おしゃぶりセンサ開発者 石井健太郎 尾形正泰インタビュー
GUGEN2014大賞受賞、赤ちゃん研究から生まれたおしゃぶりセンサのこれから
今後は法人化も視野に
おしゃぶりセンサの実用化や、さまざまな応用に向けて開発を進めるためにも、法人化が必要だという石井氏。しかし、ここで一つ問題点がある。それは、現在石井氏が大学の研究員という立場から、会社の代表として経営していくのが難しいということだ。尾形氏も、日本学術振興会のメンバーとして活動しており、企業経営に参加できる状況ではないという。2人は、研究員を辞め、独立して引き続きの開発と製品化に向けた展開も考えている。
「もちろん、会社化するのであればおしゃぶりセンサ以外の事業も考えないといけない。いまのおしゃぶりセンサも、改良を重ねるための時間と労力とお金必要で、自分の手元の資金だけではどうすることもできない」と石井氏。尾形氏は「研究用途としておしゃぶりセンサを販売したり、おしゃぶりセンサ以外でもなにかを小型し、それを無線化することに意味があるものを製造したりすることで事業として成り立たせることができるかもしれない」と語る。
おしゃぶりセンサはすべての赤ちゃんに対して利用することができるため、日本国内だけでなく世界に向けて製品を展開することも可能だ。
「いまのところ、おしゃぶりでデータを取り、赤ちゃんの状態を計測するようなものは海外で見たことがない。GUGENに出たことでニーズがあることも証明できた。他分野への応用だけでなく、製品としておしゃぶりから体温を測ったり健康状態のモニタリングができるような機能を備えたりと、まだまだ改良する余地もある。いろいろな可能性を秘めているからこそ、これを形にすることは大きな意味がある。そのためのプランをちゃんと練っていきたい」(石井氏)
周囲の応援がチャレンジの励みに
GUGENをきっかけにおしゃぶりセンサのさまざまな可能性に気づき、さらに製品化やさまざまな展開に向けて考えを巡らせるようになった石井氏。会社化に向けても、どうにかしたいと考えるようになった。こうした状況を、石井氏自身は楽しんでいるようにも思える。
「どうなるか分からないが、まずはやってみないと何も始まらない。何かを始めるときはネガティブな思考になりがちだが、GUGENに出したことで自信がついたように、周囲からの応援は大きな励みになる」(石井氏)
尾形氏は、これまでのものづくりは作りたい人が作れるものを作っていただけだが、これからは何か課題を抱えた人が欲しいと思ったものを作るようになったり、作る人と課題を抱えている人が出会えるようになったりすることに意味があるのでは、と指摘する。
「今は、技術の進歩によってちょっとしたものなら誰でもすぐに作ることができる。だからこそ、なにかが本当に必要だと思っている人が自らの手で作り出すことも出てくるかもしれないし、作る人と困っている人がつながることで新しいものが生まれてくるかもしれない。いろんな課題解決のものづくりが出てくるなかで大事なのは、コストがちゃんと抑えられ、さらに製品としてきちんとしたデザイン性があるものが求められるということ。個人としても、今以上にデザインでできることを追求していきたい」(尾形氏)
これまで、一人の研究者として過ごしてきた石井氏。これからは一人の研究者としてだけでなく、社会課題を解決する一人のプレイヤーとしても行動していきたいと語る。
「研究者として一生居続けることもできるが、やはり一つくらいは世の中に自分の研究で取り組んできたことが、社会に役立っていると実感できるものを作りたいと思っている自分がいる。これからどうなるかはまだ考えている最中だが、いろいろな可能性を踏まえながら新しい一歩を踏み出していきたい」(石井氏)