忘年会対談:IAMAS 小林茂&スイッチサイエンス 金本茂
2015年のメイカームーブメントを総括——新しいフェーズが見えてきたこの1年
分裂したArduinoはどこへ向かっているのか?
——金本さんは、2015年気になるニュースはありましたか?
金本:やっぱりArduinoの分裂騒ぎですかね。昔から彼らと付き合いがある私たちには、残念な出来事です。当時はみんな仲が良かったのにね。権利関係をはっきりさせてこなかったことが原因のようです。オープンソースハードウェアとして、あれだけ有名で成功したと言われているArduinoでさえ、ビジネスとしてきちんと継続させることができずに大げんかを始めてしまいました。結果として、ユーザーはどれが本当のArduinoか分からず、迷惑を被っているわけです。ビジネスとして展開していくためには、オープンソースとはいえライセンスや利用規約をもっと明確にする段階に来たように思いますね。
小林:Arduinoも世の中に出て10年がたちました。結果として、いろいろ起きるのは避けられないかもしれません。
金本:普及したからこそ起きた問題だと思います。そうかといって、オープンソースハードウェアという考え方をとらずにスタートしていたら、おそらくうまくいかなかったと思います。
小林:分裂といってもあれぐらいで済んでいるから、まだいいのかなとも思いますね。なくなったわけではないので。希望的観測ですが、1~2年のうちには解決できるのではないかと思っています。
——これってArduinoだけでなく、オープンソースハードウェア、あるいはもっと広くメイカームーブメント全体で起こりうることだと思うのですが……。
金本:確かにそうですね。オープンソースハードウェアってどうしても権利関係があやふやになりやすい面がありますから。いろいろなプロジェクトでうまくいきだして、そのうちの半分の人たちがビジネス化しちゃったら、何が起こるのか、怖いですね。
ものを作って売る苦労
——他に、「2015年こんな仕掛けをしたら面白かった」みたいな話はありますか?
小林:2つあって、ひとつはクラウドファンディングが成功してもうすぐ出荷予定の「光枡」ですね。この取り組みは、プラットフォームを用意して、いろいろな人にそこに乗っかってもらったもので、ようやく第一弾を世の中に出せました。
やってみて改めて思うのは、モノを作って世に出すということの大変さですね。昔メーカーにいたときに感じたことを再確認しました。インターネットだから、デジタルファブリケーションだから、っていうだけでは解決しない部分がいろいろありました。
例えば、光枡のように全く新しい製品の場合、それがどんなもので、どんな体験ができるのかを多くの方に伝えることです。目標金額の50%までは、話題性だけで一気に行けたのですが、そこでぱたっと停まってしまった時期があったんです。その間にいろいろなイベントに参加させてもらって、「こういうものなんですよ」ってデモンストレーションしたり、開発のプロセスを紹介したりする中で共感して支援していただける方が出てきて、ラストスパートでなんとか目標金額を達成することができました。苦労しましたが、ネットだけでなく直接対話することの大切さを実感した機会でした。
もうひとつ、これと同時並行でやっていた初のイベントがありました。