ゲストで登場したArduinoの開発者デイビッド・クァティレス氏にもインタビュー
真夏のお台場を熱くするMakerの祭典Maker Faire Tokyo 2016 レポート
Arduinoの開発者に聞く。Arduinoが開いたMaker 文化とSTEM教育
Maker Faireを訪れる家族の目的は、楽しむことにあるだろう。同時に教育という目的もあるはずだ。IoT、プログラミング、フィジカルコンピューティングといったテクノロジーに子どものときから触れさせたい、と思うのは自然な親心。今回、基調講演者として、またデイリーポータルZが主催するヘボコンW杯の特別審査員としてデイビッド・クァティレス氏が来日。氏はArduinoの開発者のひとりであり、またテクノロジー教育の専門家でもある。話を聞いた。
日本はロボティクスに先進性がある
——Maker Faire Tokyo 2016はどんな印象だったでしょうか?
デイビッド・クァティレス氏(以下デイビッド):サンフランシスコのMaker Faireのような大規模で、大勢の人が集まるイベントを想像していました。中国や韓国、台湾、シンガポールといったアジアの人もたくさん参加するような。(来てみると)意外に日本人による日本人のためのイベントという印象ですね。その分、Makerといってもかなりの技術を持った人たちが集い、作品も高度なものが多いのに驚かされました。特にロボティクス分野は、素晴らしい作品が集まっていると感じましたね。日本はヨーロッパに比べても、この分野には長い歴史があり、先進性があると思います。
デイビッドさんが目指すSTEM教育とは?
——Maker Faireでも教育分野におけるSTEM教育には関心が集まっています。デイビッドさんが考えるSTEM教育とはどんなものですか?
デイビッド:同じ場所で生徒が一斉に同じものを学ぶといった従来の学校教育とは異なり、もっと実践的で、横断的な授業運営が必要になると思います。我々がイメージするのは、学年も性別も地域も異なる生徒が、ひとつのプロジェクトに集い、何かを作り上げるタイプのものです。また、集まった時点では、個々人の教育の度合いに差があっていいと思っています。例えば、そのプロジェクトのために「数学の知識が必要なのに自分が足りない」という生徒がいれば、数学の授業をより多く選択して学ぶ。あるいは、プロジェクトを進める過程でプログラミングに興味を持ち、「もっと学びたい」と思う生徒がいるなら、プログラミングの授業により多くの時間を割く。生徒が柔軟にカリキュラムを選べて、いろいろな先生から教えてもらえる。そういった教育システムです。
——最大のポイントはどこになるのでしょう?
デイビッド:多様性です。特に、地域が異なる、環境が違う、というところは大切です。例えば、都会の生徒と地方の生徒ではテクノロジーに対するとらえ方が異なります。都会の子は、常に新しいものに触れられるので、発想がユニーク。それに対して地方の子は、伝統の中で暮らしているので、テクノロジーを生活に則したものに生かそうとする。両者が同じプロジェクトでそのアイデアを出し合えば、新しいものが生まれる。また、そういう体験をさせることができる教師が増えていくといいと思います。