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fabcross Meetingレポート

【fabcross Meeting】20代ロボットメイカーズが語る、ものづくりで大切なこと

2014年3月23日、fabcrossによる初の主催イベント「fabcross Meeting vol.01」が開催された。当日はエンジニアを中心とした約100名が参加。ものづくりの現状や、未来でのあり方について考えを深めた。第二部「次世代ものづくりのクリエイティビティ」と題したセッションに登壇したのは、無動力の動作拡大型スーツを開発するスケルトニクス代表取締役社長の白久レイエス樹氏と、全高4m、重量4tの搭乗型ロボット「クラタス」の動作制御システムとして用いられている「V-Sido」開発者の吉崎航氏だ。本記事では、両名によるトークセッションをレポートする。

動作拡大型スーツ&人間の動きをロボットに翻訳するシステム

スケルトニクスの白久レイエス樹氏。幼少期からロボットアニメが好きで、ロボットを操縦することが夢だったという。 スケルトニクスの白久レイエス樹氏。幼少期からロボットアニメが好きで、ロボットを操縦することが夢だったという。

次世代のものづくりについて考える「fabcross Meeting vol.01」。その第二部では、動作拡大型スーツ「スケルトニクス」を開発している白久氏と、巨大油圧駆動ロボット「クラタス」の動作制御システム「V-Sido」の開発者である吉崎氏のトークセッションが行われた。

スケルトニクスは、からくり機構を利用した無動力の着用型ロボットスーツだ。白久氏を含めた「チームスケルトニクス」が沖縄工業高等専門学校(沖縄高専)時代に開発を行ない、現在までアップデートを続けている。着用すると高さ3mほどになり、外部の動力を使わずに人間の手や足の動きを拡大する機能をもっている。力を増幅するわけではないため、いわゆるパワードスーツとは違う。

V-Sidoは、ロボットのOSと人間との仲介役になるシステムだと吉崎氏は語る。人工知能だけでは、人間が操作の結果としてイメージする動きと、実際のロボットの動きに齟齬が生じてしまう。一見似ているように見える人間と二足歩行ロボットの動きの差を補完して、人間がイメージした指示通りにロボットが動けるようにする制御システムがV-Sidoだ。

動画を投稿することがゴールのものづくり

モデレータの江口晋太朗氏は、2人の共通点として、数多くの紹介動画や試作動画をWebサイトに投稿していることを指摘する。ものづくりにおいて、それはどのような意味があるのだろうか。白久氏にとっては、「制作工程のゴールが動画だった」と語る。

「広く多くの人たちにスケルトニクスを知ってもらおうという意味で、プロジェクトのゴールを動画の投稿にしようと決めていたんです。住んでいた沖縄には、ロボットのイベントがなかったので、Web上に動画を投稿して得られる反応やフィードバックが役立ちました」(白久氏)

スケルトニクスの動画は、ニコニコ動画の技術部カテゴリで「乗りたい」「楽しそう」などの反響があったという。そうした評判がニコニコ動画の運営事務局にも伝わり、2012年に幕張メッセで開催された「ニコニコ超会議2012」でスケルトニクスが展示されることとなった。

ニコニコ超会議2012に参加していた吉崎氏は「これが動画で見たスケルトニクスか!」と実物を見たことに対する興奮を振り返った。「動画で見た驚きが先にあって、イベントではさらに実物の迫力があり、2段階の楽しみ方ができた」(吉崎氏)

吉崎氏がクラタスに携わることになったのも、動画共有サイトに投稿していたV-Sidoの映像をクラタス設計者の倉田光吾郎氏が見て、クラタスを動かす制御システムを開発してくれると考えて、メールを送ったことがきっかけだったと話す。

「実際に作る上でも、仕事やチャンスにつながるという意味でも、ものづくりと動画の組み合わせは意味がある」(吉崎氏) 

チームでものづくりに求められるもの

V-Sido の吉崎航氏。自身はロボットを操縦するのではなく、ロボットを制御し安心安全なロボットが生まれる社会にしたいという。 V-Sido の吉崎航氏。自身はロボットを操縦するのではなく、ロボットを制御し安心安全なロボットが生まれる社会にしたいという。

ものづくりにおけるチーム制作のコツへと話題は移った。白久氏は、高専時代からチームでものづくりに取り組み、吉崎氏は倉田氏とともに水道橋重工を設立しパートナーシップを組んでクラタスの制作に携わっている。

