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ムーアの法則  いよいよ半導体の進化に限界?(下)

ムーアの法則が長年にわたって継続している背景には、微細化の技術が着実に進展してきたことがあります。ところが1990年代にはいると、微細化の技術は依然として進展を続けているものの、一方で微細化の限界論が業界で浮上するようになります。それでも、そのたびに半導体技術者は、画期的な技術を開発し、限界を乗り越えてきました。しかし、その「壁」は着実に高くなっています。

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微細化の“壁”となっている技術とは?

図1 実験用のEB露光装置(出典:日経エレクトロニクス) 図1 実験用のEB露光装置(出典:日経エレクトロニクス)

微細化を進めるうえで「壁」となっている技術の一つが、微細なパターンをウエーハ上の形成する「フォトリソグラフィ」です。これは写真現像の技術を応用した微細加工技術です。ウエーハ上にレジストと呼ばれる感光性材料を薄く塗布。この上にフォトマスクと呼ばれる「原板」を介して光を照射することで、原板に描いた回路パターンをウエーハ表面に転写する技術です。

ところが、最近ではパターンの線幅が光の波長よりも短くなってきました。そうなると、線がぼやけてパターンがきれいに転写できなくなります。こうした問題を解決するために、光を制御する技術や、波長がさらに短いEUV(Extreme ultraviolet:極端紫外線)やEB(電子線)を使ったリソグラフィなどの次世代の加工技術の開発が、現在進んでいます(図1)。

回路パターンの幅が90nmを切った当たりから、LSIに集積するトランジスタの構造を微細化しても、微細化にともなう副作用によって従来ほどパフォーマンスが向上しなくなってきたという問題も出てきました。この問題を乗り越えて、さらに継続してトランジスタの性能を高めるために、半導体メーカーはLSIの材料や構造にまで踏み込んだ新しい技術開発に取り組んでいます。

例えば、微細化の技術で、いま世界をリードしている米Intel社や台湾Taiwan Semiconductor Manufacturing Co., Ltd(TSMC)は、2015年ころから回路パターンの線幅が20nm以下の製品を量産する方針を打ち出しています。この製品には、従来の平面型のトランジスタに代わって、3次元構造を備えた立体型のトランジスタを導入する方針を明らかにしています(図2)。このほか、これまで半導体の材料はSi(シリコン)が主流でしたが、Ge(ゲルマニウム)や「Ⅲ-Ⅳ族半導体」と呼ばれる次世代材料に置き換えることで、微細化と同時にパフォーマンスの向上を図るための研究にも多くの半導体メーカーが取り組んでいます。すでに従来のムーアの法則でうたわれたペースを維持するのは難しくなっていますが、こうした新しい技術を駆使することによって微細化のトレンドは当面続く見込みです。 

図2 従来構造のトランジスタ(左)と立体構造のトランジスタ(右)(出典:日経マイクロデバイス) 図2 従来構造のトランジスタ(左)と立体構造のトランジスタ(右)(出典:日経マイクロデバイス)

事業的な限界も顕在化

技術的な問題だけでなく、事業的な観点から微細化の限界を懸念する向きもあります。具体的には、微細化とともに開発費や設備投資が急騰していることです。微細化が進むとともに増え続けている開発費は、いまや1社当たり1000億円を超えていると言われています。これほど巨額になると、1社でまかないきれなくなってきます。このため複数の企業が連携して次世代の技術開発に取り組む動きが近年進んでいます。

設備投資額は、回路パターンの線幅が1µmぐらいのときは100億円~500億円程度でした。ところが90nm以降では3000億円。この後になると6000億円は必要になると言われています。次世代のリソグラフィに必要なEUV露光装置の価格だけでも100億円はかかる見込みです。これほど規模の設備投資を1社で実施できる企業はなかなかありません。 

「More than Moore」を追求

長年継続したムーアの法則を追求する「More Moore」と呼ばれる動きが依然として進む一方で、ムーアの法則とは別のアプローチで半導体の進化を図る「More than Moore」と呼ばれる取り組みを始める動きも国内外で出てきました。具体的には、センサーやアクチュエータなど、これまで一体化することが難しかった異種デバイスを融合して新基軸のデバイスを実現するための技術が、More than Mooreと呼ばれる技術とされています。こうしたデバイスを実現するには、従来の半導体技術の延長だけでなく、まったく新しい材料や製造プロセスが必要になるでしょう。

例えば、ベルギーの国際的研究機関IMEC(Interuniversity Microelectronics Centre)は、半導体、製造装置、材料を手掛ける世界の大手メーカーとともに多数のプロジェクトを立ち上げ、半導体をめぐる最先端の研究をリードしています。ここで、すでにMore than Mooreと呼ばれる分野のテーマに関連するプロジェクトが数多く始まっており、その動向は、半導体の分野を中心に多くの技術者の注目を集めています。

40年以上にわたって半導体産業の発展をリードしてきたムーアの法則。その限界を懸念する機運が高まるにつれて、半導体業界では新しい取り組みが次々と始まっています。ここから大きな技術革新のキッカケが生まれるかもしれません。今後も半導体は注目すべき技術分野の一つと言えるでしょう。

 

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