好奇心を原動力にした挑戦を−鳥人間のエンジニア夫婦が考えるハッカーライフ
自分の価値観を大切にしていくこと
最近では、東京にあるTokyo HackerSpaceなどにも出入りして、世界のハッカーたちと日々コミュニケーションを取りながら開発を行っている。現在取り組んでいるオープンソースのDNA増幅器「NinjaPCR」の開発も、マシーンを片手にアジアのハッカーたちに会うなど、さまざまな地域の人たちとのつながりを作っているという。
また、経済産業省が募集していた、世界のニッチ市場で勝負するものづくりベンチャー志望者を海外に派遣し、現地でものづくりプロジェクトを実施する「フロンティアメイカーズ育成事業」に鳥人間は採択され、NinjaPCRの海外生産やセールスの確立を進めようとしている。
いまや、個人の小さな取り組みでも、世界のさまざまな人たちとつながって、ちょっとアクションを通じてさまざまなフィードバックやアドバイスを得ることができ、ソフトウェアもハードウェアも開発のハードルは下がってきていると二人は語る。ハードウェアを専門にしてきたわけではないが、好奇心をもとに「まずはやってみよう」とさまざまなものを作り始めたことの積み重ねによって、開発のスタイルと世界中のハッカーたちとのつながりを確立してきたという。
「基本的には好きなことをして、それで生活していけるということが大切だと思っています。まずは面白そうから始まって、そこから仕事につながったり、少しでも多くの人が喜んでもらえるようなものになってお金になっていったりすればいいと思います」(久川氏)
いきなり独立しようと考えるのではなく、まずは自分のできる範囲でやることが大切と久川氏は語る。出資を受けることや独立することなどは手段にすぎず、その先に何をしたいかを大事にしてほしい、と強調する。
「あなたなりの価値観を大切にして行動してほしい。無理に商売にしないからこそ楽しくできることもあります。独立だけが選択肢ではありません。売上が見えてくれば独立という選択肢を考えればいいだけ。まずは週末だけでも作ってみて、面白いと思ったものをコミケなどで売ってみるのもいいかもしれません。大事なのは、いろんな人がいて、いろんな選択肢と生活があるということ。そうした多様なエコシステムがあることが面白いと考えています」(久川氏)
人の数だけニーズがあり、人によって欲求や感動のポイントは違う。そうした多様な価値観や考え方が受け入れられる社会になっていくことが必要だと久川氏。何を作り、何をしたいか、が問われてくる時代がこれからやってくるという。
「消費活動ではなく生産活動を行ってほしいですね。僕らのような開発スタイルは、自分のできることを増やしながら少しの利益を生み出し、それが次の新しいチャレンジの原資になるということを大切にしています。昔と違い、いまでは数個単位での開発もできてしまいます。いろいろな個人が試行錯誤をして新しいことに挑戦でき、困ったことを自分たちで解決できるような時代になってほしいですね。量産が必要になったら大きな企業と一緒にできることもあるはず。自分たちの得意分野や興味を軸に日々新しいことに取り組み、お金というリスクを無理に負わず、自分自身が負える範囲で責任をもってできることをやっていけばいいのではないでしょうか」(久川氏)
試行錯誤するためにも、まずは失敗しても気にしないことが大切だという。人はついつい完璧を求めがちだが、そうである必要はない。広く浅く幅広い分野に興味をもち、さまざまなことに取り組むことがものづくりをする上で大切だと語る。
「私たちもまだまだ未熟。未熟だからこそ、もっと挑戦をしていきたい。自分をエンジニアだから、とか、デザイナーだから、と定義するのではなく、自分の人生の可能性を広げて、有意義な日々を送ってほしいですね」(久川氏)
郷田氏は、新しい挑戦をするためにも、これからはスモールチームだからこそできることがある、と語る。
「これからは、小さな組織がフットワーク軽くさまざまなことに取り組むことで、いろんなことの可能性がでてくる時代だと思います。そこで重要なのはチームビルディング。信頼できる人と日々挑戦していけば、いろんな道が見えてきます。
あと、大切なのは自分がやったことをきちんと公表すること。そうしたら、自分の未熟な部分などをみんなが突っ込んでくれていいフィードバックになります。さらに、活動をオープンにしていくことで、仲間や信頼できる友人もできてきます。全部を自分でやろうとせず、いま自分ができることを人に見せて、そこからまた次の挑戦をしていけばいいと思います」(郷田氏)