身近なモノで、あるある工作
家のどこかにしまってある紙袋を使って工作しよう!
我々の身の回りにある、ありふれたものを使って工作をする「身近なモノで、あるある工作」。第5回目をお届けしたいと思います。
この企画のレギュレーションは以下の通り。
- お題の材料を使う
- 実用的なものを作る
この2点のみ。あとはみなさんが創造力を発揮してお好きなものを作っていただきます。
そして今回のお題は「紙袋」です。いろいろなお店で買い物をすると、もらいますよね。ちょっときれいな紙袋だと、「いつか使うかも……」なんて思いながら、タンスの引き出しなどにしまい込んでいませんでしょうか。でも、なかなか使う機会はありません。
そんな紙袋を生まれ変わらせるために、工作をしていただきます。今回のメンバーはこの方々です!
写真左から
ひとしんしさん(今回欠席のため透明度50%となっております)
世の中を台無しにするようなアイデアとクリエーションを創出するひと。会社員をしながらinspireをnextしつづけている。
江口壮哉さん(Twitter @eguchisoya)
3Dプリンターが大好きな大学生。工業高校からデザインの大学に進み“ファブエンジニア”として、新たなデザインを生み出すデジタルファブリケーション機材を開発している。3Dプリンターの可能性を信じて毎日のようにキャリブレーションをしているので、一向に研究が進まない。
泉田隆介 a.k.a poipoi さん
マニュファクチュアという屋号で活動するフリーランスプロトタイプメイカー。既存企業の新規事業プロジェクトやスタートアップ企業に向けてプロトタイプ製作を支援したり、体験型広告のテクニカルディレクションなどを行う本業の傍ら、たまに工作やワークショップをしたりする髪の長いおじさん。
おしゃれな紙袋が幻想的なランプシェードに
トップバッターは泉田さん。四角い箱……?
これは何ですか?
「この状態ではまだ紙袋を使っていませんが、これは照明です。これが光ります。色も変わります。これを紙袋に入れます」
そういうと、資生堂の紙袋にこの箱を入れました。そしてiPadで何やら操作をすると……。
光りました! しかも、紙袋を通して光が柔らかくなり、なんともいい雰囲気に。もちろん、ほかの紙袋でもOK。
シャネルの紙袋! いっきにセレブ感が増しますね。ただ、明るい色の紙袋は中身がちょっと透けちゃいますね。
では、解説をしていただきましょう。
「ユニバーサル基板の背面に電池ボックスをセットしています。これが電源です」
「外側はスチレンボードを重ねて箱状にしています。ユニバーサル基板の上に、ギャル電さんがよく使っているNeo Pixelという、色や明るさを細かく変えられるLEDを4つ配置しています」
メイン基板として使っているのは、いつもの「ESP-WROOM-02」。Wi-Fiに接続できるのが特徴の汎用ボードです。泉田さんといえばやはりこれですよね。
このボックス自体はかなりシンプルですね。あとはコントロールですが、どうなっているのでしょう?
「VJや照明さんが、照明をコントロールするための規格に“DMX”というものがありまして、それをWi-Fi経由で使用できるArt-Netという規格を使っています」
今回はiPadにインストールした、DMX規格に準拠した照明のコントロールアプリ「Photon for iOS」を使用。このアプリで複数の照明を制御できるということです。
色も自在に変更できますよ。見てみましょう。
きれいですねー。照明に関してはアプリ側からプログラミングできるようなので、一定間隔で色を自動的に変えたりすることもできます。
泉田さん曰く
「以前からこういうシステムが作りたかったんですよ。山登りをする人たちは、ベースキャンプでテントの中にランタンを入れて照らすんですけど、そこにこれを導入して、真ん中にDJブース的なテントを作って、そこからライトを操作するイベントとかできたらいいなと思ってるんですよ」
確かに、光っているテントってきれいですもんね。このライトをたくさん作っておけば、iPad1台で操作できるので、実現できるのではないでしょうか。
繊細なカッティングで光の拡散を演出
お次は江口さんです。いきなり紙袋を天井に吊り下げ始めました。どうやら、こちらも照明のようです。
ちょっと分かりにくいですかね。部屋を暗くしてみましょう。
きれいですねー。紙袋の中に入っているのは普通のLEDライト。江口さんが作ったのは、その外側の部分ですね。
それでは、袋部分をよーく見てみましょう。
細かく切り込みが入っていますね。さらにクローズアップ!
