1カ月1000円工作
単身赴任のムカイさんへ。ドイツで役立つグッズを1000円で作りました!
一人1000円以内でものづくりをする「1カ月1000円工作」。いよいよ第2シーズンもラストとなりました。
今回のお題は「ドイツで役立つグッズ」です。
なんでこんなお題になったのか? それは、サラリーマン工作員2号のムカイさんが、ドイツへ単身赴任することになったからです。
そこで、1カ月1000円工作らしく、ムカイさんに1000円工作を贈ろうというわけでございます。今回は、壮行会も兼ねての発表会となりました。
スケジュールの関係で、今回は2チームのなかから、以下のメンバーが参加いたしました。
(左から)
ひとしんしさん
世の中を台無しにするようなアイデアとクリエーションを創出するひと。会社員をしながらinspireをnextしつづけている。
サラリーマン工作員ムカイさん
某メーカーのエンジニア。週末はクリエイティブ筋を鍛えるために、Makers' Baseに通いものづくりをしている。今回ドイツへ単身赴任することに。
皆川めぐみさん
ハンドメイドとデジタル・ファブリケーションの境目で、「無いならつくる」を口癖に活動するデザイナー。デザインの学校で先生もしている。
やまざきはるきさん
デジタル広告会社「スパイスボックス」に所属するテクノロジスト。ちょっと先の未来のコミュニケーションについて日々プロトタイピングしている。光る工作が得意。
さて、どんな餞別の品が飛び出すのでしょうか!?
ドイツで日本の味を堪能する「ふりかけロボ」
トップバッターは、「100均光りもの王子」ことやまざきさんです。何やらごそごそと準備しておりましたが……。
な、なんですかこれは……?
「この連載の集大成として作ってきました。これまで作ってきたものの技術を全部入れています」
あ、そうですか。いったい何でしょうか?
「ムカイさんがドイツに単身赴任ということで、ドイツにいるとビール、ジャガイモ、ソーセージの食事ばかりで、日本食が恋しくなるのではないかと思いまして、ふりかけロボを作ってきました」
なるほど! ふりかけをかけてくれるマシンなんですね。どんな風に動くのか、見てみましょうか。
中に入っているのはゆかりです。下にご飯(今回はサラダ)を置いて、スイッチを触るとゆかりが振りかけられるというわけです。
「集大成なので、マイコンで制御しています。タッチセンサーは、以前作ったおじいちゃんのお盆で使ったセンサーです。上の部分は、第1回で使った100円ショップのミルクフォーマーですね。もちろん、光るようにしました」
まさに集大成! やまざきさんのすべてが詰まっているといっても過言ではありませんね。
ただ、それだけではありません。新技術も導入。それはサーボモーターです。
いやー、見た目的にもテクノロジー的にもやまざきさんらしいですね。
製作風景を見てみましょう。
こちらが材料。ご存じミルクフォーマーにピンポン球、調味料容器にワイヤーです。こちらは100円ショップで購入したもの。
電子工作系は最近、Aliexpressで安く大量に購入しているもので、左上からDigispark互換ボード、Neopixel互換フルカラーLED、おじいちゃんのお盆で登場した静電容量タッチセンサーTP223、右下の青い箱はパチモノのSG90というサーボモーターです。
あとは、アクリルをレーザーカッターで切り出して部品を作成。これをホットガンやマスキングテープを使って組み立てていったようです。
材料費はゆかりを入れて935円です。
これをムカイさんにプレゼント。ムカイさん曰く「ドイツにはふりかけをたくさん持って行きます! あとはこれが税関を通るかどうか……」と、ちょっと心配しておりました。
目から鱗の日本ードイツ時計
お次は武井さん&皆川さんご夫妻です。武井さんはご都合により遅刻ということで、皆川さんがプレゼンテーションを行います。お、時計を2つ取り出しました。
100円ショップの時計のようですが……。なんでしょうか?
「ムカイさんと言えば、やっぱりMDF。なので、文字盤をMDFにしてみました」
なるほど。でもそれだけじゃなさそうですね。銀色の板のようなものが気になります。これは? なんで2つあるんでしょう?
