身近なモノで、あるある工作
ペットボトルで日常生活に役立つものを作ってみよう!
僕らの身の回りにある、ごくありふれたもので工作をする「身近なもので、あるある工作」。読者のみなさまのおかげで無事3回目を迎えることができました。ありがとうございます。
この企画のレギュレーションは以下の通り。
- お題の材料を使う
- 実用的なものを作る
たったこれだけなんですが、意外と頭を使わないと面白いものができません。さて、今回のお題は「ペットボトル」。どんなものが飛び出すでしょうか。
メンバーは以下の3人です。
写真左から
武井めぐみさん
ハンドメイドとデジタルファブリケーションの境目で、「無いなら作る」を基本姿勢に活動しているデザイナー。個人的にハンドメイドプロダクトを製作するほか、デザイン学校で「手で作り考えることの、楽しさと大切さ」を教える教員もしています。
ひとしんしさん
世の中を台無しにするようなアイデアとクリエーションを創出するひと。会社員をしながらinspireをnextしつづけている。
泉田隆介 a.k.a poipoi さん
マニュファクチュアという屋号で活動するフリーランスプロトタイプメイカー。既存企業の新規事業プロジェクトやスタートアップ企業に向けてプロトタイプ製作を支援したり、体験型広告のテクニカルディレクションなどを行う本業の傍ら、たまに工作やワークショップをしたりする髪の長いおじさん。
ペットボトルのふたを利用したピルケース
まずはひとしんしさん。なんだかとっても小さいものですが……。
「両側から開けられるピルケースです。この発表会の後、僕はロンドンに飛び立つので、旅行に役立つものをということで作りました」
ペットボトルのふたを利用して、両側から開けられるピルケースを作ってきたようです。
ケース部分です。ペットボトルの飲み口をモデリングして3Dプリンターで出力したもの。この両側にお好きなペットボトルのふたを取り付ければできあがりです。ペットボトルのふたのカラーリングを変えると、いろいろ楽しめますね。
ピルケースですが、小さなものなら何を入れてもOK。ひとしんしさん自作の指輪なんかも入れられます。
では、製作風景を。
まずはペットボトルの飲み口の部分をモデリング。
「ペットボトルの飲み口の規格は、国内メーカーならどこも同じものを採用しています。ねじのピッチも同じですね。ただ、ねじ山の形状がちょっと違うようで、ねじ山が連続しているものと途切れているものがあります。今のトレンドは途切れているもののようです。途切れさせることで、摩擦を減らして軽く閉められるようになっています」
ひとしんしさんもこのトレンドに乗っかって、スリットのあるねじ山でモデリングしています。
よーくペットボトルのふたを見てみると、確かにねじ山が途切れています。この工作企画、こういう知識が増えていきますね。
モデリングしたペットボトルの飲み口を3Dプリンターで出力。あとはお気に入りのペットボトルのふたを用意すればできあがりです。
「日本のペットボトル飲料、よく見てみるとかなりふたがカラフルなんで、いろいろ試してみるとお気に入りのピルケースになりますよ」
まずは、いろいろなペットボトル飲料を飲むのが、この工作のポイントのようですね。
ペットボトルを使った豪快なサインペン
お次は武井さんです。色がついたペットボトルが出てきました。これは……?
