fabなび
fabスペースhana_re(長野県岡谷市)
日本全国のfabスペースを紹介するfabなび。今回紹介するのは諏訪湖の北側、長野県岡谷市にある「fabスペースhana_re」だ。
hana_reは浜元氣さん泰子さん夫妻と中澤美咲さんの3人で運営している。スペース設立のきっかけは2014年にさかのぼる。元氣さんが所属している、父親の建築設計事務所で模型や試作品を作るためにレーザーカッターを導入した。その性能に感銘を受けた元氣さんは「何かを作りたい人と一緒に機械を使えないか」と思い、全国にあるfabスペースの存在を知るようになった。
その後、廃業する内科クリニックの後をスペース運営の場として使えることになり、オープンに向けた準備が進んでいく。3Dプリンターや刺繍ミシンは開店に合わせて調達したものだが、元氣さんが保有していた木工機材や、元氣さんの祖母が仕事で使っていた業務用ミシンはそのまま活用している。2017年4月のオープン前には、岡谷市に本社のあるCNCメーカーであるオリジナルマインドから機材を提供されたという。
岡谷市はかつて製糸業で栄えた歴史を持つ。シルクが化学繊維に代替されてからは精密機械工業が盛んとなり、ものづくりの町としての顔を持つため、元氣さんは「ものづくりがしたくて地域でうずうずしている人」が来ることを見込んでいた。
hana_reを訪れるユーザーが作るものは、業務用ロボットの試作品や自作スピーカーのパーツ、友人に贈るアクセサリーなど多種多様。主婦や家族連れもよく訪れるなど、幅広い層のユーザーに利用されている。
一番人気の機材はレーザーカッターで、自分の顔をスタンプにするワークショップが好評だという。外部のイベントに、レザーに文字を打刻して仕上げるストラップなどを出展し、hana_reの認知度アップに取り組んできた。
長野でものづくりに取り組む作家を講師に招いたイベントも多く、彫金やレザークラフト、ぬいぐるみ製作のワークショップなどが行われてきた。地域の作り手同士の仲が良いため、友達の友達のような関係でhana_reとのつながりが増えていくという。
「CRAFTMAN’S DAY」には作家が丸一日hana_reに滞在して、日頃のちょっとした疑問や日用品の手入れの方法などを直接聞くことができる。単発のワークショップとは異なる、時間に縛られない作家との関係を築こうとする取り組みは、「子どもたちをクラフトマンにしていきたい」と語る中澤さんの思いが詰まったものだ。
ものづくり以外のイベントやワークショップの多さもhana_reの特徴だ。「ものづくりの先に暮らしがある」という考えから、「衣食住」をテーマに掲げ、地域の農家や商店と協力して多様なコンテンツを展開している。
「くらしの素」というワークショップシリーズでは、プランター製作や和菓子作りなどを通じて野菜の育ち方や食材の情報など、普段の生活では学べない知識を得られる。一度きりの体験で終わるのではなく、参加した後にも実践できるような学びを得られることがシリーズの共通点だ。
「Sunday Market」には古道具屋やパン屋など、バラエティ豊かな出展者が集まる。元氣さんや中澤さんが出展者の組み合わせを考えて声がけすることで、単にものが販売されるだけではなく、新しい出会いやコラボレーションが生まれる場にもなっている。
「農家さんやパン屋さんは食べ物を、ヨガの先生なら生徒の健康な身体を作っているように、僕たちは身の回りのものを作っています。『つくる』ことへのさまざまなアプローチを通じて知らないことや興味のあることを学び、幅広い価値観をみんなで共有したいんです」
そう語る元氣さんが生み出そうとしているのは、作ることが生活を彩り、暮らしを楽しむ先でまた新しいもの・ことを作るという循環。hana_reはものづくりスペースであると同時に、暮らしを作る場所としての魅力を併せ持っていた。
概要
所在地 | 〒394-0005 長野県岡谷市山下町2-1-32 |
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営業時間 | 水木金土10:00〜17:00(休業日:日月火) |
URL | https://www.fab-hanare.com/ |
料金 | 会員登録:500円 時間利用:1時間ごとに500円、6時間以上は3000円 機材利用 ・レーザーカッター:500円(30分) ・デジタル刺しゅう機:500円(30分) ・CNC:500円(1時間) ・3Dプリンター(PLA):500円(30分) ・木加工室:500円(30分~) その他機材占有オプションなどもあり。詳細はHP参照のこと。 |