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「バラしてみたらオドろいた」家電分解ジャーニー

DJ営業の味方! ポータブルDJミキサーを自作してみた

カセットテープDJの大江戸テクニカです。
カセットテープDJ装置ですが、展示会やイベントなど、外で紹介する機会が増えてきました。現場がクラブやライブハウスの場合は音響機材が充実しているので問題ありませんが、展示会や企業などに持ち込む場合は自分である程度カセットテープDJ環境を揃える必要があります。特にDJミキサーはそこそこ重くて大きいので運ぶのが億劫です。営業活動用にもっとコンパクトなDJミキサーが欲しい。そんな思いでカセットテープDJ用のミキサー製作にチャレンジしてみました。

DJの味方、DJミキサー

DJミキサーは文字通りDJプレイに特化したオーディオミキサーです。
DJには大前提として何かしらの音楽をかける役割がありますが、DJミキサーはその動作をスムーズに行えるようアシストしてくれます。一般的にDJというと、レコードを上下に動かして「キュキュッ」と鳴らす仕草が定着していますが、音楽をミックスするという点ではDJミキサーが重要な役割を担っています。

展示会でDJミックスをしている様子 展示会でDJミックスをしている様子

DJミキサーに明確な定義はありませんが、自分なりの解釈だと最低限以下のような機能がある物がDJミキサー足り得ると思います。

  • 2つ以上の音声入力があり合成できる。
  • 入力それぞれの音量を調整できる。
  • モニター出力があり、曲をかけつつ次の曲のキュー(頭出し)の準備を行うことができる。

さらに最近のDJミキサーによっては音を変化できるエフェクトやPCソフトと連動できる機能なども実装されていて高機能化が顕著です。
私が使用しているDJM-450は幅230mm、高さ108mm、奥行き320mm、重さ約4kg。
IKEAの青いバッグに入れて都会をうろついていると高確率で職務質問にあいます。

音の信号をカスタマイズできるDSP(デジタル・シグナル・プロセッサー)

手軽に音響機器を開発できる方法はないかと調べていたところ、アナログ・デバイセズのADAU1701を搭載した価格も手頃なDSPボードを見つけました。

ADAU1701を搭載した開発ボード「APM2」 ADAU1701を搭載した開発ボード「APM2」

音声や映像信号などを扱う場合、多くの場合高速処理、複雑な演算が必要ですが、ワンボードマイコンArduinoなどで使われている汎用マイコンだと対応しきれないことがあります。

ADAU1701はオーディオ信号の入出力処理に特化したプロセッサーのため、リアルタイムの音声処理に適しています。さらに2個のADCと4個のDAC、GPIOが内蔵されているのでボリュームやスイッチなど独自のインターフェースを取り付けることができます。また、SigmaStudioというソフトウェアを使用することでプログラミングや電子回路の知識があまりなくても自分好みの音をデザインできます。

これまでDSPを搭載したボードは高価だという印象でしたが、WONDOMではフリーランスに優しい価格設定で提供してくれていました。今回購入したADAU1701ボード2つと書き込み機やオプションのコネクターなどを併せても1万円以下で揃えられました。

標準では半固定可変抵抗がついていますが、WONDOMのサイトから注文する場合は備考欄に“APM2 POT1-4 removed & replace with JST PH Connector”などと記載すればPHコネクタに変えてくれます(ただし、10個以上注文の場合とのこと)。可変抵抗は自分で選定した物を使いたかったのでPHコネクターに変えて納品してもらいました。

SigmaStudioを使ってみた

SigmaStudioはブロック同士を線で繋ぐことで自分好みのサウンドをプログラムできます。私はプログラミングがあまり得意でないので直感的に構成できる方式は大変助かりました。

HIGH、MIDDLE、LOWなどのイコライジングの他、フィルターやコンプレッサー、音声をミックスするブロックなどが標準で備わっていました。

SigmaStudioのプログラミング抜粋 SigmaStudioのプログラミング抜粋

ソフトウェア上でデザインが完了したら、USB経由で書き込みます。
こちらも別売りのWONDOMの書き込み機を使用しました。

書き込み機「ICP1」 書き込み機「ICP1」

自作DJミキサー

DJミキサーとして組み立てやすくするために拡張基板を作成しました。

APM2拡張基板 APM2拡張基板

残念ながらADAU1701には入力が1つしかないためDJミキサーとして成立させるにはこれを2個以上組み合わせる必要があります。ただ、出力は2つ独立して調整した音声を出力できるのでモニター出力はソフトウェアで簡単に設定できました。

写真はボリュームなどを取り付けて組み立て中の様子です。配線などかなりごちゃごちゃしてしまったので量産する場合は組み立て性などを工夫する必要がありそうです。

組み立て中の状態 組み立て中の状態

なんとか配線を整理してAliExpressで安価に売っていたオーディオインジケーターなどを追加して完成です。文字の印字などはDMM.make AKIBAのUVプリンターを使用しました。

ポータブルDJミキサー外観 ポータブルDJミキサー外観

入力はA、Bの2系統があり、それぞれマスターボリュームの他に周波数のHIGH、MIDDLE、LOWの大きさを調整できます。

さらにマスター出力とは別にモニター出力があるので次の曲をかける時に頭出しの準備ができます。モニター出力のオン・オフもスイッチで切り替えられます。

幅130mm、高さ100mm、奥行き190mm、重さ約0.7kgと、片手で持てるサイズにすることができたので、持ち出すときに便利です。

ポータブルDJミキサー詳細 ポータブルDJミキサー詳細

モバイルバッテリーで動くようにしてみた

カセットテープDJ装置は15Vの電源で動作します。これまでは15VのACアダプターを使用していましたが、営業先では家庭用100Vの電源すら確保できない場合もあります。そこで、モバイルバッテリーで駆動できるようにしてみました。

市販のモバイルバッテリーはUSB電源5Vの出力ですが、これをアナログ・デバイセズのLTC3111を搭載した秋月電子の電源キットで15Vに昇圧する回路を追加してカセットテープDJ装置の電源にします。

ポータブル電源と昇圧回路 ポータブル電源と昇圧回路

この電源キットは出力電流1.5Aを流すことができます。カセットテープDJ装置とポータブルDJミキサーの消費電流は概ね1A以下なので、これで動作できそうです。

実際にポータブルバッテリーやポータブルスピーカーなどと接続して動作させてみました。
動画では音声入力AにカセットテープDJ装置の音源、音声入力Bにスマホからの音源を同じ楽曲でミックスしています。

カセットテープDJを持って外に飛び出そう

ポータブル化を実現できたことにより、一層アクティブにカセットテープDJ装置を広めていくことが可能となりました。町で私を見かけたら、ぜひカセットテープDJバトルを挑んでみてください!

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