九州工業大学 e-carインタビュー
飲み会サークルからラリー優勝チームへ——九工大「e-car」の軌跡
そうしてギリギリに通った車検証とナンバープレートを取り付けたe-carを地元の自動車整備士さんに輸送してもらい、なんとかレース参戦が実現した。
ラリーは走行車と、それを後ろでモニタリングする後続車、そして本部で情報収集と指令を出す待機班の3チームに分かれる。
1カ月前にコースが発表され、前日にコースを下見して走行ルートを決める。充電やメンテナンスも含め48時間の間にどれだけポイントを稼ぐか、トラブルも想定に入れながら立てる入念な計画と準備が勝敗を分ける。
コースは毎回変わり、起伏の多い山道のコースの場合は消費する電力量も考慮しなければならない。
「初日の夜はライバルチームと比べてどれぐらい走ったらいいか、バッテリの残量から逆算して、いつどれぐらい充電すればどれだけ走れるかを、ホテルで夜中に4時間ぐらい作戦会議してました」(宮川さん)
「本部のモニタに表示される各車に取り付けられたGPS情報を見ながら、待機班はライバルの動きも見つつ、『こっちに行ったほうがポイントが高いから次で曲がって』とか指示を出して、充電の準備をするんです。後続車はエアコンが効いてましたが、僕らは軽量化のためにエアコンは全部外したので、窓開けはなして電池式の小さい手持ち扇風機でなんとか乗り切る感じでした」(e-Car部員の備後さん)
「あと、くじ運にも悩まされましたね……。チェックポイントを回って帰ってくる度にコンピュータによるくじ引きでボーナスポイントがもらえるんですけど、ライバルが7点とか8点獲得してる中、1点を連発してしまって(笑)」(e-Car部員の幸諒真さん)
そうして、さまざまなトラブルと戦いながらも、e-carは「鉛酸バッテリー部門」で1位、その後も2年目は2位、3年目は1位と好成績を収める。
「EVラリーに出てからは優勝し続けるためには何をすべきか、例えば車体の軽量化や熱の問題をどう解決していくか、学生が自ら考え取り組んでいくようサポートするのが私の役目になりました。そういった授業では得られない経験を自分の五感を駆使しながら経験できる場ができたというのが、大学としての最大の成果になったと思います」(パナートさん)
マニアックな質問と専門的なアドバイスに驚いたMaker Faire Tokyo
東京ビッグサイトで開催されたMaker Faire Tokyo2014にも参加。マニアックな質問が矢継ぎ早に飛んできて驚いたそうだが、ここでもラリーで培った軌道修正力が発揮された。
「一応、問答集も用意していて、学内や飯塚市のイベント展示の際には、一般の方からの質問に問題なく対応できていたんですけど、Maker Faireは質問のレベルが全然違いました。コントローラの中身とか重量バランスとか、いままで聞かれたことがない類いの質問ばかりで」(宮川さん)
「1日目の夜にいろんな資料をあたって調べて、翌日には答えられるように準備しましたね」(備後さん)
「航続距離を伸ばすのに電圧を上げたらいいとか、回生ブレーキつけるにはどうしたらいいとか、そういう細かなアドバイスをもらいました。『車重バランスは前のほうが重たいほうがいいよ』とか、『回生ブレーキをつけるにはどうしてもトラクションがかからないので、前が重たいほうがいいけど、これはFRだからな』みたいな話をしていました。僕たちも他のブースを回りましたけど、みんな好きでやっていてすごく熱く語ってくれて、参加してよかったです」(宮川さん)
「IntelのブースでEdisonを無料配布するワークショップがあって、先着30名だったので朝から3時間ぐらい並びました。スケルトニクスやドローンの展示も良かったですね」(幸さん)