忘年会対談:IAMAS 小林茂&スイッチサイエンス 金本茂
2015年のメイカームーブメントを総括——新しいフェーズが見えてきたこの1年
世にあるものはすべて作れる
——2016年はどんな年になりそうでしょうか?
小林:オープンソースハードウェアは確実に次のフェーズに向かうでしょうね。昔みたいにお金がたくさんあるわけではないので、ほしい商品があっても企業に発注できないなんていうとき、「この部分をオープンソースにしましょうよ」といって、自分で製作にトライしてみたら、誰かがそれを改良して作れてしまうということもあると思います。そんなオープンソースの使い方は増えてくるでしょう。前述の通り、同時にライセンスや権利関係の問題を解決しておく必要はありますが。
それと「IoT」の頭についている「I」つまり「インターネット」という言葉の重要性が増してくると思います。ネットとものが結びついて現実の生活を動かす装置が作れれば、住居はどこでもいいわけですから。電気と物流の問題がクリアできれば、限界集落であろうが、見知らぬ国であろうがまったく関係ないです。
金本:テクノロジーが使いやすくなり、Makersのスキルもあがって、世の中にあるものはすべて自分で作れるんだという感覚をみんなが持つような年になるといいですね。実際に作れる、作れないはあったとしても。例えばロボットです。みんながアトムを作りたがるけど、現実には無理。でも「Pepper」や「ルンバ」みたいなものが出てくる。大事な感覚だと思います。
小林:その流れはさらに加速していくんじゃないですか。Maker Faireとか行って、変なものを見て、「え、こんなものが自分で作れるんだ」って刺激を受ける。「思う」のと「作る」のは別問題だし、みんながみんな作れる必要はないんですけど。ブラックボックスも元は人が作っている、という感覚を持つことはメイカームーブメントの進歩に確実につながっていきますね。
——2016年に向けて課題は何かありますか? だんだんメイカームーブメントが進化する中で、例えば大手企業が主催する日本のハッカソンなどを見ていると、出来たものと社会が期待するものとの間で温度差があるようにも感じるのですが……。
小林:確かに指摘としては正しいとは思います。ただ、まずは「いろいろな課題がある」ということに気づくのが大事かなと。ハッカソンなどもそういう機会にはなります。気づかないと、小さな、どうでもいいところに目が向いてしまう。
金本:ハッカソンを設定する側の課題でもありますね。テーマをしっかり設定して、できたものを確実に世の中に反映させていく、参加した人にも還元していく、そういう意識がなければいけないのかなと。
——課題はあるものの、2016年もメイカームーブメントから目が離せないですね。本日はありがとうございました。