「2つあるのは、日本とドイツで使うためです。銀色の板には、それぞれJPNとDEUと書いてあります。これは国名です。この板は、それぞれの国の時間を示しています」
つまり、日本とドイツ専用の世界時計なんですね! 日本とドイツの時差は8時間。ドイツが朝の10時ならば、日本は夕方の5時。時差の板が1時間幅なのは、夏時間と冬時間があるからです。
これ、なかなか名案ですね。
時差を示す銀色の板は、短針の部分に貼ってあります。MDF板は厚みを調整するため、1mmになるまで削っているとのこと。意外と手間がかかっていますね。
製作風景はこちら。
100円ショップで時計選び。今回は工作しやすいように小さいものをチョイス。
MDFの厚みをレーザーカッターで調整。かなりの力技ですね。この後文字盤を刻印し丸くカット。ここまでがレーザーカッターの作業。
時差を示す銀色の板は、メタリックの塩ビ板。30度の扇形にハサミでカットしています。
切り出した塩ビ板を、短針の部分に時差の分ずらして貼り付け、再度時計を組み立てて完成です。
これはなかなかのアイデアですね。日本とドイツで、お互いの時間を確認できる時計。ロマンチックじゃないですか。
ここで武井さんも到着。ムカイさんもうれしそうです。
武井祐介さん
メーカー勤務の機械設計エンジニア。週末はTAK-TEKの屋号で、さまざまなジャンルの人と一緒にものづくりを行っている。
材料費は時計2つで636円でした。
ドイツビールを堪能するためのかっこいい栓抜き
3番目はひとしんしさんです。取り出したのは……。
???? なんでしょう? かっこいいですね。
「ドイツと言ったらやっぱりビール。なので、栓抜きを作ってきました」
おお、栓抜き。ドイツは瓶ビールをそのまま飲んだりするようなので、ちょうどいいのではないでしょうか。ムカイさん、ビール好きですしね。
一見すると、ランダムな幾何学模様のようですが、ちゃんと設計されているそう。ひとしんしさん曰く、王冠の特許情報から、支点や距離などを割り出し、適切な力で王冠が抜けるようにしているそうです。
ちょっとビール瓶がなかったので、テーブルにあった醬油のボトルで試してみたところ、結構使いやすそうです。さすが、特許まで調べて作られた栓抜きです。
しかし、この変わった形は何なんでしょう? 製作風景を見てみましょうか。
デザインの元になっているのは、ボロノイ図。Wikipediaによると、
ある距離空間上の任意の位置に配置された複数個の点(母点)に対して、同一距離空間上の他の点がどの母点に近いかによって領域分けされた図のことである。
と書かれています。うーん、ちょっと難しい……。まあ、そういうものがあると思っていただければ。
このボロノイ図を元に栓抜きらしい形にデザイン。
切削加工のためにパスを切っています。
完成イメージをレンダリングしたものです。かっこいいですね。
真鍮の板を切削器で切り出します。真鍮の厚さは3mmです。
これでできあがり。削るのに約1時間かかったとのこと。材料費は700円です。
こちらもムカイさんに。しっかりした作りで、持ちやすく使いやすそう。ムカイさんも「いっぱいビールを飲むぞー!」と意気込んでおりました。
ムカイさんは自分用の最新スマホ型ゲームを作ってきた!
さて、最後は本日の主役、ムカイさん。ご自分でも作ってきていました。
おお、なんか懐かしいアナログゲームですね。これを作ったんですか?
「僕、ドイツに行くにあたって携帯電話を解約しちゃったんですよ。そうすると向こうで暇じゃないですか。なので、スマホ型のゲームを作ってみました」
なるほど。ムカイさんらしくMDFで作られていますね。でもこれ、市販でもありますよね。
「やっぱり最新型のスマホがいいかなと思って、iPhone Xと同じようなサイズにしてみました」
は、はい。そうですね。厚みは違いますけどね。
でも、それだけじゃないですよね?
「iPhone Xといえば、やっぱり画面をタッチするじゃないですか。なので、こちらも画面をタッチするようにしました」
迷路を玉が進むシンプルなゲームですが、このままではゴールできないということ。しかし、途中にある壁を上から押すことで、玉が通過できてゴールまで行けるようになるとのこと。うん、スマホっぽいですね(?)。
「これで、ドイツでも暇にならずに済みます」
ムカイさんはご満悦です。楽しいドイツ生活になりそうですね。
さて、製作風景です。
いつものようにアイデアスケッチ。「A層、B層の2層構成にする!」「“押す”ことで何らかのFeedback」なんていうキーワードが見られます。
材料はこちら。MDFとふにゃふにゃのプラ板、マグネット。ムカイさんお得意の材料ですね。
そしていつものレーザーカッターでの切り出し。結構部品点数が多いですね。これを組み立てていきます。
そしてマグネットを仕込んでいます。ムカイさんによれば今回のこだわりポイント。タッチポイントは沈み込むように細工。これによりスマホライクな操作感を実現しています。
材料費は645円でした。
1カ月1000円工作第3シーズンもお楽しみに!
ということで、ムカイさん壮行会アンド発表会は以上。この後、みんなで楽しく作品を見たり、思い出話で盛り上がったり。あっという間にお開きの時間になりました。
さて、1カ月1000円工作第2シーズンもここまで。そして、すでに第3シーズンに向けて着々と準備を進めております。
2018年の1カ月1000円工作もお楽しみに! それではAuf wiedersehen!