身近なモノで、あるある工作
スタバで売っているものを使って工作しよう!
僕たちの身の回りにある、ごくごくありふれたものを使って工作をする「身近なモノで、あるある工作」。第6回目となりました。
この企画のレギュレーションは以下の通り。
- お題の材料を使う
- 実用的なものを作る
この2点のみです。あとは参加者のみなさんに創造力を発揮して工作をしてもらいます。
第6回目のお題は「スタバ」です。そう、スターバックス コーヒーです。スタバのお店またはオンラインショップなどで購入できるものを使って、面白いものを作っていただきます。
さあ、どんな作品が出来上がってくるのでしょうか? 乞うご期待。
今回のメンバーはこの方々!
写真左から
武井めぐみさん
ハンドメイドとデジタルファブリケーションの境目で、「無いなら作る」を基本姿勢に活動しているデザイナー。個人的にハンドメイドプロダクトを製作するほか、デザイン学校で「手で作り考えることの、楽しさと大切さ」を教える教員もしています。
泉田隆介 a.k.a poipoi さん
マニュファクチュアという屋号で活動するフリーランスプロトタイプメイカー。既存企業の新規事業プロジェクトやスタートアップ企業に向けてプロトタイプ製作を支援したり、体験型広告のテクニカルディレクションなどを行う本業の傍ら、たまに工作やワークショップをしたりする髪の長いおじさん。
江口壮哉さん(Twitter @eguchisoya)
3Dプリンターが大好きな大学生。工業高校からデザインの大学に進み“ファブエンジニア”として、新たなデザインを生み出すデジタルファブリケーション機材を開発している。3Dプリンターの可能性を信じて毎日のようにキャリブレーションをしているので、一向に研究が進まない。
スタバのパンフレットで「紙」を作っちゃった!
トップバッターは江口さんです。えっと、このおしゃれな絵は?
「今回は、中目黒にあるスターバックス リザーブ ロースタリー東京に行ったときにもらったパンフレットを使って、“紙”を作りました」
紙? 素材? しかもスタバで何も買ってないですよね。この企画で、素材を作ってきたのは江口さんが初めてです。
「最終的に作ったのがこれなんですけど。自分で作った紙の上に、桜の花びらの押し花を付けまして。木の枝などはコーヒーで描きました」
芸術作品じゃないですか! 確かにこの押し花、本物ですね。
紙の表面です。パンフレットを使っているのでいろいろな色が混ざっています。それがなんかいい味を出してますね。表面がツルツルしているのは、制作過程で乾燥させる際にプラ板の上に置いていたからとのこと。反対側はザラザラしています。
「紙を作る際に水の代わりに抽出したコーヒーを使っています」
おお、そこはちょっとスタバっぽい。紙のエッジ部分を見ると茶色くなっていますが、これは乾燥したときにコーヒーが固まったものだそうです。それでは、制作過程を見てみましょう。
まずは桜の花びらを拾って押し花づくりから。持っていた付箋に挟んでファイルにしまって持ち帰ったそうです。
材料と使用した道具です。パンフレットはもらってきたもの。コーヒー豆は購入しました。紙すきの道具は大学の研究室を掃除していたら見つけたそうです。ハンマーは用意したけど使わなかったとのこと。
「まず水にコーヒーと糊を混ぜた液体に、パンフレットをちぎりながら混ぜてミキサーにかけます」
ドロドロになった状態がこちら。ドロドロです。
「ドロドロになったら大きな容器に移し替えて、すきやすくなるまで水を足して薄めます」
ちなみに紙をすいているところの写真は撮り忘れたとのこと。そこ大事なのに!
すいた紙に押し花を乗せて、紙に挟んで脱水。完全に乾燥させるため3日ほど放置。
乾燥後がこちら。花が茶色くなってしまったり、取れてしまったりしていたのでさらに花びらを足していきます。
最後に、ものすごーーーく濃く抽出したコーヒーで木の幹の部分を描きました。
これに、パンフレットから切り抜いたロゴをあしらって額縁に納めたのが冒頭のもの。なんかスタバに飾ってあってもおかしくない出来栄えです。
武井さんいわく「乾く前の段階でお皿の上に置けば、紙皿なども作れますよね」とのこと。はがきだって作れちゃいますね。
原料にする紙をいろいろ変えれば、風合いを変えることも可能。かなり応用範囲が広い工作でした。
タンブラーケースで作る「スマホおやすみセット」
お次は武井さんです。これはなんでしょう?
