身近なモノで、あるある工作
段ボールでおもしろいものを作ってみよう!
僕らの身の回りにある、ごくごくありふれたもので工作をする「身近なモノで、あるある工作」。特別なものは使わない、日常の中にあるもので工作をしてみようという企画です。
レギュレーションは、以下の通り。
- お題の材料を使う
- 実用的なものを作る
一見簡単そうですが、実はそうでもないようです。第2回のお題は「段ボール」。さて、今回はどんな工作が飛び出すのでしょうか?
今回のメンバーは以下の3人です。
写真左から
武井めぐみさん
ハンドメイドとデジタルファブリケーションの境目で、「無いなら作る」を基本姿勢に活動しているデザイナー。個人的にハンドメイドプロダクトを製作するほか、デザイン学校で「手で作り考えることの、楽しさと大切さ」を教える教員もしています。
泉田隆介 a.k.a poipoi さん
マニュファクチュアという屋号で活動するフリーランスプロトタイプメイカー。既存企業の新規事業プロジェクトやスタートアップ企業に向けてプロトタイプ製作を支援したり、体験型広告のテクニカルディレクションなどを行う本業のかたわら、たまに工作やワークショップをしたりする髪の長いおじさん。
江口壮哉さん(Twitter @eguchisoya)
3Dプリンターが大好きな大学生。工業高校からデザインの大学に進み“ファブエンジニア”として、新たなデザインを生み出すデジタルファブリケーション機材を開発している。3Dプリンターの可能性を信じて毎日のようにキャリブレーションをしているので、一向に研究が進まない。
かわいいけど勉強になる! 段ボールで作る簡単偏心カム
トップバッターは武井さん。何を作ってきてくれたのでしょうか?
「お子さんの夏休みの自由研究的なものです。動くからくりおもちゃの仕組みの部分を段ボールで簡単に作ってみました」
かわいらしいものが出てきました。上に乗っているのはペンギンかな?
どういう風に動くのか、動画でご覧ください。
おお、ペンギンたちが波に乗って移動しています。シンプルですけど、なかなか凝った仕組みの様子。どうやって作られているのでしょうか?
まずは段ボールの片面を剥がしています。段ボールはスーパーでもらってきたもの。カッターを使うとキレイに剥がれるようです。そして、ある程度の長さにカットして、くるくるっと丸めていきます。段ボールの端に両面テープを貼り付けて丸めると、筒状のものができあがり。これをカムとして使います。
筒状になった段ボールを竹串に通していきます。その際通す穴を90度ごとにずらすことで、偏心カムとしています。段ボールを丸めて作ることで、竹串を通す穴を開ける必要がないというのがポイント。手軽に偏心カムが作れます。カムはグルーガンで固定するとずれなくなります。
この偏心カムを、ラッピング用の小さな段ボールに通します。取っ手部分にはビーズを付けて回しやすいようにしています。回してみると、偏心カムがどのように動いているのかわかります。
波板の部分。同サイズに切り出した板に真ちゅうの針金を通しています。隙間には短く切ったストローが入っています。青い部分はマスキングテープ。重りとなるように、真ちゅうの棒を段ボールの下側片面に通して接着。
これを偏心カムの上に乗るように設置します。これで動く仕組みは完成です。
ペンギンの作成。ペンギンの青はマスキングテープ、乗っている流氷はポスカで着色。ポスカのような水性塗料は、一気に塗ろうとすると段ボールの表面がボロボロになるので、何回かに分けて重ね塗りをするといいそうです。
流氷に串を刺して、そこにペンギンを固定。流氷部分の段ボールは、90度ずつ角度を変えて数枚貼り合わせています。こうすることで断面がきれいになるだけでなく、強度も増します。
一見かわいらしい工作ですが、かなり細部にまでこだわって作られています。偏心カムを木材で作ろうと思うとかなり面倒ですが、段ボールなら簡単ですね。これは夏休みの自由研究に向いているかも。
かっこいい! オリジナル段ボールリュック
2番手は江口さんです。リュックですね。
「何を作ろうか考えているときに、僕が普段使っているリュックが目に入って。これを段ボールで作ってみたらどうだろうと思って、やってみました」
おわかりかと思いますが、右が市販のリュック。そして左が江口さん作の段ボールリュック。デザインの再現性が高いですね。
このロゴは、江口さんが自分の作品に付けているもの。「SOYA EGUCHI」のイニシャルです。
フラップ部分は面ファスナーで開閉できるようになっています。
上部の取っ手部分も面ファスナーでまとめられるようになっています。
容量も十分そう。実用性、高そうじゃないですか?
