トークイベントレポート
【大人になってからでも大丈夫】始めてみよう、ものづくり
2014/10/15 17:00
8月29日にLoft&Fabで開催されたトークイベント「【大人になってからでも大丈夫】始めてみよう、ものづくり」ではデイリーポータルZ編集部の石川大樹さんと、クリエイターで工作家の森翔太さんをゲストに招き、これからものづくりを趣味で始めてみたい大人向けにきっかけづくりや続けていく方法についてざっくばらんに話し合った。(撮影:青木理奈)
登壇者プロフィール
インターネットユーザー。インターネットを使用するのが主な活動。
「しょうゆを自動でかけすぎる機械」「メガネに指紋をつける機械」など、嫌がらせ分野を中心として雑な電子工作も制作。DIYギャグ作家。2013年7月に渋谷ヒカリエにて個展『メカ供養』開催。2014年7月には「技術力の低い人専用ロボコン(通称:ヘボコン)」を主催。
本業はよみものサイト「デイリーポータルZ」の編集/ライター。趣味はワールドミュージック収集です。
nomolkのホームページ
映像作家/パフォーマー/俳優/工作家。1983年生まれ。舞台出演、映像制作、自主公演など様々なパフォーマンスを行う。映画「タクシードライバー」にインスパイアされて制作したガジェット「仕込みiPhone」の動画が、MakeやGizmodoなどのブログメディアに掲載されたことによりブレイク、YouTubeにて通算約400万再生、国内外のテレビメディアで取り上げられた。
2013年、第17回 文化庁メディア芸術祭「エンターテインメント部門」審査委員会推薦作品に、「仕込みiPhone」(ガジェット)と「脊振ILCハイスクール!」(映像作品)が、同時に選出される。2014年6月にはオーストリアのメディアアートフェスティバル、Ars Electronica(アルスエレクトロニカ)【next idea】部門で、Honorary Mention(入賞)を受賞する。
森翔太HP
パソコンの外に出られるんだなと思った
fabcross編集部越智(以下、越):最初にお二人が工作を始めるようになったきっかけから伺いたいのですが。
石川(以下、石):僕はデイリーポータル Zというサイトをやってます。わりとみんながものを作るサイトで、僕も「工作やるぞ」って意識する前からなんとなく工作の企画はやっていて、例えばリコーダーに塩ビパイプをつなげて4mくらいにしたらどんな音が鳴るか伸ばしてみたり、塩ビパイプで投石機を作ったり実験みたいな感じでやってたんですけど、同じサイトで書いてる乙幡啓子さんって人がLilypadを使った電子工作をやったんです。
僕は前職がSEで、プログラムはある程度書けて、変なウェブサービスとか作ってました。それって結局パソコンの中でしか動かないものだったんですけど、乙幡さんの記事を見て、こういうもの(Lilypad)を使えば自分が作ったものをパソコンの外に出してあげることができるなぁと思って。
それはすごく夢がある、ロマンチックな話だなぁと、まねして始めたのがきっかけです。
それからオライリーさんの『Arduinoをはじめよう』を買って勉強して、最初に作ったのは、Make Tokyo Meeting’04に出した、鉛筆で絵を描くとそれを読み取ってオルゴールみたいに音楽を奏でるみたいなもの。そう聞くと難しく思うかもしれませんが、実はすごく単純。鉛筆の芯って電気を通すんで、電極を二本出しておいてその間がつながれば音が出るんですよ。音が出る部分はプログラムで書いてるんで、電子工作自体は非常にシンプルな作品です。
以来、ちょっとじわじわいろいろと試していって、しょうゆをかけ過ぎる機械を作ったり、メガネに指紋をつける装置 を作ったり、代表作と言われるものですね。あとは、越智さんとお台場のMONOで「麦茶を麺つゆに入れ替えてくれる機械」ってのを作りまして。
越:1.5日くらいで設計図もなしにグイグイ作っていくところをはたから見ていて不安でありながら、頼もしいというか、なんかこう。
石:雑だなぁと(笑)
森:これ僕も直接見たんですけど、すごかった。ちょっと、これは正直、僕は作れないです。すごいなぁと思って。
石:でも、そんなに技術的には大したことはないんです。
24歳の時に会社の車を大破させて上京
森:僕は24歳まで静岡で会社員として、営業で毎日外に出ていて、浜松にある中田島砂丘に行っては海に叫んでたわけですね。ちょっといろいろつらかったんです。
で、ある時に営業車を大破させて使えなくなってしまいまして。上司に「お前謝り行ってこい」と言われて、ものすごく怒られると思いながら本社に行って、社長に「ほんとすみませんでした」って謝ったら、「いいよ、車一台くらい。君はこれからいろんな仕事するから、こんなことでくよくよしちゃダメだ!」って言ってくれたことに感動してたら「今のうちに言いたいことを全部言っちゃえよ」って社長が言うんですよ。それでつい、泣きながら「辞めたいですぅ……」って言ったらすっごく怒られて。
「怒らないから言ってみろ」って言ったのにめちゃくちゃ怒られて、そのとき。まあ結局辞めたんですけど。それが引き金になって。
石:あー、いい話聞いた(笑)
森:それで上京して、26のとき、演劇事務所にいる大学時代の先輩がバイトしないか?って劇団に誘ってくれて、スタッフをやってるうちにパフォーマンスをする側になって3年ぐらい経ったある日、なんかやってみようと思って突発的に自分でビデオカメラを買いました。映像作品を撮るとかではなくて、ほんとに突発的にやってみようって思ったんですよ。誰かに見せるってよりは、実際に作っても放置してたんですけど、作ったからにはやっぱり見せたいな、ってなって1年後にYouTubeにあげたっていう流れですね。
越:映像作品を作ろうと思ってビデオカメラを買って、なぜそこからいきなり工作に行き着いたんですか?
森:最近それをときどき言われることがあって、やっぱ演劇をやってると小道具を作る機会が沢山あるからって言ってるんですけど、実は嘘で(笑)。
僕は工作はダメなんです。今でもそうですけど、ほんとにガムテープとダンボールで作るぐらいしかできないんですよ。大学の講義で僕の名前を出してくれた人がいて「森さんはスピーディ&ダーティ」と言われたんですね。
越:でも自分ができない分、周りの方を巻き込んで作る方向にシフトされてるわけですよね。
森:今この1年とかはずっとそういう感じで。自分ひとりでやると限界みたいなものがどうしてもあるので、自分でできないものは作ってもらおうと。