小さな三角形がいっぱい! しかもそれぞれつながっています。かなり細かくパターンカットされています。これは美しいですね。
作業工程を見てみましょう。
元の状態の紙袋はこれ。ここからどうするのでしょうか?
「まずは紙袋をばらすところから始めます。継ぎ目の部分をドライヤーで熱して、触れないくらいの熱さになると、接着部分が剥がれます」
接着部分を外して1枚の紙にしたら、それをスキャン。
スキャンしたデータに、auxetic patternと呼ばれるパターンを印刷し、ロゴ部分のパターンを消して、レーザーカットをします。
カットが終わったらまた紙袋の状態に戻して、中にLEDライトを入れたら完成です。
泉田さんいわく「接着剤には冷たくすると剥がれるものと、温めると剥がれるものがある」とのことなので、そこはトライアンドエラーで試すしかなさそうですね。
「実はもう一つ作ってきたんですよ。お手軽工作という感じなんですが」
紙コップのスリーブを紙袋から作る!
江口さんはそう言うと、スターバックスの紙コップを取り出しました。ちょっとスタバのものではない感じもしますが……。
スリーブを外してみると、中身はローソンの紙コップでした。ということは……?
「スタバの紙袋から、スリーブを作ってみました」
なんと! これ、スタバでもらってきたものじゃないんですね。どうやって作ったのでしょうか?
「こういう治具を3Dプリンターで作りました。これにスタバの紙袋から切った部分を挟んで、引っ張るとできます」
この治具、自分で作ったんですね。これでスリーブ用の紙を作ったということです。実際にどうやって作っているのか、見てみましょう。
なるほど。治具の間に紙を挟んで引っ張ると、あの波の形ができるんですね。
これを2枚作って貼り合わせたら、完成です。
今回はスタバの紙袋で作りましたが、自分の好きな紙袋からスリーブを作れますね。この治具、ちょっと欲しいかもと思いました。
紙袋をパワーアップして小物入れに
さて、今回のラストは発表会を欠席したひとしんしさんです。
紙袋そのまんまじゃないですかね。なんだろう、これ。
「紙袋をスキャンして、3Dプリンターで出力しました」
なるほど。好きな紙袋を3Dプリンターで出力すれば、小物入れとかに使えますね。
紙ではないので多少硬いものを入れても大丈夫。ペン立てなどとして利用するのもいいでしょう。
しかし、紙袋をそのままスキャンしているからか、一見すると本物の紙袋みたいですね。
では製作工程を解説してもらいましょう。
「ちょうどいい大きさの紙袋がなかったので、A3のコピー用紙を貼り合わせて紙袋を作りました」
紙袋から自作しています。その情熱はすごい。
大きさを合わせるために高さを半分にし、質感を出すためにしわくちゃにしました。高さはおよそ13cmほどです。
「DMM.make AKIBAで導入予定の3Dスキャナー「EinScan Pro 2X Plus」でスキャンしました。150万円くらいのお手頃価格で、ハンドヘルドでもターンテーブルに載せてもスキャンできます」
最新機種によるスキャンの後は、3Dソフトで微調整です。
「スキャンデータを3Dプリンターで出力しました。8時間くらいかかりました」
その結果がこちらです。
小さなサイズを出力すれば、小物入れとして机の上に置けます。お気に入りの紙袋で作ると愛着も湧くでしょう。そして、紙袋のほうはリサイクルに出せば、地球環境にも優しいですね。
家のどこかにある紙袋も、工夫次第で新しい実用品として生まれ変わります。みなさんも、紙袋で何か作ってみてはいかがでしょうか?
ということで、今回はここまで。次回のあるある工作にご期待ください!