さて、制作過程を。
まずはもととなるリュックの要所を採寸。結構手間がかかる作業です。
一番のポイントとなる表面の彫刻。これはFusion 360を使って、600×400mmのサイズでデザインデータを作成。それをIllustratorに移して彫刻する部分を色づけしたら、レーザーカッターを使って彫刻していきます。
1回目。まだちょっと浅いですかね。
4回目で段ボールの片面を彫刻。1回1時間、合計4時間の作業でした。
背面部分。布感を出すために直線方向だけではなく45度の方向にも折り目を入れているそう。ベルト部分などは段ボールの方向に沿って折り目を入れて柔らかさを出しています。
実際に背負って街を歩いてみましたが、なかなかかっこいいじゃないですか。ただし、防水加工はしてないので雨には弱いとのこと。あとは耐久性ですね。これもテストを重ねていく必要があるでしょう。
でも、このバッグかっこいいなー。こういうの売っててもおかしくないですよね。
どんな動作をさせるかはあなた次第のIoTボタン
最後は泉田さんです。ボタンが1つとLED1つのシンプルなものが登場しました。これは?
「IoTボタンです。仕事柄プロトタイピングをすることがあるのですが、形の確認をするために紙を使って試作することがあるんです。そのとき、段ボールを使って機能も一緒に入れられたら便利かなと思って、作ってみました。段ボールの中にいかに回路を入れられるかがポイントですね」
なるほど。IoTボタンですか。どんなことができるんでしょうか。実演していただきました。
ボタンを押すと、LINEでメッセージが送られるというもの。単機能型ですね。さて、どのような構造なのでしょうか。
ボタンの裏側を開けると、電池ボックスが現れます。単四乾電池3本で動作します。隣には基板が見えますね。
これは「ESP-WROOM- 02」というWi-Fiにつなげるためのモジュールです。
ボタン側の様子。回路がありますが、茶色い部分は導電テープを使っています。両面とも通電するようになっているので、回路が交差するようなところに使えるのがポイント。その上に、部品をはんだ付けしています。
「今回LEDと抵抗をチップ部品にしたのではんだ付けが必要でしたが、足が付いている部品にすれば、導電テープで留めるだけでOKなので、はんだ付けは不要です」
なるほど。もっと簡単にできるようになるわけですね。また、導電テープにはんだ付けするのは結構熟練のテクニックが必要になるので、お子さんがやるような場合は足付きの部品のほうがいいでしょう。
スイッチ部分。回路上にスイッチがありますが、その反対側は汚れ落としに使うメラミンスポンジを使っています。硬いものを使わずスポンジ状のものを使っているのは、押し心地と、ボタンが確実に押されるようにという配慮からです。硬い材質だと、ボタンの部分が潰れてしまうそうです。
ボタンを押すだけでは、何も動作しません。Wi-Fi経由でサーバーにアクセスしなくてはなりません。そこで活躍するのが、簡単にインターネットを介したプログラミングができる「IFTTT」です。IFTTTは、インターネットで利用できるさまざまなサービスを連携させて、「Aの動作の後にBの動作をする」といったことができます。
今回は、「ESP-WROON-02のボタンが押されたら、泉田さんのLINEアカウントにメッセージを送る」というプログラムを書いています。“プログラムを書く”なんていうとおおげさですが、IFTTTはほとんどが選択式になっており、あらかじめさまざまなアプリが登録されているので、設定自体は簡単です。
つまり、泉田さんのIoTボタンが押された後の動作は、IFTTT上で変更できます。今回はLINEでメッセージを送りましたが、どこかに電話をかけたり、家の電灯をつけたり、スマートスピーカーと連動させたりといったことが可能になります。
共働きの家庭で、お子さんが家に帰ってきたときにこのボタンを押すと、ご両親のLINEに通知させるなんて使い方もできます。
次回のお題は「ペットボトル」
今回、武井さんと泉田さんの作品は小中学生の夏休みの自由研究に向いていましたね。一方江口さんのリュックは、大人の自由工作向けです。
段ボールは手軽に手に入る材料なので、すぐに工作が始められるのもポイント。アイデア次第で、あっと驚くモノができるのではないでしょうか。
さて、次回のお題は「ペットボトル」。ペットボトルロケットとか、水を入れて猫よけなんて、ありふれた工作はNGですよ。乞うご期待!