とびこめ! 工場見学
皮革加工の未来を見据えて——篠原刃型(東京都足立区)
世の中のものづくりを支える工場、そしてそこで培われている技術にフォーカスを当てる「とびこめ!工場見学」。第3回目は、皮革加工を専門とする篠原刃型を訪れた。東京都足立区にある工場では、伝統的な金属の抜き型、そしてCAD/CAMに対応した自動裁断機という2つのツールで皮革の加工が行われている。
まずは伝統的な金属の型を用いた抜き加工を見ていこう。篠原刃型では、スウェーデン鋼という軽量の金属を使い、一つ一つ型を手作りしている。
完成した型は皮革の上にあてがわれ、クリッカーという工具によってプレスされる。この時、素材の傷や汚れを避けて位置を調整する必要があるため、型の軽さが重要になるそうだ。
こういったアナログ工具が並ぶなか、一畳ほどある大きな工作機械がひときわ目を引く。5年前から導入された、CADデータに対応したCNC切削加工機だ。先端には超硬という硬質の金属などが取り付けられ、皮革や紙といった素材を切断することができる。
機械の先端にはカッターの他に、ペンや穴あけ加工用の工具が取り付けられ、それぞれ高速で加工を行うことができる。多様かつ高精度の仕上がりは、CNCならではの大きな強みだと言えるだろう。
なかでも、CNC加工の可能性を示すために社長自らこの機械で作り始めたという「レザーアニマル」シリーズは、都内5区の町工場が参加する「TASKものづくり大賞」で奨励賞を獲得し、その後全国の東急ハンズで取り扱われるなど好評を博している。
このように、篠原刃型では確かな金型成形の技術を持ちながら、新しい工作機械の利活用にも積極的だ。代表の篠原雄二さんは、その理由について「時代に合う新しい選択肢を用意したかった」と語る。
「うちで作る型は量産のためのものですが、数量を維持するという前提は時代についていけなくなりつつある。これからの日本を支える、個人の個性を生かした多品種小ロットのものづくりを考えたときに、CAD対応機械の“型代がかからない”という特性は一つ大きな強みになります。もちろん、今まで通りの抜き型もできますが、もし作る数が少なく型代が出せないようだったら機械での裁断もできる、という選択肢を与えたかったんです」
「機械を導入してから5年間が経ちました。レザーアニマルの開発などを通じて加工の特性は研究し尽くしましたが、ランニングコストもかかり正直まだ採算が取れているとは言えない状態です。でも、誰かがやらなければ道は開けないじゃないですか。大きな冒険をしている自覚はありますが、もっと認知してもらえる未来が来るまで頑張ってみようと思っています」
少量多品種の生産をターゲットにした社長のビジョンは、まさにMakers文化が広まった現状と呼応している。旧来の枠組みにとらわれず、新しい生産のシステムを築こうとする姿に、皮革加工の未来を感じることができた。
概要
企業名 | 有限会社篠原刃型 |
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所在地 | 東京都足立区千住緑町3-2-2 |
Webサイト | http://yu-factory.com/ |
利用法 |
【依頼、問い合わせ方法】 |
納期 | 時期によって変動 |
料金 | 機械の駆動時間に応じて変動 |