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世界のスタートアップとエコシステム by HWTrek

大企業には起こせない領域のイノベーションを目指す医療系IoTスタートアップとベンチャー

社会課題をテクノロジーで解決するという面で、ヘルスケア・医療関連のハードウェア開発は多くの人に期待される分野の一つだろう。それゆえ、安全面の保証や効果検証は慎重を要す。また各国での販売ライセンスの取得など、スタートアップやベンチャーにとって高いハードルも存在する。

しかし、大手企業が入り込めない領域が確実にあり、スタートアップにも勝算があると、HWTrekで医療分野を担当するJulie Chou氏は語る。今回はヘルスケア・医療分野におけるIoTスタートアップやベンチャーの動向や事例をJulie氏に伺った。

HWTrekのJulie Chou氏。プロジェクトマネージャーとしてウェアラブルデバイスやスマートホーム、ヘルスケア、産業機器分野のプロジェクトに対し、サプライチェーンの紹介やコンサルティングなどを担当している。 HWTrekのJulie Chou氏。プロジェクトマネージャーとしてウェアラブルデバイスやスマートホーム、ヘルスケア、産業機器分野のプロジェクトに対し、サプライチェーンの紹介やコンサルティングなどを担当している。

医療機器業界の全世界での市場規模は2020年には1170億ドルに到達するというデータ(forbes調べ)があり、グローバルな大企業からベンチャー、スタートアップに至るまで、世界各国で研究開発が進んでいます。
IoTを活用したスタートアップやベンチャーが登場するようになったここ数年は、HWTrekの中でも案件数が急増している領域になっています。

なぜIoT以降MedTech(医療分野のテクノロジー)のベンチャーが増えたのか——その理由にはセンサーによるリアルタイムかつシームレスなデータ収集が低コストで可能になったことが挙げられます。
患者の心拍数や血糖値、体温などのデータをセンサーで収集し、危険な兆候が出た場合は即時に医師や看護師にアラートを発信するデバイスのニーズは非常に高く、AIやディープラーニングを活用した予測システムの開発にも投資が集まっています。

また、そういったデータを常時収集することで、診断時間の削減や遠隔医療への応用など病院のコスト削減が見込めます。
さらには点滴の残量監視、ベッドの遠隔操作、リハビリテーションの補助など医療サービスの質向上にも寄与するなど、直接的な医療行為以外の領域にも貢献していくでしょう。

医療分野で最も大きな市場はアメリカです。アメリカ以外のスタートアップも含め、いかにアメリカ市場で結果を残せるかがスタートアップにとって重要なポイントになります。

医療機器の販売に必要なFDAの承認

そのアメリカで医療機器を販売する場合には米国食品医薬品局(FDA)の承認が必要です。
機器が提供するサービスの内容や使用者に対するリスクに応じて、クラス1から3までのランクに分かれています。
スタートアップが開発する医療機器の大半は中間のクラス2で、「fitbit」のような心拍数を計測するフィットネス用のウェアラブルデバイスもクラス2に該当します。最も高いクラス3になると臨床データや動物実験の結果などの提出も必要となり、スタートアップにとっては自社だけ進めるのは難しいので、このクラスのハードウェア開発は大企業や、この業界に特化した中小企業がメインです。

しかし、大企業内での製品開発には多額の研究開発予算が投じられていることもあり、ある程度大きな売り上げが見込めるものでないと製品化できません。
裏を返せば大企業が入り込めない小さな市場や、臨床実験のデータ提出を必要としない個人用の健康モニタリングデバイスに、スタートアップが切り込めるチャンスがあります。

実際にMedTech分野のスタートアップは医療業界出身者が多く、自分の職場では開発できないニッチな課題解決から機業するケースが少なくありません。

※編集部注
FDAの承認制度についてはJETROのWebサイトにも詳細が掲載されていますので、ご参照ください。
https://www.jetro.go.jp/world/qa/04A-041137.html

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