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オリィ研究所 吉藤健太朗インタビュー

オリィ研究所 吉藤健太朗--課題解決型ものづくりのポイントは短期間のプロジェクトを一人で始めること

六畳一間のアパートで一人で始めたOriHimeの開発

最初の2年間は、すべて吉藤氏一人でOriHimeを開発、製造していた。3Dプリンタが手軽に利用できるようになる前までは、削った木の上に溶けたプラスチックを押し当てるヒートプレスや、バキュームフォームなどの方法によって外装パーツを作っていたという。基板については、オープンソースを利用。最初はPICやGainerなどを使っていたが、Arduinoを使い始めてからはFlashやPHPなどでプログラミングしていた。「圧力鍋を改造した真空注型機なども自作し、六畳一間のアパートにあるものをいろいろと組み合わせて、一人で50台くらい作りました」

今でも、プロトタイプまでは研究所内に置いてある3Dプリンタとオープンソースのボードを使って吉藤氏自身が作っている。「仕様が決定すると、そこから先は他のメンバーが安定して動くように完成度を高めていきます」(吉藤氏) 今でも、プロトタイプまでは研究所内に置いてある3Dプリンタとオープンソースのボードを使って吉藤氏自身が作っている。「仕様が決定すると、そこから先は他のメンバーが安定して動くように完成度を高めていきます」(吉藤氏)

人の分身となるロボットというと、一般的には頭と手足が備わった人型のものを思い浮かべるだろう。しかし、OriHimeの体は上半身だけだ。「初めは人型で24個の関節を持つヒューマノイドを作りました。ところが、動作が複雑で扱いが難しく、バッテリーがもたない、重くて持ち運びが不便などまったく実用性がみえず、さあどうぞと渡せるものではありませんでした。そこで、いらないものを全部そぎ落とした結果、首だけのロボットになりました」

当初はこれでも人だと感じてくれると思っていたという。ところが、初めて見た人からは「怖い」、「エイリアンみたい」などと言われたので、外観を改良しようと考えた。当初は顔を変えようかと思ったが、ユーザーから手を付けてほしいという意見があり、とりあえずやってみたら急に怖いと言われなくなったという。 

量産型OriHimeの初号機は上半身だけで手も付いていなかった。「ロボットのデザインにおいては、人の想像力によっていろんな解釈ができるようにしておくことも重要です」(吉藤氏) 量産型OriHimeの初号機は上半身だけで手も付いていなかった。「ロボットのデザインにおいては、人の想像力によっていろんな解釈ができるようにしておくことも重要です」(吉藤氏)

課題解決のためのものづくりのポイント

当事者の意見を素早く吸い上げて改良を繰り返す

世の中には、作った本人はこういうことに役立つんだと言っていても、「それ、実際に当事者に使ってもらったことはないだろう」と思えるようなプロダクトもよく見られる。課題を解決するためには困っている当事者と一緒に考え、できるだけ早く意見を吸い上げて改良することの繰り返しが大切なのだ。「孤独の解消については、私も当事者であったからこそ分かることがたくさんあります。でも、今私は困っていない。だから、今困っている人たちからのフィードバックを重視しています」

例えば、寝たきりで指も動かせず声も出せないALS(筋萎縮性側索硬化症)の患者さんに対しては、OriHimeで家族と一緒にお花見などに行ってもらいたいと思っていた。ところが、実際に患者さんのところに行ってみるとOriHimeは枕元に置かれ、ベッドの周りにいる家族やヘルパーさんたちとコミュニケーションをとるために利用されていた。「ALSの患者さんが自分で動かせるのは目だけです。その目を使って視線の移動だけでOriHimeを動かすことで、自分の体の中にある感情を体の外に連れ出してあげることが必要だったのです」

そこから、目だけで操作できるようにしようとか、特殊なインタフェースを作ろうという研究が生まれている。 

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