「大きなサインペンを作ってきました。ペットボトルの中身は水性インクを水で薄めたものです」
ペン先が武井さんオリジナル。
「ペン先に当たる部分は自分でモデリングして3Dプリンターで出力しました。ペットボトルのふたにしっかりハマるようにして、そこにOリングをはめてインクが漏れないようにしています」
ペン先にスリットがあり、そこからインクが出てくる仕組み。ペン先には手芸などで使う中綿を採用。円筒状に丸めて詰めればペン先が完成します。
「専用のキャップも3Dプリンターで作りました。ペン先をちゃんと収めながらも落ちないように、サイズ調整をしています」
うーん、なかなかおしゃれ! 実際に書いてみました。
おおお、ちゃんと書ける! ペットボトルの中身を入れ替えればほかの色も使えますし、中綿以外の素材を使ってペン先を変えたり、自分でペン軸を設計して3Dプリンターで作ったりすれば、いろいろなタッチのペンができるんじゃないでしょうか。
では製作風景をご紹介。
まずはモデリング。ペン軸はペットボトルの径にしっかりハマるサイズに設計。キャップのほうもしっかりハマるようにサイズを微調整しています。
3Dプリンターで出力。バリをキレイに取れば完成です。
武井さんがこだわったのが、インクの濃度。そのままでは粘度が高すぎてペン先に染みこまないため、いろいろ濃度を変えて試したそうです。
「今のところ最適なのはインク10に水4の割合ですね。今回は100円ショップの水性インクを使っていますが、メーカーによって濃度が違うと思うので、自分で試す必要があります。あとは、描く線によっても変わってくるでしょうね。薄い色をたくさん重ねて表現したい人は薄めに、はっきりとした線で描きたい人は濃いめにするといいのではないでしょうか」
なかなかアーティスティックな作品でした。ありがとうございました。
おしゃれ度の高いIoT自動水やり機
最後は泉田さんです。植物が出てきました。
「自動水やり機です。一応IoT担当ということで(笑)、ネット経由で設定すると自動的に水が出てくるというものにしました」
見た目がかなりおしゃれ。「上質な暮らし」とかの文字を載せたら、通販サイトでも通用しそう。
実際に動いているところをご覧ください。
スマートフォンで設定をしてスタートを押すと、設定した間隔で水が出てきます。わかりづらいので、植物をどかしたバージョンもどうぞ。
水、出てますね。植物に水をやるのを忘れがちな人には、こういうの便利でいいですよね。あとはペットボトルの水を入れるのを忘れなければ完璧。
中身を出してみると、ペットボトルが登場。水を溜めておくタンクの役割をしています。では。製作風景をご覧ください。
アイデアスケッチです。いろいろと試行錯誤の結果、今の形になったようです。
「今回は自分の中のチャレンジとして、ポンプを使うことと金属加工をしてみました。外側は0.5mm厚の真鍮を使い、手曲げしています。パイプ部分も真鍮製で手曲げしました」
ボディ部分は缶に当てて曲げていったそう。パイプ部分は径の大きいテープの芯に合わせて曲げたそうです。
また、ろう付けにも挑戦。金属をはんだを使って接着しています。
手作り感があっていいですね。ご本人的にはもうちょっと美しく仕上げたかったそうですが、これも味があります。
ペットボトルの下にはこのようなパーツが入っています。青い部分はスタイロフォーム。
ポンプ部です。ドージングポンプという、1滴ずつ水が出るタイプのポンプを使っています。
ポンプ上部にあるのは逆止弁。右側が吸気口、左側が水の排出口です。
下部には前回も使用した泉田さん御用達の「ESP-WROOM-02」を搭載。今回はこのボードをサーバーとして、ブラウザでアクセスすると水やりの設定が行えます。泉田さん曰く「安くていいボードです」とのこと。
これが設定画面。時間がなくて作り込めなかったということですが、必要十分。
「将来的には、土に挿して土の水分を計測する機器を使って、土が乾いたら水をあげるというようなこともしてみたいと思います」
IoTで水やり。未来が僕らの隣にやってきています。
次回のお題は「プチプチ」だ!
今回は、お三方ともおしゃれ度が高い作品でしたね。興味を持たれましたら、参考にご自分で工作されてみてはいかがでしょう。3Dプリンタを持っていなくても、ファブ施設に行けば借りられますよ。
さて、次回のお題は「プチプチ」です。そう、あの梱包材にして、一度潰し始めると止められなくなる、アレです。いったいどんな作品を作ってきてくれるのでしょうか。楽しみに次回を待て!