「バラしてみたらオドろいた」家電分解ジャーニー
ネットで簡単! 板金加工サービスを使ってみた
カセットテープDJの大江戸テクニカです。
これまでMDF、3DプリントなどでカセットテープDJ装置の筐体を作成していましたが、先日より板金加工サービスを活用した金属筐体の提供を開始しました。作り方などの問い合わせが多かったため、インターネットで機械部品が注文できる 「meviy」の板金加工サービスについて、私なりの使い方をご紹介したいと思います。
3Dプリンターでパーツ製作したときのトラブル
カセットテープDJ装置の筐体を3Dプリンターで作成し、何台か郵送するうちにあるトラブルが起こりました。板厚3mmで出力した側面のパーツが郵送時に割れて届いてしまったのです。強度を上げるための対策が必要と感じました。
3Dプリンター用のレジンの中には高強度を売りにしている製品もありますが、いくつか試してみたところ、値段が高価だったり出力後に反りやすかったりとしっくりくるものがありませんでした。根本的な解決策として筐体を金属素材へ変更してみました。
板金加工サービスで筐体を作る
薄い板状の金属材料を切り出し加工する板金加工は、 曲げや溶接などの接合で箱状の物が作れるため、製品の筐体を作成する際に便利です。
電子部品用の筐体やパソコンのフレームなどにも使われている加工方法です。
近年、レーザーカット技術やパンチプレスによる抜き加工、プレスブレーキ(ベンダーとも呼ばれる)曲げ加工を行う工作機械の技術が向上しています。3Dデータをアップロードすれば安価&短納期で加工を請け負ってくれる業者が増えてきており、中規模なハードウェアを作る際にも有効な手段となりました。
Misumiが運用しているmeviyの板金加工・切削加工サービスは、個人事業主も対応してくれているので、「大江戸テクニカ」で屋号をとった私でも注文依頼ができました。
Fusion 360の「シートメタル機能」でデータを作成
注文用のデータはFusion 360の「シートメタル機能」を活用して作成しました。
まずは作業スペースをシートメタルの状態にします。
ベースとなるスケッチを作成します。
図面ができたら「修正」のドロップダウンメニューから「シートメタル規則」で板材の設定をします。
鋼、ステンレス、アルミニウムなどの素材が用意されていますが、「新しいルール」から自分用の設定を作成できます。厚さは1mmとしました。
「曲げ条件」から、板を曲げたときにできる半径の大きさも設定できます。
meviyでは、曲げ内Rは「0以上かつ板厚以下」、曲げ外Rは「内R+板厚とモデリング」と基本ルールで定められていますので、その範囲内で設定しましょう。
「作成」の項目にある「フランジ」機能でスケッチを立体化します。
フランジのアイコンを押下すると、先ほど作成したシートメタル規則が画面上に現れます。
それを選択した上でベースのスケッチをクリックすると、設定した板でモデリングされます。
箱物にする場合は側面にしたい辺を「フランジ」機能で再度クリックすると、動画のように引き伸ばせます。
ソリッドモードと同じように上からスケッチを追加して押し出しやフィレットなどを付けることもできますので、パネルマウントの電源ジャックなどの取り付け穴を適宜追加します。
また、ソリッドモードに切り替えて3Dプリンターで出力するパーツも追加しておきます。
オレンジ色の箇所が3Dプリンターで出力する部品です。
個人的な好みなのですが、角が丸い製品が好きなので大きなRとなる箇所は3Dプリンターでの作成としました。
meviyで注文
データが出来たら早速meviyで注文してみます。
Fusion 360で「ファイル」の「エクスポート」から、作った3Dデータを.stepファイルとして出力します。2次元図面や展開図にして出力することも可能ですが、meviyの場合は.stepファイルでも受け付けてもらえます。
meviyのホームページにアクセスし、FA用メカニカル部品のメニューから「+新規見積」ボタンをクリックして、出力したデータをアップロードします。アップロードすると「切削プレート」と「板金部品」のボタンが現れます。「板金部品」のボタンをクリックし、「次に進む」ボタンを押下します。
先ほどアップロードした3Dデータをパーツごとに確認できます。
板金加工で注文するパーツ(今回は上部、下部の2つ)をパーツリストから選択し、基本情報を入力します。材質は鉄、ステンレス、アルミニウム、パンチングメタルなどが選べます。
「基本情報」を入力したら「見積条件を確定」、「見積リストへ追加」して注文します。
価格は、上部のパーツが1枚2430円、下部のパーツは1枚2810円といった結果となりました。Meviyはまとめ買い割引もあり、10枚の注文だと上部のパーツは1枚2000円、下部のパーツは1枚2300円となります。3Dプリンターで製作する場合、1台に1kg(4000円程度)使っていたので、コストもそこまで上がりませんでした。
到着と組み立て
注文後、商品が到着しました。10枚注文で3営業日出荷の納期です。素材や表面処理によっては納期がもう少し長くなります。ほぼCADで作ったデータのイメージ通りに仕上がっているように感じました。また、2次元図面も一緒に同梱してくれるのが地味にうれしいです。
3Dプリンターのパーツなども併せて、カセットテープDJ装置を組み立ててみました。
組み立て時間は2時間程度です。3Dプリンターパーツのみで作っていたときは、反ったり欠けたりした箇所の修正や表面を磨く必要があったので倍くらいの時間がかかっていた気がします。
また、素材が金属になったことによって重量が若干重くなりました。3Dプリンターパーツだと1kg程度でしたが金属パーツですと1.5kgです。ただ、その分スクラッチなどの激しい操作をする場合に安定感が出たと思います。
加工方法の比較
それぞれの加工方法をまとめると、
レーザーカット | コスト〇 | 耐久性× | 組み立て作業性△ |
3Dプリント | コスト△ | 耐久性△ | 組み立て作業性△ |
金属(板金サービス) | コスト△ | 耐久性〇 | 組み立て作業性〇 |
といった感じでしょうか。
素材が変わると作業性、コスト、仕上がりなどが大きく変わってきます。製作がうまくいかないときやトラブルがあったときは、思い切って素材から見直すのも有効だと思います。皆様もぜひ色々な方法を試してみてください。