新しいものづくりがわかるメディア

RSS


特別寄稿:フロンティアメイカーアメリカファブ施設紀行

ものづくりが好きでFabLifeに憧れていた僕がアメリカに行くまで

海外への憧れとチャンス

僕は1年生のころから、海外に行きたいという思いがありました。高校生の時、高橋歩という人の旅に関する本を読んでから、旅人というものに漠然とした憧れを抱き、自分が自由に生きるために、海外へ足を運んでみたいと思っていたのです。

受験英語が得意であったのと、洋楽が好きだったことから、独学で英会話を勉強して順調に身に付け、1年生の終わりには、留学生とほとんど支障無く意思疎通ができるようになりました。

英語が得意で、ずっと海外に憧れていたにも関わらず、国内で英会話を磨いた後も、一度も海外に行ったことはありませんでした。自分なりのけじめとして、海外にかかる費用は親に頼るべきでないと思っていたからです。そのため、海外の留学プログラムなどにも一度も参加しませんでした。けれどどんどん時間は過ぎていきます。また、周りの優秀な友達は次々と海外へ足を運んで行きます。そんな中、学生のうちに海外に出たいと思った僕は2年生の夏、どんな手を使ってでも来春にはアメリカに行こう。そう決意して海外へ行くチャンスを血眼で探していました。

GUGENハッカソンに参加した時。 GUGENハッカソンに参加した時。

そういった海外への憧れ、makeの世界に対する興味から、このフロンティアメイカーズ育成事業の存在を知ったときは、“自分は誰よりもこの事業に適正がある”と、過剰なほどに自信を持っていました。実際のところは、自分なんかより考えも知識も成熟した社会人の方は大勢いて、審査員の方が、僕に可能性を感じて採択していただいたという感じでした。ですが、この事業を知ったときの衝撃、海外へものづくりに行きたいという飢餓感は誰よりもあったと思います。

なので、この事業が通ったときの喜びは計り知れないほどでした。また、自分が憧れる人がプロジェクトマネージャーとなって支えてくれるということで、これからとんでもないことになりそうだと、毎日ワクワクしていました。僕は旅に出る前から、この旅は必ず、自分の中にあるsenseを大きく変えてくれると確信していました。 

派遣決定から出航まで——アメリカに行く前に決めたルール

派遣が決まってから出国までの間は、ただただとにかく忙しかったです。何しろ外国に行った経験がなかったので、スーツケースの購入から始まりました。また、航空券や宿泊先も自分で決定する必要があったため、期末テストに追われながら合間の時間を使って、旅行代理店と何度もやり取りをしました。

そんな状況だったせいで、出国前にプロトタイプを作成することはできませんでしたが、自分の描いていたアンプに近いものを「instructables」で探し、アメリカに着いてすぐに手を付けられそうなものをたくさんリストアップしました。

また心構えとして、高すぎる目標は掲げないように、とにかく1日1日を、満足した気持ちで終えられるようにしようと思っていました。というのは、僕は1人でいるとき、必要以上に自分を拘束しがちで、能力以上のことを自分に要求することが多かったからです。派遣中、誰にも拘束されず、何かをこなす義務も与えられておらず、ただゴールだけが用意されている、そんな状況の中、自分に能力以上のことを求めていたら確実にノイローゼになっていたでしょう。結果として派遣されていた30日間は、ほとんどの時間をものづくりに費やしたにもかかわらず、手放しに素晴らしい日々であったと言えるものになったのですが、それは自分を必要以上に追い込み過ぎずに最後まで頑張り続けられたからだと思っています。 

フロンティアメイカーズ育成事業のキックオフミーティングにて。 フロンティアメイカーズ育成事業のキックオフミーティングにて。

出国の準備をしていくうちに、自分の中で、セルフマネジメントをする力が前よりずっとついたと感じました。多くの課題を用意されて必死に一つずつ対処するしんどさと違い、今回の事業は、成果は求められるものの、具体的に派遣期間中どう動けという指示がありません。

これは当然のことではありますが、大学2年生の自分としては未踏の地に降り立った感覚でした。自分を追い込み過ぎないようにはしたものの、3日で何かを作り上げ続けるという気持ちは脅迫概念に近いくらいの形で自分に押し付け、遂行しました。この考えは極端であったかもしれませんが、こういった心構えを自分で用意していなければ、今回は何も持ち帰れなかったように思えます。

この力は、他の派遣者にはもともと備わっているのだと思いますが、自分としてはこの派遣で、大学のうちに身につけられたことにとても価値を感じます。まさに、仕事をするうえで大事な“成果を残しながら自ら勉強しつづける”力なのかなと思います。

自己管理する力が身に付けば身に付くほど、大学に自分の生活ペースの世話をしてもらう必要はなく、大学が本当の意味での、ただの学ぶための場所となり、大学以外にも学ぶ場所を探しにいけるようになると思います。

第2回に続きます)

おすすめ記事

 

コメント

ニュース

編集部のおすすめ

連載・シリーズ

注目のキーワード

もっと見る