no new folk studio 菊川裕也インタビュー
「Orphe」は“光と音と動きが自由に行き来できる世界”のハブ:no new folk studioが目指すもの
目標は作りたい文化に近づくこと
ここまで話を聞いて、すでに楽器という範ちゅうから大きくはみ出してきた印象がある。
「説明が難しいんですが、僕にとって楽器というのは、”楽器”という範ちゅうにおさまっている必要がないんです。思ってもみない使われ方をすることこそ楽器の本分と思っているので、もっと思ってもみない人に使われて、結果的にこんな楽器になったんだというような進化が見たいんです」
スポーツの分野で使わせてほしいという要望も実際にあるという。スポーツ分野における開発の過程で、動きを可視化するという方向性で精度の高いものができれば、誰かがまた楽器として使いたいとなったときに洗練された入力部分が使えるということになる。連鎖的にインターフェースの精度が上がっていって良いものになっていくというのが重要で、最終的に“作りたい文化”に近づくことができれば、どういう名前、概念で受け取られても、そこにこだわりはないという。
「作りたいのは、光と音とインタラクション、動きが自由に行き来できる世界。たとえばスマートハウスがあったとして、部屋の照明を消そうと思ってもすぐにはできない。何かアプリを立ち上げたりする必要がある。そのプロセスが要るということは、まだ変換がうまくいっていないということ。そもそも楽器は動き、ゼスチャーを音に変換するものなので、その精度が高まっていくほど自由に表現ができるようになると思っていたりするので、作りたい世界というのはそれです」
大量生産のビジネス展開を考えるときに、フレームワークというより単体のプロダクトのほうが訴求しやすいように思える。しかし、Orpheは単体のプロダクトであることを越え、ハブを目指している。そもそもアイデアやプロトタイプの変遷を聞くと、ターゲットと機能を絞っていってプロダクトを作るという従来の流れではない。これについて菊川さんは、スタートアップの場合どれだけ広げられるポテンシャルを持っているかという観点も求められるのではないかという。
「僕たちはどちらかというと、仕組みを広げたいところに目標がある。自分たちにも作りたい靴があって作るんですが、他の会社の方とコラボレーションして靴を作ったり、他のウェアラブル商品を作ったりすることに全然ためらいはない。作りたい、広げたいのはシステム、フレームワークなんです」
夏には量産試作が出てくる予定で、発売までにはひと通りのテストは終わらせる。クラウドファンディング分の出荷は2015年末から2016年にかけての予定だ。