「スマホおやすみセットです。家にいるとき、スマホで音楽を聴いているのですが、音質はあまり好きではなくて。特に夜寝るときなどは、高音がシャカシャカしてうるさいなと思っていたので、高音成分を消すようなケースを作ってみました」
なるほど。スピーカーとはちょっと違いますけど、確かにこういうものにスマホを入れたら音がちょっとこもって、逆に聞きやすくなりますね。使用したのは、スタバの店頭で売っているタンブラーの外箱です。
「まずはハトメを付けて、何回もフタを開け閉めしても割けないように耐久性をアップしました」
このケース、もともとフタと本体がひもでつながっていましたが、そのまま使い続けると穴の部分が崩壊してしまうため、補強したとのこと。
「フタと本体のすき間の部分には、小さな穴をたくさんあけて、音が外に出るようにしました」
ケース内はフェルトで仕切りを作っています。仕切りがあることで、スマホ本体だけでなくケーブルやモバイルバッテリーも一緒に入れておけるので、ケースごと家の中を移動するのも楽ちんというわけ。
実際音を聞いてみると、普段スマホで聞いている音に比べ、音量こそ小さくなりますが、かなり丸い感じに。寝るときなどはこれくらいの音質のほうがいいかもしれませんね。では制作過程をご紹介。
材料はこちら。タンブラーのケースです。結構しっかりしたボール紙製です。外箱ですらおしゃれなのが、スタバ。
買った状態では、ひもの穴に加工はなし。これでは何度もフタを開閉すると、穴が壊れてしまうため、補強をします。
ハトメを打ち込んでいきます。これで穴の部分の強度が上がります。
スピーカー部分(?)に穴を開けていきます。使用したのは、革製品用の穴あけ器具。よく見ると、穴の配列がそろっているんですね。
中のフェルトの仕切りはミシンで縫い合わせています。
仕上がりはこんな形に。これをくるくるっと丸めると……。
こうなります。仕切りは3つ。なぜフェルト素材にしたのでしょうか?
「スマホを入れるときに、ケーブルやモバイルバッテリーとぶつかるのがいやだったのと、移動中にカチャカチャ音がするのがいやだったので。また、音を吸収してくれる効果も期待していました」
フェルト以外の素材を使えば、音質などがまた変わるでしょうね。
今流行中の空中配線でLEDランプを
最後は泉田さんです。前回同様、LEDを使ったライトを作ってきた模様。
「外側に使用しているカップは、実はスタバで買ったものではなくコンビニで買ったものです。これ、何度も使えるカップなんです」
厳密に言えばレギュレーションにのっとっていない感じもしますが、スタバなんでいいんじゃないですかね(ゆるゆる)。
フタを開けてみると、配線が出てきます。ん? なんかいつもと違いますね。
「今回は空中配線にチャレンジしてみました。最近こういうのが電子工作界でははやっていまして。ビンの中に回路を作っていく“ボトルサーキット”というのをやっている方々もいます」
ほうほう。基板を使わずパーツと配線だけで回路を作るんですね。泉田さんの作った回路も美しいですね。
「使用しているLEDは、Neo Pixelを4つ。メインのマイコンはいつものESP-WROOM-02です。前回も使ったWi-Fi経由でスマホなどからコントロールができるArt-Netという規格を採用しています」
この電池はあまり見たことがないんですけど。
「今回初めて使ったのが、“16340”というリチウムイオンバッテリーです。スマホのモバイルバッテリーにも採用されています。この電池は、普通の電池よりも電圧が高いのが特徴です。通常の電池は1本で1.5Vくらいですが、これは3.5Vからフル充電で4Vくらいの電圧があります。するとこの回路が動かせるんです」
そのほかにも、5Vに昇圧する部品も取り付けているとのこと。容量は700mAh。充電式なので何度も使えます。
色を変えることももちろん可能。スタバのカップがおしゃれなLEDライトになりました。では作り方を。
「まずはブレッドボード上で基本となる回路を作ってみました。このLEDはかなり電力が必要で、ノイズがひどかったので部品などの調整を繰り返しました」
ある意味、今回のメイン材料となるのがこの銅線。ここに電流を流していくわけです。
「今回初めてのトライだったので、銅線の太さがわからなくて太めのものを使用したのですが、ちょっと太かったですね。太いと、熱が伝わりにくくはんだ付けが難しくなるんです」
あとは、温度調整ができるはんだごてを使い地道にはんだ付けをしていけば完成です。普段、基板に見慣れていると、この空中配線はかなり新鮮に見えます。ケースに入れなくても十分美しいですね。ボトルサーキットがはやるのもうなずけます。
ということで、今回のあるある工作はここまで。さて、次回はどんなお題にしようかなー。お楽しみに!