世界のスタートアップとエコシステム by HWTrek
世界最先端の農業分野テクノロジーの今と、アフリカのスタートアップ
新興国や発展途上国の所得増加や、それによる食生活の変化により世界の農作物市場は年7~8%規模で成長している。人口増加率が5大陸中トップのアフリカだけでも2011年から2015年の間に37兆円から57兆円に規模を伸ばしているというデータもある※。
しかし、雨が少ない自然環境やエネルギーインフラの不足から、アフリカでは人口増加に耐えられるだけの農作物が生産できず、依然として深刻な食糧不足から脱却できていない。そして、未来を担う人材の教育も重要な課題だ。
そこで今回は農業分野のIoTハードウェアの動向や、アフリカのスタートアップとエコシステムについてHWTrekのJack Shen氏に伺った。
アフリカ大陸の人口は約12億人で、中国の13億人に次ぐ巨大な規模とポテンシャルを持っています。
目下の課題は食糧不足です。2050年には人口が倍になるという予測もあり、いかに食料を確保するかが重要です。世界で農地に活用できる見込みのある土地の60%がアフリカ大陸に集中しているにも関わらず、食料調達の大半を輸入に依存しています。
最たる要因は現時点で「農地が持つ可能性の4割程度の能力しか引き出せていない」ともいわれる農業生産性の低さですが、ここに経済発展の可能性があるといわれています※1。
※1
https://www.howwemadeitinafrica.com/forget-uncultivated-land-africa-must-produce-more-on-existing-farms/
農業とIoTの今
ここで、世界の農業関連のハードウェアテクノロジーについておさらいしたいと思います。
毎年2月にWorld Ag Expoという世界最大級の農業分野に特化した展示会がアメリカで開催されています。
2017年の展示について応用技術ごとに紹介します。
自動運転技術
日本でもコマツが自動運転のダンプカーを開発していますが、大規模農業において無人トラクターは重要な要素となりつつあります。
農業機械メーカーであるニューホランドは自動運転トラクターを出展しています。無人制御でGPS機能を搭載することで運転ルートの設定精度が大幅に上がるそうです。
太陽光発電
大面積農地をより効率的に耕作するには、土壌センサなどを活用した自動潅水システムの導入が欠かせませんが、土地面積が広い分だけ、システムの電源供給が課題となっています。
ソリューション事業者に聞いた話では、太陽光発電を利用した農業システムの利用がアメリカで広がりつつあるとのことです。
無線通信技術
World Ag Expoでは農作物や土壌状態、牛群管理など用の広範囲モニタリングシステムの展示が数多く見受けられました。
Bluetoothの通信距離がせいぜい半径100m程度に対して、XBee RF モジュールを活用した場合は半径5kmをカバーできるとあって注目を集めています。
ドローン
農業用途としては、害虫駆除のための農薬散布や作物モニタリング、農地マッピングなどがソリューションとして展示されていました。
農業分野のハードウェアテクノロジーはアメリカがリードしていますが、無人ドローンの農業活用を進める中国や、ドローンに加え人工衛星による地形マッピング技術を駆使して、農地の遠隔監視技術を開発するイスラエルなど、各国がしのぎを削る状況です。
世界人口が増えるにつれ、農作物生産性を向上させるのにIoT技術を応用することが脚光を浴びていますが、市場においてはマーケットシェアを独占する企業がまだ現れていないのが現状です。スタートアップやハードウェアベンチャーにとっては機先を制する絶好の分野だと思いますので、これから新しいソリューションでガンガン攻めてほしいものです。