SOLIDWORKS WORLD 2016レポート
才能を持った頭脳が集結する、ソーシャルエンジニアリングこそがファブラボの秘密——“ファブラボの父”ガーシェンフェルド氏インタビュー
ファブラボはクリエイティブな才能にチャンスを与える
——The Center for Bits and Atomsにおいて注目している分野はなんでしょうか。
「“第三のデジタル革命”です。第一のデジタル革命は通信です。これは単に0と1に置き換えたという話ではなく、誤り訂正が可能になって信頼性の低いシステムを使って高い信頼性の通信ができるようになったことを示します。第二のデジタル革命は、コンピューティングです。これも信頼性の低いデバイスで高い信頼性の計算ができることを示したものです。The Center for Bits and Atomsでは、細胞を作ったり、ICを作ったり、宇宙船を作るプロジェクトがあるのですが、一歩引いて全体像を眺めたときこれが第三のデジタル革命ではないかと見えてきました。材料の構造の中にあるエラーを修正できるというものです。これが何を意味するかといえば、だれもが思うようにものを作れるということです。
日本においてこれは特に面白いことになると思っています。日本のあちこちにファブラボが広がっていますが、例えば若いクリエイティブなアイデア一杯の人にとって、会社に行くたびに何をすべきか指示されるというのはとてもフラストレーションがたまる経験なのではないでしょうか。誰でも何でも作ることができるようになれば、人の言うことを聞かなくても自分で作ってしまえばよく、おそらくそれによってまったく新しい経済の回り方が生まれてくるのではないかと思います。
世界中でファブラボが生み出しているチャンスというのは、そういったブレインパワーの利活用です。テクニカルな意味でのエンジニアリングではなく、ソーシャルなエンジニアリングがファブラボの秘密です。さまざまなツールを置くことで、発明の才能を持った頭脳がファブラボに集結するのです」