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世界のスタートアップとエコシステム by HWTrek

AIを生かし自動運転やロボティクスで盛り上がる欧米のスタートアップとエコシステム

世界中のスタートアップやクリエーターと製造業者をマッチングするサービスをオンラインで展開するHWTrekが語る、ものづくりの最前線のレポート。今回はプロジェクト開発を担当するMandy Chung氏とそのマネージャーのJack Shen氏に2016年の欧米における事例と、アメリカのハードウェア・スタートアップ向けのエコシステムについて伺った。(取材・文:越智岳人)

2016年の欧米におけるスタートアップのトピックは自動車とロボティクスでした。
自動車では無人運転とコネクテッドカー関連、ロボティクスではコミュニケーションロボット関連のスタートアップが数多く起業した1年でした。このトレンドは2017年も続いていくと思われます。

背景にあるのはAI開発の加速と、インフラとしてのIoTの充実です。クラウドなどインターネット関連インフラが進化を遂げたことで、ディープラーニングやビッグデータ解析が発展しています。それに伴い、音声認識や顔認識、意思決定に人工知能技術を活用する流れも生まれていて、Googleをはじめ、Facebookや、Microsoft、NVIDIA、IBMといった大手IT企業も人工知能の開発に注力しています。

人工知能を応用したHWTrek内のプロジェクトの例

Angeeは家庭用のホームセキュリティデバイスです。顔認識機能を人工知能で自動化することにより、初期設定の手間を省き、動画ストリーミングで自宅の状況を随時に確認できます。

UnaliWearはお年寄り向けスマートウォッチです。装着したお年寄りの行動パターンを記録し、転倒などの異常パターンが検知されるとアラートで注意喚起を行います。人工知能を用いたパターン認識を活用しています。

保険会社と連携したコネクテッドカーデバイス

コネクテッドカーの事例を挙げると、米国のAUTOMATICは自動車向けのデバイスを開発し、自動車の走行データやトラブル時の状況を家族や関連する企業と共有するサービスを提供しています。

自動車に搭載されているECU(Electronic Control Unit)に組み込まれた自己診断機能から情報を取得しクラウドに接続することで、平常時は自動車の走行データの記録や近くにある駐車場の検索を行い、異常時には家族や保険会社への故障状況の通知や自動車部品を扱う小売店に故障した部品の在庫をリクエストすることができます。

AUTOMATICのWeb上でのダッシュボード画面(デモサイトより) AUTOMATICのWeb上でのダッシュボード画面(デモサイトより)

既に2300万ドルの資金調達を済ませ、保険会社と提携してサービスを展開するなど、今注目のスタートアップの1社です。

生活を豊かにするロボットたち

ニューヨークのスタートアップが開発しているpilloは薬を飲む時間を管理するロボットです。顔認証で登録したユーザーごとに必要な薬を必要なタイミングで配布する機能や、会話機能を使ったカロリー計算や子どもの見守りなどの機能を備えています。

2016年8月にindiegogoで目標額を超える資金調達に成功し、現在はHWTrekを通じて量産パートナーの選定中です。

またロシアでは24時間稼働する雪かき用ロボット「OMI Plow」というプロジェクトを支援しています。自宅のドアからマイカーまでの道など、あらかじめ登録したルートを除雪するロボットで、ノートPCサイズとサイズは小型ですが、生活に最低限必要なルートを除雪できることを目指しています。

これらのデバイスを開発する上での共通課題として、画像認識や音声認識の開発の難しさが挙げられます。それぞれ3点の課題を挙げると

画像認識

  • 物体の有無——背景から物体の有無を認識させなければならない
  • 物体の特徴を特定する——顔認証の場合、一度撮影してから画像を拡大し必要な部分をプログラム上で特定するが、その際に高解像度の画像処理能力が必要となる
  • データベース構築——識別精度を高めるためのデータベース開発が必要

音声認識

  • 必要な音だけを抽出する技術——話し手がデバイスに音声で指示する場合、周辺の環境音などをフィルタリングし、指示語だけを抽出しなければならない。
  • 類似単語の振り分け——foolとfullといった似たような発音の単語は機械的に識別することが難しく、発話した内容のコンテクストをデータベースと照合して判断する必要がある
  • イントネーション・訛り——英語は世界中で広く使われているが、各地域のイントネーションの違いや訛りを網羅したデータベースの構築は非常に困難

アメリカのスタートアップが量産パートナーを見つける方法

こういった欧米のスタートアップがどのように量産をしているか、ヨーロッパは国ごとの事情もあるので、今回は米国に絞ってお話します。

試作まではローカルで行い、量産は中国に出すのは万国共通ですが、アメリカの場合、中国の試作/量産工場やEMSのアメリカ拠点か、中国に人脈があり製造業のコンサルティングを行っているエージェントやオンライン・プラットフォームに依頼するパターンがほとんどです。

それぞれのメリット/デメリット(取材を基に編集部が作成) それぞれのメリット/デメリット(取材を基に編集部が作成)

アクセラレーターが充実しているのもアメリカの特徴です。主なものとしてはY combinatorTechStarsDreamIt VenturesAngelPad500 startupsTechNexusHAXHighway1などがあります。それぞれ独自の専門分野を持つというよりは、開発からマーケティングまで幅広くカバーしたワンストップサポートを強調しているところがほとんどです。応募する際には、プロジェクトの開発段階や卒業後に受けられるサポート(サプライチェーン/リソースの有無やベンチャーキャピタルとのつながりなど)から自分に合ったものを選ぶのが基本ですが、参加すると資金が得られることも多いので、複数のプログラムに同時に応募するのが一般的です。

応募にあたってはアクセラレーターやインキュベーションプログラムの検索サービスで探します。各プログラムの過去の卒業生や投資運用額、メンター数や得意とする領域が掲載されているほか、直近のイベントなども一覧になっています。アメリカ国外のプログラムも掲載されています。こうしたプラットフォームが充実しているのも、スタートアップの多いアメリカならではの事ですね。

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