーや、経営者を教育するzenschool。zenschoolでは、2カ月間商品開発や販促に関する講座を行い、最終発表でどんな製品を作るかを共有する。これを通じて、町工場や中小企業が、下請けではなく自社商品を開発する後押しをするのが狙いだった。

しかし、発表後も具体的な事業として進める企業が少なく、その後のアクションへと結びついていない状況が続いたという。そこで、zenschool卒業生が発表したプロジェクトを2012年6月にクラウドファンディングサイトのCAMPFIREに掲載した。クラウドファンディングで実際に資金調達を行うことで、商品化への具体的な一歩を踏みだそうと試みたのだ。その結果、掲載した「無駄にかっこいいヌンチャク系iPhoneケース『iPhone Trick Cover』」は目標金額を大きく上回る資金を調達し、町工場発のクラウドファンディングプロジェクトとして注目を集めた。続いて2013年1月にCAMPFIREに掲載した「プリント基盤アート!繊細でテクニカルなアクセサリー【Headig Leaf】」も目標金額を上回る支援が集まり、町工場発のプロジェクトの資金調達を連続して成功させた。

だが、CAMPFIREに掲載したプロジェクトのオーナーたちは、実際に商品化を進めていくなかで資金を集めるだけでは製品自体が完成しないという問題に直面していた。そこで、製品完成に向けてどう対処すればいいかといった相談を三木氏らに相談していたという。クラウドファンディングを通じて、資金面だけではない課題が浮き彫りになったことから、ものづくりを成功させるためにはお金だけでないさまざまな支援が必要だと考えた三木氏と宇都宮氏は、ものづくりのパートナーを見つけることができるプラットフォームとしてクラウドファンディングサイトのzenmonoを2013年5月に立ち上げた。 

自社商品の開発を後押しする経営セミナーのzenschool概要ページ。 自社商品の開発を後押しする経営セミナーのzenschool概要ページ。

ものづくりプラットフォームとしてのzenmono

一般的なクラウドファンディングサイトに比べると、確かに掲載されているプロジェクト数は少ないが、zenmonoでは数多くプロジェクトを掲載するのではなく、プロジェクトオーナーとともにプロジェクトに掲載する商品に関する細かな議論や広報戦略など、丁寧なコミュニケーションを通じてプロジェクトをブラッシュアップしている。

基本的にzenmonoに掲載されるプロジェクトは、zenschoolの受講生が中心だ。プロジェクト掲載に際して、三木氏や宇都宮氏らは事業計画や原価計算などの費用をオーナーと一緒に見積もったり、プロジェクトをともに作りあげるパートナーとして協力してくれる工場を紹介したりするなど、さまざまな角度からプロジェクトの支援を行う。zenschool受講生でなくても掲載は可能だが、面談などを通してプロジェクトオーナーの情熱やものづくりに対する考えを理解してからでなければ掲載の許可はしないという。

これまでにzenschoolは12期が実施され、トータルで52人の卒業生を輩出した。zenmonoに掲載されたプロジェクトは2015年9月時点で19件である。他にも、1支援あたりの支援金額の平均やプロジェクト着手から公開までの期間、プロジェクトのページ数、プロジェクトの画像数、プロジェクトの動画時間、プロジェクト内容の改定回数といったさまざまなデータをサイト上で公開している。他にも、プロジェクトを掲載するための手順などをまとめたマニュアルも公開。プロジェクトに関する統計データも包み隠さず公開することで、少しでも成功するものづくりのヒントとなる情報を提供しようという考えがある。

プロジェクトの掲載後も、開発に適した町工場を紹介したり、投資家とのマッチングを行ったりしている。プロジェクトが成功し量産体制が整ったら、プロジェクトページ上にEC機能を加え商品を購入できるページも設置する。他にも、プロジェクトページではお金の支援だけでなく、ボランティアスタッフやデザイナー、エンジニア、カメラマンや通訳など、お金以外の支援を募る項目も用意している。こうしたさまざまな機能を用意している背景として三木氏は「製品開発がスムーズにいくために必要な機能を備え、かつ仲間やファンを集めるためのプラットフォームでありたい」と語る。

zenmonoは、事業としては教育事業などを軸に展開しており、クラウドファンディングによる手数料だけをビジネスにしているわけではない。数多くのプロジェクトを掲載し手数料を得るのではなく、一つ一つ丁寧にプロジェクトを成功させ、その後のサポートも充実させている。「一般的なクラウドファンディングとは違い手離れが悪いが、プロジェクトオーナーに伴走しながら成功へと導くためにサポートをするパートナーでありたい、クラウドファンディング事業含めた、大きな意味でのメイカープラットフォームを目指したいんです」と三木氏は話す。

他にも、2010年から継続して配信しているネット番組「マイクロモノづくりストリーミング」がある。毎回ゲストを呼び、ゲストが取り組んでいるプロジェクトやその背景にある考えなどを対談形式で話す番組だ。2015年9月ですでに第112回を数え、多くのゲストが登場している。同ネット番組は、クラウドファンディングを始める以前から取り組んでいたコンテンツで、登場するゲストはクラウドファンディングのプロジェクトオーナーだけでなくものづくりに携わる人物を軸にさまざまな分野で活躍する人物を呼んでいる。 

ゲストを呼び、定期的に開催している対談番組の「MMS(マイクロモノづくりストリーミング)」。 ゲストを呼び、定期的に開催している対談番組の「MMS(マイクロモノづくりストリーミング)」

ネット番組の内容は、文字に書き起こし、編集してzenmono内のコンテンツとして発信。過去のネット番組の登壇者のトーク内容含めて、膨大なコンテンツを通して、その人となりやものづくりにかける思いを発信する場となっている。ネット番組に出演したことがきっかけでプロジェクトオーナーとなったり、別のプロジェクトの協力パートナーとなったりするなど、さまざまなつながりを生み出している。

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