白久氏は、飛び抜けてできる人に注意する必要があると語る。

「高専時代、チームメンバーが20名程度いたのですが、絶対1人は飛び抜けてできる人がいるんです。放っておくと全部その人がやっちゃうんですけど、そうなると他の人の仕事がなくなってしまう。ちゃんとタスクを細分化して、割り振ることの大切さを知りました」(白久氏)

それを聞いた吉崎氏は、まさに自分はやりたがるタイプの人間だと語った。そのため、吉崎氏は相手の領域に口を出さないこと、そして集団制作においては情報共有の徹底を心がけ、クラタスの開発においても倉田氏と吉崎氏のタスクを明確に分けたという。

「やりたいことは、倉田さんにも私にもあるんです。だからこそ、相手の領域には絶対に口を出さず、互いにできたものを組み合わせて、こんな良い物ができたよ、というやり方にしようとは常に考えてます」(吉崎氏) 

ものづくりで一番大切なことはリスク管理

モデレータの江口氏の質問に対して、2人の答えが一致したのが「普段、ものづくりで気をつけていることは?」という問いだった。その答えは、「リスク管理の大切さ」だという。

「特に気をつけているのはリスクマネジメントです。大型のロボットであるため、何かが起きた際に周りに対して危険が及ぶ可能性は大きい。そのため、スケルトニクスを操作するときは十分に周囲への配慮やケガの対策を行なっています。法律も注意すべきものです。例えば、公園でのデモンストレーションの動画撮影の際は、市の許可を得てから撮影しています。他にも、動画を投稿する際やメディアになにかしら露出する時には、弁護士に相談することもあります」(白久氏)

巨大ロボットは、一瞬の気の緩みが大ケガになるからこそ、厳重に管理して操作しなければいけない。一方の吉崎氏は、一瞬の過ちであやうく頭に大きなケガをしそうになったエピソードを語った。

「クラタスの肩の下にふたがあり、そこのふたを開けて中をいじれるんですが、キャノピーを開けようと思ってボタンを押したら『フタ』と『カタ』を読み間違い、あやうくクラタスの肩に頭を押しつぶされかけたことがありました。ちょっとした間違いから、大惨事になる可能性があるので細心の注意が必要だと改めて実感しました」(吉崎氏)

こうした反省もあり、乗り込み式であるクラタスであっても、なるべく離れて仕事ができるよう作業の遠隔化を心がけているという。全高4m、重量4tのクラタスでは、些細なミスが大きな事故につながるため、気を緩められないと吉崎氏は話した。 

若手ものづくりの今後のビジョンとは

2人とも、ロボットがより日常にある社会の中で、何ができるかを模索していきたいという。 2人とも、ロボットがより日常にある社会の中で、何ができるかを模索していきたいという。

江口氏が最後に聞いたのが、2人が今後見据えているゴールについてだ。小学校の自由研究のテーマが「8mのロボットは作れる!」で、当時からロボット開発を夢見ていた吉崎氏。幼少期からの夢である、ロボットが当然のように生活の中にいる世界を現実のものにするために、これからも活動していきたいと吉崎氏は答えた。

「アニメに出てくるような、ロボットが溶け込んでいる社会を目指したいです。クラタスの開発も、ただロボットを作るだけなら参加していません。量産・販売が目標だったからこそ、共感し一緒にやっているんです。これからアニメのような世界になる可能性が大きいからこそ、V-Sidoのような制御システムをあらゆるロボットの中に使ってもらうのが目標です」(吉崎氏)

一方、 白久氏はスケルトニクスの未来像ともいえるイメージを語った。

「僕は、自分が作ったロボットと一緒に旅をしたいと考えています。いまのように新幹線や飛行機ではなくて、常にそばにある理想的な何か。例えばロボットでいろんなところに行ったり、毎日一緒に行動したりするようなものであってほしいです。道具であり、パートナーであるような、そんな存在のものを作りたいと考えています」(白久氏)

スケルトニクス以外にも、握力を爆発的に高める着用型装置(変形機構付き)などを白久氏は紹介した。動作拡大スーツや、変形機構付きの着用装置を組み合わせた先に、ロボットとともに暮らす世界が来ることを目指している。

ロボットを夢見るだけではなく、実際にロボットを開発できる時代になったと語る2人。夢を実現できる時代だからこそ、作りたいものを作れる環境で何を自分がするべきかを考え、実践することが大切だと語り、セッションは終了した。

 

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