かんたん3Dモデリング~Fusion 360はじめの一歩
【第7回】初めての3Dプリントを体験しよう!
「誰かの3Dデータじゃなく、自分で3Dデータからものづくりしたい! でも3D CADは難しいというし……」と、ためらっていた方にぴったりの3D CAD入門。Autodeskの無料で使える高機能3D CAD「Fusion 360」を操り、3Dモデリングの“はじめの一歩”を踏み出そう。
執筆は、まったくの3Dモデリング初心者にFusion 360を使った3Dデータ作りセミナーを各地で開催し、「Fusion 360 操作ガイド ベーシック編」と「Fusion 360 操作ガイド アドバンス編」の2冊の著者でもある、3Dワークス 最高技術責任者の三谷大暁さんだ。
こんにちは、三谷です。
第7回は、Fusion 360で作成したものを3Dプリントする手順についてお伝えします。
3Dプリンターで出力する際に覚えておいていただきたいキーワードがあります。それが、「STLデータ」です。STLデータというのは3Dデータの形式の一つで、ファイルの拡張子は「.stl」です。このデータは、実質的に3Dプリンタの標準形式になっています。よく、「Fusion 360は〇〇という3Dプリンタに対応していますか?」とか、「××というプリンタを動かすために、どの3D CADが対応しているのでしょうか?」というご質問をいただきますが、ほぼすべての3DプリンタがSTLデータに対応しており、Fusion 360を含めたほぼすべての3D CADや3D CGソフトがSTLデータでの出力に対応しているため、「どれでも対応可能です」というのが答えになります。
ただし、3Dソフトによっては、3Dプリンタで出力するために破綻のないデータの作り方をする必要があり、その作業が非常に大変な場合があります。その点、Fusion 360で3Dモデルを作ると形状の破綻はほぼ起きないようになっているため、皆さんが意識する必要はなく、Fusion 360で形を作ればそのまま3Dプリントできるのです。
それでは早速、Fusion 360でSTLデータを出力する方法をお伝えしましょう。
[メイク] - [3Dプリント]コマンドで、形状を選択することでSTLデータを出力できます。一つ注意点があり、3Dプリンタを持っていない方は「3Dプリントユーティリティに送信」のチェックボックスをはずしておいたほうがいいでしょう。通常3Dプリンタには「スライサー」と呼ばれるソフトが付属しており、STLデータを読み込んで、出力の位置や精度を設定したうえで出力されます。このチェックを入れておくと、同じPCに入っているスライサーソフトに自動的にデータがエクスポートされるので、すでに3Dプリンタをお持ちの方はぜひ活用してください。
3Dプリンタ側の設定については、個人向け3Dプリンタの代表として、「UP Plus2」のスライサーソフトを例にご紹介します。ほとんどのスライサーソフトでできることは同じで、「STLデータをインポート」「移動」「回転」「拡大/縮小」が可能です。
ほかには、何mmずつ積み重ねていくかという「積層ピッチ」や、空中に出力してしまう個所に土台を作る「サポート」の設定などがあるだけで、スライサーソフトは非常にシンプルです。サポートは自動的に付与されます!
皆さんが思っているほど3Dプリンタ側の操作は複雑ではなく、非常に簡単ですのでぜひチャレンジしてみてください!
まだ3Dプリンタを自宅には買えないよ、という方もご安心ください。STLデータができてしまえば、3Dプリント出力サービスを利用して、高価な業務用3Dプリンタで造形したクオリティの高い出力を手に入れることができます!
代表的な3Dプリントサービスとしては、「DMM.make 3Dプリント」が有名です。STLデータをアップロードするだけで、数分でさまざまな材質の見積もりが届きます。
一方、お仕事で利用される場合、「3Dayプリンター」というサービスも便利です。どんな材質で出力すればいいのかという相談もできますし、非常に短納期で対応してくださいます。
このように、Fusion 360で3Dモデルさえ作れば、それ以降の3Dプリントは非常にシンプルです。この手軽さが今までのものづくりにはなかった部分で革命的なことです。
皆さんのアイデアをFusion 360で形にし、3Dプリンタで実体とすることで、新たなものづくりを楽しんでください!