Dig up the underground「プロダクト一機一会」by 松崎順一
ヒップホップカルチャーに影響を与えたメイドインジャパンラジカセ「VICTOR RADIO CASSETTE RECORDER RC-550」
梅雨が明け(執筆時)、いよいよ夏本番の時期になったが、コロナの感染拡大中の中、心はなかなか晴れない日々が続いている。8月は例年だとお盆の期間の前後を利用して、なかなか訪問できない遠方に蒐集活動に行くことが多いのだが、今年は難しいようだ。そんなわけで都内を中心に蒐集活動時に出会ったのが1979年にビクターが発売した「RC-550」だ。ラジカセは1970年代後半から大型化が加速し、ステレオタイプが主流になる。そんな中に登場したRC-550はなぜかモノラルだが、国産最大級のサイズで登場した。
そのデザインはかなり斬新で、日本ではホームカラオケ用として流通、海を渡ったアメリカでは当時新たなカルチャーとして台頭したヒップホップと融合し、ヒップホップのアイコンとして歴史に刻み込まれ今でも人気を誇っているラジカセだ。それでは本体を詳しくみてみよう。
まず本体のサイズだが、横幅約50センチ、高さは約36センチと、モノラルラジカセとしては国内最大級だ。
RC-550を見て、すぐに目に付くのが、本体の両側についているバーハンドルだ。このハンドルの真の意図は当時のデザイナーに聞かないと分からないことだが、倒れたときの全面保護のためもあるが、筆者はやはりデザイン優先のような感じがしている。
さらに驚くのが、モノラルなのに3ウェイスピーカーで、ウーハーはなんと25センチ、中音用のスコーカーも付き、一般オーディオのスピーカー並みの装備だ。
ピークメーターとして5連の赤色LEDが正面左側に配置されていて、時代を感じさせる。
その右側には針式のパワーメーターも装備している。音声信号レベルを示すVUではなく、スピーカーから出る音の大きさにより針が動く方式のメーターになる。
ユニークなのが内蔵マイクで、300度の自由に回転させて音をキャッチすることができるギミック式マイクになっている。
RC-550はホームカラオケ全盛時代に産まれたため、上面の操作部にはマイクミキシング機能が装備されている。
もう一つ、カラオケに必要なカセットテープの速度調整もついていて、音域を合わせやすくしている。
RC-550は、その大きさの割に入出力端子はいたってシンプルで、RCA端子ではなく、ミニジャック方式になり、出力端子はない。
電池で駆動するときは単一乾電池8本を使用する。
モノラル最大級のRC-550は、機能よりも迫力を打ち出したデザインが、今の時代に至るまで圧倒的な存在感を示しているラジカセだ。
「VICTOR RADIO CASSETTE RECORDER RC-550」
販売時期:1979年
1979年に起きた主な出来事
- 立石電機(現:オムロン)が日本初の電子体温計を発売
- 西武ライオンズ球場(現:メットライフドーム)開場
- 藤子・F・不二雄原作アニメ「ドラえもん」(テレビ朝日系)放送開始