Gugenインタビュー
「未来のふつう」を作るものづくりを支援する「Gugen」が目指すもの
昨秋、「未来のふつう」となるものづくりを表彰するコンテスト「Gugen」が開催され大きな反響を呼んだ。Gugenに込めた思いや、これからのハードウェアエンジニアに必要な技術や考えについて、ピーバンドットコムの後藤康進氏と崔熙元氏にお話を伺った。(撮影:加藤甫)
電子工作=かっこいい、を作りたかった
「未来のふつう」と題し、5年先の世界にありそうなハードウェアを実用性や商品性の観点で表彰するコンテスト「Gugen」。2013年11月30日から12月2日まで、原宿のギャラリーでコンテスト応募作品から選ばれた作品約30点の展示会が行なわれ、12月7日には授賞式が開催された。
200点を超える応募作品の中から大賞を受賞したのは「筋電義手“Handie”」。モーター数を最小限に抑えて3Dプリンタで造形し、情報処理を自作の筋電センサとスマートフォンで行うことでコストを抑え、デザインにも凝った作品となった。
2009年の電子工作コンテストがスタート
コンテストを主催するのは、プリント基板ネット通販のピーバンドットコムだ。2009年から毎年開催した電子工作コンテストに始まり、5回目を迎える今回から「Gugen」へと名前を変更して、コンセプトも一新した。
「2000年代後半から、部品などが誰でも簡単に手に入るようになって電子工作ブームが起き、技術力や芸術性の高い作品を作るクリエーターが増えてきました。そこで、それまでの電子工作=暗い、というイメージから脱却し、電子工作は楽しい、かっこいい、といったものにしたかったのが電子工作コンテストを始めたきっかけでした」(後藤氏)
日本のものづくりからイノベーションを起こしたい
第1回の電子工作コンテストでは90点以上の作品が集まり、回を重ねるたびに応募作品数や知名度も上昇していった。コンテストとしての知名度は上がってきたが、現状の電子工作のできばえを表彰するだけのコンテスト自体に対する将来性への不安があった。
さらに、電子工作も含めた日本のものづくりの現状に対して課題があると、両氏は考えていたという。一つは、東日本大震災後の福島原発事故において、原子炉建屋構内に最初に投入されたのが米国製ロボットという事実だ。日本のロボット研究の遅れが、国内の課題解決に寄与できていない現状を変えたいという思いだ。
二つ目に、2007年に誕生したiPhoneが、私たちの日常生活を変化させたことだ。日々のコミュニケーションのあり方から、ビジネスモデルまでを変えたiPhoneが米国から誕生したという事実は、それまで技術大国とうたわれてきた日本のものづくりの課題を浮き彫りにした。
日本のものづくりの現場からイノベーションを起こし、日本をより良い社会とするためには、それまでのように電子工作を評価するだけではなく、社会の課題解決をものづくりがもっと提示するきっかけを作ることに意義があるのでは、と考えたという。
「日本からイノベーションを生み出すためにも、世の中に役に立つものを作る人を増やしたいという思いがありました。ものづくりには、iPhoneなどのように未来から見たときに当たり前だと言われるような力があります。イノベーションとはまさに、未来にとっての普通を作ることなのだと考えました。そこで、それまでの電子工作そのものを評価するコンテストではなく、企業やスポンサーが注目するエンジニアたちを表彰し、日本のものづくりを盛り上げるものへとするためにコンセプトを一新しようと考えた結果が、Gugenなのです」(崔氏)