fabなび
LIFULL Fab(東京都千代田区)
日本全国のfabスペースを紹介するfabなび。今回紹介するのは東京都千代田区、半蔵門駅から徒歩数分の場所にある「LIFULL Fab(ライフル・ファブ)」だ。同じビルの、不動産情報サービス事業などを手掛ける企業、LIFULLが運営している。
LIFULL本社が現在の場所に移転する際、社内だけでなく社外の人とのコミュニケーションも活性化することをコンセプトとして、築約50年のビルをリノベーションした。地域住民も利用できるカフェや起業家の集うインキュベーションオフィスに次いで、ビルの駐車場を改装したものづくりスペースとして2018年2月にLIFULL Fabがオープンした。
マネージャーの小田陽子さんは、DIYや暮らしにフォーカスしたWebマガジン「LIFULL HOME’S DIY Mag」の編集長も務めている。ものづくりを通じた家具や住まいへの愛着が起点となったメディアの運営を続けるなかで、デジタルファブリケーションという新しいツールに満ちた工房の運営にも挑戦することになった。親しい専門家の力も借りながら、スタッフが一丸となって機材や運営のノウハウを積み重ねている最中だ。
LIFULL Fabの大きな特徴の一つは、木工用の大型CNCミリングマシン「ShopBot」を利用できること。4×8板サイズの大きな素材まで切削できるため、家具や建築スケールの加工ニーズに応えることができ、建築学科の学生が小屋を作ったり、個人でトレーラーの内装をしつらえたりといった利用が行われてきた。
LIFULLの出資先でもある建築系ベンチャー企業VUILDとのコラボレーションも盛んだ。VUILDの開発したオーダーメイド設計サービス「EMARF」を用いた家具製作や、3次元切削でデスクオーガナイザーを作るワークショップが実施されてきた。
生活に直結したものを作るワークショップの内容は、「『機械を使いに来てください』というアピールは初心者にとってハードルが高い。まずは何ができるか、どういう生活ができるかをイメージしてもらい、その手段としてFabがあるという順で伝えたい」と語る小田さんの考えが表れたものだと言えるだろう。
開設時には企業のプロダクト製作や試作のニーズを見込んでいたが、現在のメインユーザーは学校で機材が使えない大学生だという。より多くの人に訪れてもらうため、主婦層の利用を見越して刺しゅうミシンなどの機材も取りそろえ、近隣の人々に認知してもらうためのイベントも積極的に開催している。
2019年7月に開催した「LUFULL Fab夏祭り」には、七夕飾りや時計を作るワークショップを中心に、キッチンカーや輪投げの屋台が並び、家族連れなど100名以上の人が足を運んだ。
DIY Magの企画としてLIFULL Fabで開催した「Make a good Market」は、アロマやデニム、アクセサリーなど幅広い分野でものづくりにこだわりを持つ作家に声をかけて実施したイベント。作り手と直接コミュニケーションが取れる場として盛況となり、今後も定期的な開催を検討しているという。
LIFULL FabはLIFULL社内での認知度も高い。特定の期間、通常業務以外で自由に学習や開発ができる制度を使い、エンジニアやデザイナーがものづくりを学びに来るという。社内から持ち込まれるものづくりの相談に積極的に応えてきたこともあり、今ではLIFULL Fab専用の社内チャットグループができ、「芸達者な」社員が特技を生かして電子工作のワークショップを実施したこともある。
ものづくりを軸として、社内外の多くの人が利用する場になったLIFULL Fab。「あなたらしい暮らしをデザインしよう」というコンセプトに基づき、豊かなライフスタイルを形成するための場として機能しているが、今後はカフェやインキュベーションオフィスとの連携も強め、コミュニティとしての役割も持つ空間を目指しているという。
田川さん「ユーザーにも社員にも面白い人がたくさんいます。そんな人たちがいつも集まるコミュニティスペースとして、単なるものづくりにとどまるのではなく、ジャンルを超えて面白いことが生まれる場所にしていきたいです」
概要
所在地 | 〒102-0083 東京都千代田区麹町1-4-4 1F |
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営業時間 | 平日11:00~19:00(定休日:土日祝日/年末年始) |
URL | https://fab.lifull.com/ |
料金 | DIY Plan:1万円/月 ShopBot Plan:2万円/月 Spot Plan:800円/時間+機材利用料 ・レーザーカッター:900円(30分) ・ShopBot:2500円(30分) その他、撮影やスペースレンタルプランもあり。詳細はWebサイトを参照。 |