Dig up the underground「プロダクト一機一会」by 松崎順一
1970年代の生録ブームを牽引したマニア憧れのカセットレコーダー「SONY TAPECORDER TC-2850SD(カセットデンスケ)」
2020年の夏はやはり猛暑の夏だった。7月から週の半分を渋谷に出した店舗で過ごしたが、都心の半端ない暑さを体感した。蒐集はさすがに厳しく、買い取りを中心に活動をしている。その中で入手したのが、ソニーが1973年に発売したポータブルテープレコーダー(当時ソニーは“テープコーダー”と呼んでいた)、「TC-2850SD」だ。60年代後半から始まった、テープレコーダーを使用した生録(ナマロク)ブームは70年代に入るとさらに盛り上がり、コンサートなどの録音会から、自然の音の録音など、さまざまな音源が対象になった。中でも各地の鉄道路線で蒸気機関車(SL)の運行が廃止されるのに伴い、最後の勇姿を録音しようと、SLが走る路線に多くの生録マニアが集まり話題になった。そんな中、鳴り物入りで登場したのが今回紹介するカセットデンスケ、TC-2850SDだった。この1台から生録の新たな歴史がスタートした。そんな名機を詳しくてみよう。
まず、TC-2850SDを含むこのタイプのポータブルレコーダー全てをソニーは「カセットデンスケ」と呼んでいる。ラインアップも多く、中でもTC-2850SDは元祖に近い存在で、今でも根強い人気がある。
カセットデンスケは基本、ショルダーストラップを付け肩に掛けて使用することが多いため、操作面が上の状態でも操作しやすいように設計されている。
正面左側にはカセットの操作レバーが並び、その下にスピーカーのトーンとボリュームつまみがある。そして左端にはマイクジャック(R/L)とヘッドフォンジャックが並んでいる。
左側にはVUメーター、その下にはメーター照明のスイッチと、乾電池で使用する際のバッテリーチェック用のメーター切替ボタンが並んでいるシンプルな構成だ。メーターは大型で視認性は良い。
本体上面は、カセット部とスピーカーで成り立っている。ただ、スイッチが4つ付いている。
まず左側にはドルビーノイズリダクションのスイッチが装備されている。その隣はノーマルとクロームのテープポジションが切り替えスイッチ。さらにその隣のリミッターは、ONにしておくと録音の際に予測不可能な過入力があったとき、自動的にレベルを下げてくれる便利なスイッチだ。そして右端は入力切り替えのスイッチになる。
カセットテープは横にしたままホルダーに落とし込む感じになる。
操作レバーを押す際の感触は適度な粘りが心地よく、カチッとホールドされる感じも気持ちよい。
AC電源で動かしているときにはVUメーターは常時点灯している。
本体正面左側に、LINE入出力端子、DIN端子などが配置されている。外部スピーカー端子もある。
本体下面は電池ホルダーになっている。単一乾電池4本、6ボルトで駆動する。
TC-2850SDはカセットデンスケシリーズの中でも、ドルビーノイズリダクション内蔵、F&F(フェライト&フェライト)ヘッドを始め、当時としてはとても魅力的な性能で、大人気になったレコーダーだった。ただ重量は5キロを超え、当時の生録は体力との勝負もあったと思っている。
「SONY TAPECORDER TC-2850SD (カセットデンスケ)」
発売時期:1973年
1973年に起きた主な出来事
- 「オセロ」が日本で発売
- 山口百恵が「としごろ」で歌手デビュー
- テレビアニメ「エースをねらえ!」毎日放送/NETテレビ系で放送開始