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ナイトペイジャー 横田信一郎インタビュー

好奇心が結ぶ町工場とMakerムーブメントの邂逅

東京都大田区で金属加工工場を営む横田信一郎さん。自ら立ち上げたブランド「ナイトペイジャー」で、自動車のチューンナップパーツなどのユニーク製品を開発・製作する一方、話題のプロジェクト「下町ボブスレー」のまとめ役として、大田区の町工場の底力を世界に発信している。さらにMaker Faireに出展し、クラウドファンディングを利用したプロダクトの開発に携わるなど、Makerムーブメントなどの次世代のものづくりと、町工場の力とを結びけるべく、その方法を模索し続けている。そんな横田さんの好奇心と行動力の源泉、そしてこれからについて伺った。(撮影:加藤甫)

下町ボブスレーのキーパーソン

氷上の曲がりくねったコースを人力と重力だけで猛スピードで駆け抜ける。1/1000秒を争う、氷上の F1とも呼ばれるボブスレー。そのソリの開発はカーボンをはじめとした最先端の素材や空力解析などの高度な技術が注ぎ込まれ、各国の技術力がぶつかり合う場ともなっている。

そんなボブスレーを下町の町工場の技術力を結集して開発し、冬季オリンピックを目指すというプロジェクトが「下町ボブスレー」だ。残念ながらソチでは採用とならなかったものの、平昌へ向けてのチャレンジが続いている。

また、その過程はドラマ化されるなど社会的にも大きな話題となった。このプロジェクトのスポークスマンとして各所で活躍しているのが、ナイトペイジャーの横田信一郎さん。ナイトペイジャーはレースで使用される自動車のチューニングパーツを製造・販売するメーカーだ。

ナイトペイジャーの横田さんは自らもレース活動を行ない、自動車雑誌でコラム連載を持つなど、その筋では名の通った存在。 ナイトペイジャーの横田さんは自らもレース活動を行ない、自動車雑誌でコラム連載を持つなど、その筋では名の通った存在。

自爆スイッチと音の出ないモジュラーシンセ

「ミサイルシフトノブ」は、ユーザー自身が配線を行なうDIYer向けのカスタマイズパーツ。例えばターボのブーストアップスイッチに使うなど、見た目に反し立派に実用足り得る。(写真提供:横田さん) 「ミサイルシフトノブ」は、ユーザー自身が配線を行なうDIYer向けのカスタマイズパーツ。例えばターボのブーストアップスイッチに使うなど、見た目に反し立派に実用足り得る。(写真提供:横田さん)

そんなナイトペイジャーの製品紹介を見ると「ミサイルシフトノブ」という、不思議な製品が見つかる。これは戦闘機の部品でも自爆スイッチでもなく、純然たる自動車用パーツ。シフトノブのふたを開けると、どう見ても押してはいけなさそうな赤いボタンが現れる。

一方、Maker系のイベントでは、シンセサイザーやミキサーに使われるツマミやフェーダーに磁石を付け、冷蔵庫などに貼付けるインテリアグッズを出展。巨大なシンセサイザーやスタジオミキサーを操っているような“気分”を味わうことができるという、かなりゆるいテイストのグッズブランド「SHIN-RYU」も運営する。

本格的なチューニングパーツを手がける傍ら、大手メーカーでは決してできない、冗談とも本気ともつかないような製品を次々とリリースする横田さん。そのユニークな発想と振れ幅の大きさから、「この人一体何者なんだ?」という疑問が生じてしまう。

シンセのツマミに磁石を付けた「マグネットツマミ」とモジュラーシンセの操作パネルを磁石シートに印刷した「マグネットシンセ」。(写真提供:横田さん) シンセのツマミに磁石を付けた「マグネットツマミ」とモジュラーシンセの操作パネルを磁石シートに印刷した「マグネットシンセ」。(写真提供:横田さん)

ものづくりと好奇心のDNA

横田さんは1969年生まれ。高度成長期から父が営んでいたのは、当時の日本を代表するプロダクトだった、カメラのレンズの鏡筒をムクの金属から削り出す町工場。そうした現場を間近で見ながら、自らも工作好き少年として育った。また、ポルシェやフェラーリといったスーパーカーブームの直撃を受けた世代であり、シンセサイザーやコンピュータを駆使し大ブームを巻き起こしたYMOにも憧れた。

「小学校の卒業文集にYMOみたいな音楽を作りたいって延々書いてるんですよ(笑) ほかにもポケコンのBASICでゲームを作るとか、そういった新しいテクノロジーへの憧れ、興味が自分の根底にずっとあるんです」 

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