ZMP谷口社長に聞く
「クルマの価値を変えるレボリューションを起こす」
6.日本はクルマのアプリでアドバンテージを取れる
——車載センサのデータを車載ネットワークを経由してスマートフォンで利用できる「カートモUP」もその戦略のひとつですね。
僕は自動運転に一番情熱をかけていますが、「カートモ」事業も進めています。「カートモUP」というアダプタをクルマの運転席の膝あたりにあるOBDⅡという車載ネットワークにつながる端子に挿し、次にカートモUPとスマートフォンを接続すると、クルマの30種類くらいのセンサ情報をスマートフォンアプリで使えるようになるんです。これでクルマの楽しみ方は全く変わります。センサ情報を基に「外気温はマイナス2度だ」「ここはなんか滑る、アイスバーンだ」などとスマートフォン経由で発信できるようになります。別のドライバーとエコ運転のプログラムがやりとりできるようになって、もっとスマートなエコ運転ができるようになるんです。
僕は若い人たちを集めて「センサデータを使ったらこんなアプリができる」と伝えています。そうするといろいろ試してシナリオを作ってくるので、それを添削しています。まず若い人にカートモアプリを作ってもらって、ヒーローになってもうけてもらいたいんですよ。たくさんアプリができれば日本がこの分野でアドバンテージが取れます。日本車に付けるだけでも、世界に1000万台以上が出回ることになりますよね。カートモはプラットフォームとして、APIを公開しています。自動車メーカーが秘密にしておきたいコードはブラックボックスとして外に出さず、センサのパラメータ情報、つまりAPIだけを出すのでメーカーも安心できるというわけです。
——クルマの安全支援やエコ運転支援にも役立ちそうですね。
エコに関してはクルマをIT化すればCO2排出は10~15%減らせます。安全面に関しては、ざっと2、3割は向上するんじゃないでしょうか。カートモを付ければ運転の採点ができるのです。高齢者は運転を控えるようにという風潮がありますが、70歳だって元気に運転ができる方はいらっしゃいます。「80点だからまだ乗れますよ」というわけです。そうすれば高齢者のクルマの需要も増えますし、外出も増え、消費も増えて、さらに元気になることで医療費だって減るんじゃないでしょうか。
ある実験をしたのですが、事故を起こす人は日ごろから危ない行動をしているんですよ。アクセルとブレーキを間違えるような“ヒヤリハット”を何度かやっていたりします。そうしているうちに、なにかにふと気を取らて事故を起こしてしまうわけです。ヒヤリハットの瞬間に、「危ないから気をつけて」と警告するだけでも事故はかなり減るでしょう。そんなアプリがあれば、世界中に次世代カーナビとして売り出せますし、それによってエンジニアの雇用が何十万人も増えると思うんですよ。
自動運転技術とは一見関係ないようですが、セットになっているんです。自動運転にはさまざまな技術がてんこ盛りになっていて、人間と機械の調整・調停でそんなに効率よくは走りません。もうインターネットに繋げないとだめなんですよ。