SOLIDWORKS WORLD 2016レポート
才能を持った頭脳が集結する、ソーシャルエンジニアリングこそがファブラボの秘密——“ファブラボの父”ガーシェンフェルド氏インタビュー
アフリカのファブラボも、東京と同じ使われ方
——先進国だけでなく発展途上国でもファブラボの設置が進んでいます。
「発展途上国にも多くのファブラボがあります。実は日本からファブラボを通じてルワンダを支援するというプロジェクトも生まれています。途上国だからといって特殊なことはなく、他の国々と非常に似ています。先進国には先進国なりのファブラボの使い方があり、アフリカなどではまさに発展のためのファブラボの使い方がある、と思っていたのですがそれは間違いでした。発展途上国でも、東京と同じようにビジネスや教育や遊びのためにファブラボが利用されていて、まったく変わりません。
——民間企業などがある程度収益を意識してファブ施設を運営するケースが出てきています。本家のファブラボのモデルは、社会や産業においてどのような役割を担うことを望んでいますか。
「なんだかコンピュータの役割とは? と尋ねられているように思えますね……。大手企業、例えばトヨタやエアバスは、デジタルファブリケーションがいまのものづくりのやり方をどのように変革するかを慎重に吟味し、非常に長期的な展望を持ってどのような変革が起こるのか見据えた上で進めます。大企業は、それに基づいて自らを作り直すことができると思います。一方で、小規模なベンチャー/スタートアップはテクノロジーを非常に貪欲に取り込んでいきます。問題は中堅どころの企業ではないかと思います。単に新しいマシンを使って今までやってきたことをやろうと考えるのが中堅企業の特徴だと考えていますが、そうであれば生き残れないのではないでしょうか。
ファブラボではものづくりができます。しかし、ファブラボの最もよい成果物は“もの”ではありません。Googleが検索自体を売り物にせず、検索によって得られるメリットから収益を得ているように、ファブラボにおける面白いビジネスモデルは、ものを作って売ることではなく、ものを作ることによって得られるメリット、あるいはものづくりそのもののメリットを収益源とするものです」