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no new folk studio 菊川裕也インタビュー

「Orphe」は“光と音と動きが自由に行き来できる世界”のハブ:no new folk studioが目指すもの

ビジネスとして、たくさんの人に楽器を届ける

しかし、そのままPocoPocoの製品化を目指すという方向にはいかなかった。もともと大量生産をイメージして設計していたわけではなかったため、だ。ビジネスとしてどれくらいの利益が出せるかというと、また別の話になる。そこに、大量生産の中で人に使ってもらうものを作るというこだわりがある。

「楽器は、作った人が使い方を決めているうちはまだ本当じゃないと思っている部分があります。ギターも言われたとおりの弾き方をしていたら面白くない。どこかにこすりつけてみたり、フィードバックさせてみたり、思いもよらない演奏がされることで初めて面白くなってくると思っているので、不特定多数の人たちの手に届けたいという強い願望があるんです」

ただ、GUGEN2013をきっかけに起業を意識するようになった。このときGUGENの崔熙元さん、ABBALab代表の小笠原治さんなど、現在につながるキーパーソンに出会っている。

「音」と「動き」と「光」が一体となったときの体験の強さ

次の一歩として、菊川さんはヤマハのハッカソンイベント「Play-a-thon」に参加。ごく自然な流れだった。一人でできることはたかが知れている、ある部分のプロが集まる場で一緒に何かものづくりができるというのは、それだけでも価値があると考えたからだ。

そこでアイデアを提案し、形にした「LuminouStep」は、バスケットシューズ(オールスター)にLEDを巻きつけ、圧力センサを付けてある程度踏んだということを検知したらLEDを点灯し、同時に音を出すというもの。原理試作のレベルだが、「もの」としての体験は面白いものだった。音と動き、光が一体となったときに、音だけではない、視覚でも楽しめる「こと」が起こる。PocoPocoで直感した「アウトプットの有機的な組み合わせが起こす効果」を、靴を通して、踏む、歩く……などの行為に展開したのだ。 

靴であることの必然性

靴であることから、フィードバックを付加する必要がないことも菊川さんにはポイントだった。菊川さんは、これまでの研究の中でも楽器には演奏者へのフィードバックが重要であると考えてきた。フィードバックがなければ自分の操作と起こる効果の関連がつかみにくい。たとえば、「ここを押すことでこの音が出る」ことが分からなければ再現できない。表現する道具として用いるのは難しいだろう。靴はそもそも、踏んだり、蹴ったりしたとき、自分の身体にフィードバックがある。あえてフィードバックを付加する必要がないのだ。また、もともとタップダンスやフラメンコでは靴を楽器として使うシーンがあり、それを拡張すると考えれば、音楽の歴史の中でもすごく自然なものと考えられる。

手応えを感じた菊川さんはLuminouStepを持ち帰り、開発を続けた。同年3月末から留学していたバルセロナのポンペウファブラ大学music technology groupでも、そのまま開発を続け(バルセロナでは当初孤独な生活だったというが、その分研究に打ち込んでいたそう)、演奏ができるレベルにまでブラッシュアップ。そして、6月のMusic Hack Day Barcelonaに参加し、スペイン産業省賞、Sonar賞、XthSense賞の3賞を受賞した。しかし、このときはまだ、楽器として「このLuminouStepが面白いよ」という提示だった。これが、さらに発展することになる。

夏に帰国した菊川さんはABBALabの小笠原さんにLuminouStepでの起業をプレゼンする。演奏ができるようになったとはいえ、当時の試作レベルはまだまだという状態。小笠原さんはそれでも「やってみたら」と言ってくれたという。 

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